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障害者の権利条約でこう変わる Q&A 東 俊裕(監) - 解放出版社
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障害者の権利条約でこう変わる Q&A (ショウガイシャノケンリジョウヤクデコウカワル Q&A)

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発行:解放出版社
A5判
149ページ
並製
定価 1,400円+税
ISBN
978-4-7592-6118-9   COPY
ISBN 13
9784759261189   COPY
ISBN 10h
4-7592-6118-4   COPY
ISBN 10
4759261184   COPY
出版者記号
7592   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2007年12月
書店発売日
登録日
2010年2月18日
最終更新日
2015年8月22日
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紹介

2006年12月に国連総会で採択された障害者の権利条約についてやさしく解説するととともに、条約の視点から国内法の整備など障害のある人をとりまく社会がどのように変わることが求められているかをわかりやすく示す。

目次

Q1 条約ってなんですか?
Q2 障害者の権利条約で「障害」の範囲はどう変わりますか?
Q3 障害に基づく差別にはどんなものがあるのですか?
Q4 合理的配慮とはなんですか?
Q5 「手話は言語」と聞きましたが、どういう意味ですか?
コラム1 手話をめぐる中国の対応
Q6 障害のある女性の権利について条約ではどのように書いてありますか?
Q7 バリアフリー施策はどう変えていけばよいのでしょうか?
コラム2 障害者の表記
Q8 情報バリアフリー施策はどう変えていけばよいのですか?
視覚障害者の立場から
聴覚障害者の立場から
盲ろう者の立場から
知的障害者の立場から
Q9 精神障害者にとって、この条約はどのような意味がありますか?
Q10 逮捕された障害者はどのように扱われますか?
コラム3 司法へのアクセス
Q11 この条約では、自立生活をどのようにとらえていますか?
Q12 インクルーシブ教育って何ですか?
Q13 教育はどう変わりますか?
Q14 障害者の労働政策にどのような影響がありますか?
Q15 職場における合理的配慮とはなんですか?
コラム4 消えた「ノーマライゼーション」のなぞ
Q16 障害者の投票権はどのように保障されますか?
Q17 この条約にはなぜ、「国際協力」が書かれているのですか?
Q18 条約はどのように実施されるのでしょうか?
Q19 障害者差別禁止法はなぜ必要なんですか?
Q20 三度目の正直、これまで国連は障害者の問題にどのように取り組んできましたか?
Q21 障害者の権利条約はどのようにしてできたのですか?
コラム5 障害者の権利条約とJDF(日本障害フォーラム)

障害者の権利条約関連年表
障害のある人の権利に関する条約(川島聡・長瀬修仮訳)

前書きなど

はじめに-日本の福祉を障害者の権利条約からみてみよう
弁護士 東 俊裕

 障害のある人に対する日本の福祉は、租税を基本財源とするサービスや制度の提供(たとえば、障害者自立支援法や障害者に対する教育制度)と障害のある人に対する社会の対応の仕方に一定の枠組を設定することで社会参加の促進を図る(たとえば、雇用促進法やバリアフリー法)という2つのやり方を取ってきました。
 しかし、国がこれらの制度を設計するに当たって、必ずしも、人権を考慮したものとはなっていません。ですから、サービスや制度に関して言えば、それ自体が社会から分離をもたらすものであったり、財源次第でサービスの範囲や内容が決まるといったものになり得るのです。
 また、社会参加のための枠組み設定の基準も、いわば社会の余力の範囲内であって、極めて不十分なものでしかなく、現状を固定することにもなりないものです。そして、そこで課される義務は、行政に対する義務ではあっても、個々の障害のある人に対する義務とはなっていません。ですから、必ずしも個々の障害のある人の権利救済には結びつかないわけです。
 このような結果、障害のある人は分離的な制度や法律が決めた基準の枠内だけで生活することを強いられ、障害のない人との実質的不平等はいつまで経っても解消されない状況にあります。
 2006年12月に第61回国連総会で採択された障害のある人の権利に関する条約(以下、障害者の権利条約)は、障害のない人が有している以上の権利を創設するものではありませんが、障害がある故に不平等な状況を解消するための新しい考え方や制度のあり方を人権として認知し、これを世界共通の、しかも、最低限これだけは守らなければならない国内社会の基本的なルールに据えることを批准国に求めたものです。
 これまで、人権は二つに大別されてきました。自由権(市民的および政治的権利)と社会権(経済的、社会的及び文化的権利)と言われるものです。この二分論は自由権に関しては、政府は即時に実施する義務があるが、社会権に関しては漸進的に実施する義務しかないと言われてきましたし、権利の内容そのものについても、前者は権利性が強いが、後者は弱いとされてきました。
 しかし、今回の条約は、漸進的実施義務に関しても「この条約に含まれる義務であって国際法に基づき即時的に適用されるものに違反しない限り」という限定(4条2項)がつきました。従って、社会権に基づく社会サービスや制度においても、この条約から見て障害のない人から分離するものであったり、障害のある人の中で、障害種別とか障害の程度で差別を設けるものであったりする場合は、即時的な改善措置が求められていると言うべきです。
 さらに、今回の条約は、これらの権利が相互に依存しており、不可分であることを認め(前文(c)項)、これまでの単純二分論を暗に非難しています。これは、形式上は同等の権利が認められても、その人権を支える支援や制度がなければ、結局のところ、人権を認めたことにはならないという障害のある人の置かれた現実とこれまでの理論の積み重ねに根ざすものです。
 たとえば、自立した生活に関する条項(第19条)は、障害のない人と同様にどこでだれと住むかの選択の機会が保障され、特定の生活様式で生活することを義務づけられないようにするとともに、地域社会における生活等を支援し、地域社会からの孤立や隔離を防止するために必要な地域社会の支援サービスを利用できるようにすることを締約国が確保するという内容の規定を置いています。従来の二分論では、前者が自由権であり後者が社会権というように分類され、前者は強い権利性があるが、後者はそれほどの権利性を認められてきませんでした。
 しかし、この両者は、密接不可分の関係であって、後者なくして、いわばだれしもが認められている当たり前の自由権である前者の権利も保障されない関係にあるのです。このような意味で、後者の国家の義務は、財源次第でいかようにも変容できるような自由裁量に任せられるものではなく、少なくとも、これまでのレベルを引き下げたり、サービス制度内での障害種別や障害の程度において差別を設けるようなもの、あるいは社会から隔離をもたらすようなサービスであってはならないわけです。
 このように、障害者の権利条約は、現状の福祉施策が実質上の不平等を解消していない現実に対して、人権という面からあるべき方向に縛りをかける大きな力を内包しているのです。
 2007年3月30日に障害者の権利条約の署名式があり、多くの国が署名をしました。日本政府も2007年9月28日、この条約に署名をしましたが、今のところ、批准の時期については分からない状態です。
 批准する前に、まずは日本の福祉がどのような現状にあるのかを、この新しい条約の視点から分析しなければなりません。この条約は医学モデルをベースに保護の対象として発達してきた福祉の枠組みを大きく転換させるものとなっています。私たちは、この条約を批准して国内で実施するには、障害者差別禁止法の制定や原則分離を定める学校教育法施行令の抜本改正など、多くの国内法の整備を要すると考えています。
 本書は、条約の内容を分かりやすいように解説することを目的としたものではありますが、条約のご理解を得るとともに、人権の視点から日本の福祉のありようを考察していただける手段としてご活用いただければ幸いに存じます。
 なお、本書では川島聡・長瀬修両氏の訳を使用しております。署名の後に公表された日本政府の仮訳文は条約の正文ではありませんが、公権的な解釈として大きな影響力をもつものです。しかし、残念ながら、日本政府の仮訳文は、全体として今回の条約の基調をなす「保護の客体から権利の主体への転換」や社会モデルといった重要な視点の反映が不十分であり、訳語の選択、翻訳や表現の仕方も含めて検討すべき課題があると考えております。
 なお、本書での障害者の表記は、執筆者の表記を尊重し、障害者、障害のある人、障がい者など統一せず使用しています。

版元から一言

Nothing about us, Without us!

著者プロフィール

東 俊裕  (ヒガシ トシヒロ)  (

弁護士、熊本学園大学教授、ヒューマンネットワーク熊本代表、全国自立生活センター協議会副代表、DPI日本会議常任委員

DPI日本会議  (ディーピーアイニホンカイギ)  (

DPI(Disabled Peoples, International)とは1981年の国際障害者年を機に、身体、知的、精神など、障害の種別を超え活動する障害当事者団体として発足し、日本会議は1986年に設立。
 障害者が地域の中で当たり前に暮らせるノーマライゼーション社会の実現に向け、国際協力、政策提言、情報発信を担う。障害者自立支援法をはじめ障害者基本法、交通バリアフリー法の成立、改正で、障害当事者の立場からの論点形成を行う。また、2006年末に成立した障害者権利条約策定過程に参画。今後は、国内の法整備をめざす。
 国内の加盟団体は60団体(2007年10月現在)。著書に『問題てんこもり! 障害者自立支援法-地域の暮らし、あきらめない』、編著に『世界の障害者われら自身の声-第6回DPI世界会議札幌大会報告集』(DPI日本会議・2002年第6回DPI世界会議札幌大会組織委員会編、現代書館)。

上記内容は本書刊行時のものです。