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部落解放運動の歩み100項
ビジュアルブック
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2011年12月
- 書店発売日
- 2011年12月7日
- 登録日
- 2011年11月22日
- 最終更新日
- 2011年12月5日
紹介
日本における最初の人権宣言として多くの人々に影響を与えてきた水平社宣言。部落差別撤廃と人権確立を求めた水平社の闘いは、現在の部落解放運動に脈々と受け継がれている。
本書は100項目の解説、多くの写真・資料で語る。
目次
Ⅰ全国水平社創立とその時代 1922 ~1923
全国水平社の創立/荊冠旗・水平歌/水平社・国粋会争闘事件など10項目
Ⅱ全国水平社の闘いとその後 1924 ~1945
衡平社との連携/高松差別裁判事件闘争/部落委員会活動など12項目
Ⅲ部落解放にむけた歩みの再出発 1945~ 1954
敗戦と部落/部落解放運動の再建/オール・ロマンス糾弾闘争など7項目
Ⅳ部落解放にむけた多様な歩み 1955 ~1964
安保闘争に参加/教科書無償闘争/識字学級の開設など13項目
Ⅴ部落解放にむけた歩みの本格化 1965 ~1974
同和対策審議会答申/同和対策事業特別措置法の制定など13項目
Ⅵ部落解放にむけた輪の広がり 1975 ~1984
部落地名総鑑差別事件の発覚/部落解放中央共闘の結成など7項目
Ⅶ部落解放にむけた新たなステージ 1985~1994
第3期の部落解放運動の提唱/反差別国際運動(IMADR)の結成など11項目
Ⅷ自治体や国連と連携した部落解放運動の展開 1995~ 2001
差別身元調査事件の発覚/「人権教育のための国連10年」スタートなど11項目
Ⅸ部落解放・人権確立をめざして2002~2011
戸籍謄本等不正入手事件/電子版「地名総鑑」/土地差別調査事件の発覚など16項目
コラム 部落問題とは/部落解放運動とは
前書きなど
1922年3月3日、京都・岡崎公会堂で全国水平社が創立された。この大会で採択された水平社宣言は、日本における最初の人権宣言として多くの人びとに大きな影響を与え続けてきている。水平社宣言は、何故に人権宣言と呼ばれ、多くの人びとに深い感銘を与え続けてきているのであろうか。
その理由の一つは、「人間はいたはるべきものでなく、尊敬すべきものである」という、人権を考える上で最も重要な点を明確にしたことである。この考え方の根底には、全ての人間には、磨けば光る無限の可能性があること、それがさまざまな要因によって発揮できなくさせられているという捉え方がある。
この考え方に到達した背景には、水平社が創立されるまでに、多くの人びとによってなされた部落改善事業があった。それらは一段高い立場に立つ人びとが、一段劣ったとみられた部落民を哀れむか、社会防衛の立場からなされたものであった。このため部落差別はなくならなかっただけでなく、部落民は一層惨めで卑屈な状況に追いやられた現実があっ
た。こうした事態を根底から見つめ直す中から水平社が結成されたのである。
吾々部落民の中にも無限の可能性があるのだ。部落差別の不当な壁によってそれが発揮できなくさせられているのだ。この不当な壁は、一人では取り除けない。全国に散在する
部落民が団結して立ち上がり、それを取り除いていこう。そのためには、「卑屈なる言葉と怯きょうだ懦なる行為によって、祖先を辱しめ、人間を冒とくしてはならぬ」。自らの人間性に目覚めた被差別の立場にある者自身が団結し、人間性を回復するのだという水平社宣言のこのような自主解放の呼びかけが、多くの人びとを感動させる第二の理由である。
長い間、余りにもひどい差別と迫害を蒙ってきた人びとが、いつの日にかその復讐を遂げたいとの思いを抱いても不思議ではない。しかしながら、水平社の創立に立ち上がった
人びとはその立場を取らなかった。「人の世の冷たさが、どんなに冷たいか、人間をいたはる事がな んであるかをよく知っている吾々は、心から人生の熱と光を願求礼讃するものである」との立場、すなわち一切の差別を撤廃し、すべての人が人として尊重される社会の構築を目指したのである。そして、この呼びかけこそ水平社宣言が多くの人びとの感銘を呼ぶ第三の理由である。
2012年3月で、全国水平社創立90年を迎える。この間、部落差別の撤廃と人権確立を求めた部落解放運動の歩みは幾多の試練を経ながらも、水平社宣言に盛り込まれた基本精神に基づき前進を続けてきている。本書は、その足跡を100項目に分け、写真と簡潔な解説文でたどったものである。
今日、部落解放運動を担う人びと、自治体で同和行政や人権行政を担う職員、学校で同和教育や人権教育を推進する教員、さらには企業や宗教団体の中で同和問題や人権問題の研修を担当する人びと、メディアで部落問題、人権問題を担当する記者の中で、急速に世代交代が進行している。
「温故知新」という言葉があるが、これからの部落解放・人権確立を目指すためには過去の歴史から深く学ぶことが不可欠である。本書が、これらの人びとによって読まれ活用されることを願って止まない。
上記内容は本書刊行時のものです。