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〝関係支援〟を核とした学級づくり
「特別でない」特別支援教育をめざして
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2023年11月15日
- 書店発売日
- 2023年11月8日
- 登録日
- 2023年9月13日
- 最終更新日
- 2023年11月1日
書評掲載情報
2023-11-25 |
月刊「同和教育」であい
No.740(2023年11月) 評者: 本の紹介 欄 |
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紹介
小学校と特別支援学校の教員経験をもとに、「関係支援」をキーワードとする学級集団づくりを提案。「学び合い支え合う仲間づくり」という日々の教育活動から生み出した方法論をみずからの実践事例を通じて具体的に提起する。
目次
巻頭言……園田雅春
はじめに
第1章 「関係支援」にいたるまで
第1節 人権意識の〝変わり目〟となったエピソード
第1項 解放学級の指導員として
第2項 在日コリアンとのかかわり
第2節 支援に関するシフトチェンジ
第1項 差別に向き合う子どもたち
第2項 当事者から周囲へ
第3項 「関係支援」を研究テーマに
第2章 「関係支援」の具体的展開
第1節 問題と目的
第1項 問題の所在は?
第2項 実践研究のために
第2節 事例をとおして
第1項 「全員リレー」の劇的逆転優勝とA
第2項 「居住地交流」で見せるBの笑顔
第3項 「教え合い」のなかで自分を出せたC
第4項 「仲間の変化」とマイペースなD
第3節 事例を振り返って
第1項 〝特別でない〟特別支援教育
第2項 関係支援につながる個別支援
第3項 なぜ「関係支援」なのか
第4項 関係発達を軸にした「仲間づくり」
第5項 今後の課題
第3章 「関係支援」における支援者の役割
第1節 なぜ、支援者に焦点を当てるのか
第2節 支援の具体的実践事例
第1項 特別支援教育の研修会にて~教職員のグループ討議~
第2項 集中力が続かないE~母親への提案~
第3項 大勢のなかで話を聞くのが苦手なF~担任へのアドバイス~
第3節 支援者の役割に関する三つの提言
第1項 教職員同士の「つながり」
第2項 教職員と保護者との「つながり」
第3項 支援者の役割
第4章 「関係支援」の発展
第1節 学級づくりの理論的背景
第1項 行事を核とした学級づくり
第2項 子どもの権利条約
第2節 学級づくりの実際
第1項 係の仕事と会社活動
第2項 日直の仕事
第3項 欠席調べ(名札チェック)と連絡用紙
第4項 宿題集め
第5項 班編成と机の並べ方
第6項 当番活動(給食・清掃)
第7項 班長立候補制
第8項 「ほめ言葉シャワー」と「発見カード」
第3節 教職員のつながり
第1項 児童写真の共有フォルダ
第2項 「他教室の巡回」と「ドア・窓の開放」
第3項 学年集会
第4項 給食ローテーション
第4節 「関係支援」の終着点
第1項 仲間との協力の大切さを学んだG
第2項 みんながいる教室でがんばるH
引用文献
おわりに
前書きなど
「関係支援」は、ほとんどの読者にとって耳慣れないと思います。これは「子ども同士の関係を〝つなぐ〟ための支援」という意味で、私が使いはじめた造語です。これは「学び合い支え合う仲間づくり」という日々の教育活動をとおして、必然的に紡ぎ出されてきた着想です。その実践は、特別支援教育の文脈で考えてみると、「〝特別でない〟特別支援教育」にとりくむための具体的方法であるともいえます。
一二、三年ほど前になりますが、私は小学校で特別支援学級の担任をしていました。支援スタイルは主に二種類あり、ひとつは、特別支援教室での個別学習です。これは、全国的にどこの特別支援学級でも実施されていると思います。もうひとつは、交流学級の教室に入り込み、そこの授業を一緒に受けながら、担任の指示に従い、必要に応じた支援をするかたちです。これは、地域や校種、また児童・生徒の状態などによる違いが大きく、そうした支援をほとんどしていない学校もあれば、日常的に実施している学校もあるようです。
交流学級に入り込んで支援をする際、私が心がけていたことは、支援学級に在籍する子のまわりにいる子たちへの声かけです。支援学級籍の子に限らず、どの教室に入っても、何らかのサポートを必要とする子が何人かいます。私は、その子たちからあえて離れるようにしていました。すると、何らかのサポートをしてくれる子がいます。そこで私は、
「いまみたいな言い方で教えてあげると、わかりやすいよね」
「そうやってトントンと肩を叩いてあげると、ことばで注意するより伝わるかもね。すごいね、Aさん。もしかして、Bさんとのかかわり方、先生より上手かもね」
などと、頻繁に声をかけていました。また、そういう支援を目にしたとき、近くの子たちに、
「ねえねえ、いま、AさんがBさんの肩をトントンって優しく叩いて、やるページを教えてあげていたよ。そしたら、いつもみたいにBさんは怒らず、すぐにやりはじめたよ」
などと話します。そうすることで、私がそばにいなくてもBさんが落ち着いて学習にとりくみ、気持ちよく過ごせるような支援が、子どもたちのなかに広がっていきました。
私の役割は、友だち同士を〝つなぐ〟ことでした。私はその教室にずっといるわけではないからです。私がいないときにこそ、子ども同士の支援が必要ではないかと考え、子どもたちを〝つないで〟いました。
本書は、こうした「関係支援」の具体的実践事例について、まとめたものです。
上記内容は本書刊行時のものです。