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部落問題学習の授業ネタ 2
社会科日本史でやってみよう
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2018年3月
- 書店発売日
- 2018年4月3日
- 登録日
- 2018年3月13日
- 最終更新日
- 2021年10月13日
重版情報
2刷 | 出来予定日: 2021-10-20 |
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紹介
子どもが興味関心をもって学ぶ視点を重視した、社会科日本史を切り口にした部落問題学習の指導案。差別する側・される側の二分法でとらえた学習ではなく、反差別の視点で子どもたち自ら考える授業展開を示す。
目次
はじめに―この本を活用してくださるみなさんへ―
発刊にあたって 中尾健次
復刻にあたって 星野勇悟
古代
01【大むかし】大昔の人をなめたらあかん ~火起こし~
02【弥生時代】日本に「王」がいた! ~邪馬台国の身分~
03【古墳時代】古墳の謎にせまる! ~古墳時代の人びと~
04【奈良時代】でっかい大仏を描こうや! ~奈良の大仏~
05【平安時代】美人はつらいよ ~平安時代の美人の条件とは~
06【平安時代】“気枯れ”から“穢れ”へ ~平安のケガレ~
07【平安時代】なぜ伸びた? 日本人の平均身長 ~平安の肉食・近代の肉食~
中世
08【鎌倉時代】“神の国 日本”に“神風”は吹いたか!? ~元寇~
09【室町時代】「もののけ姫」から見える中世の民衆 ~中世被差別民衆の姿~
10【室町時代】見事な庭園―慈照寺銀閣 ~中世の文化と被差別民衆~
11【室町時代】ずるがしこい一寸法師 ~中世の文化・お伽草子~
12【戦国時代】情報戦―秀吉の天下統一 ~本能寺の変~
13【戦国時代】耳塚 ~秀吉の朝鮮出兵~
近世
14【江戸時代】城下町に見える身分制度 ~いくさと城下町~
15【江戸時代】ここが変だよ! 大名行列 ~参勤交代~
16【江戸時代】人体の不思議 ~解体新書ができるまで~
17【江戸時代】ウナギの災難―土用の丑 ~平賀源内と六曜~
18【江戸時代】参加したのはどんな人たち? ~大塩の乱~
19【江戸時代】“百姓と同じ”を求めて ~渋染一揆~
20【江戸時代】人の増え続けた村がある ~近世部落における人口の変化~
近・現代
21【明治時代】すゝめられても学ばれへんがな ~福沢諭吉~
22【明治時代】賤称廃止令はだれのもの? ~「解放令」(1871年太政官布告)~
23【明治時代】あなたならどうする? 丑松になって考えよう ~小説『破戒』~
24【大正時代】人の世に熱あれ!! ~全国水平社~
25【現代】教科書タダへの道 ~教科書無償化~
26【現代】STOP THE 就職差別 ~統一応募用紙~
教科書で部落問題学習を! ~教科書記述の変遷と部落起源~ 中尾健次
おわりに
前書きなど
発刊にあたって 中尾 健次(抜粋)
この部落問題学習ネタつくろう会の部落史教材集を“究極”と評価する一つの理由は、古代から現代までの日本史の流れに即して、26の授業ネタが紹介され、そのそれぞれに指導計画や資料がくわしく提示されているところにあります。
この26の授業ネタには、1960年代以降の「民衆史」の成果が、みごとに活かされています。1970年前後は、文字通り「民衆史」花盛りの時代でした。百姓一揆や豪農の研究が一世を風靡し、民衆宗教の研究もあり、民俗学の成果を積極的に取り入れようとしたのも、この時代でした。その影響もあってか、当時の教科書には、農民を中心に、民衆の暮らしがかなりくわしく描かれていたのです。現在の教科書を見ると、隔世の感があります。国の教育政策が変化したわけです。とくに1989年の指導要領改訂は、その節目となりました。ごくおおまかに言えば、「民衆史」から「政治史」への変化といってもいいでしょうか。こうした変化は、かえって“歴史嫌い”の子どもを増やすように思います。自分たちと同じ存在、いわば共感できる存在があって、はじめて歴史は他人ごとではなぐなります。「民衆史」の視点があれば、もっと興味深く、歴史を子どもたちにも伝えることができるのにと思います。
ところで、社会科の教科書に部落史が登場するのは、中学校では1972年、小学校は1975年でした。これが、部落問題学習を全国的に広げるきっかけとなったのですが、その中身は、最初とても貧弱でした。
たとえば、1975年段階でのA社の小学校6年用教科書には、「幕府は、また農工商の下に、さらにいちだんと低い身分をおきました。農工商より、さらに低い身分とされた人びとは、住む土地もかぎられていて、田畑を持つものもごくわずかで、その暮らしはみじめでした」と記されています。のちに、部落の「悲惨史観」「貧困史観」と批判されることになる記述が、まず最初に登場してくるわけです。
A社の教科書は、部落史研究の到達点を、かなり早く紹介しており、部落史の記述に関しては定評のある教科書なのですが、それでも、1970年当時の部落史研究を反映して、かなりはっきりした「悲惨史観」「貧困史観」が表われています。
こうした“部落イコール貧困”のイメージは、それまで実際の部落を知らない教師や子どもたちに、部落に「貧しい人ばかりが集まった地域」という偏見を与え、“衣食足って礼節を知る”の逆に、部落イコール“衣食足らざるがゆえに礼節を知らず”という、さらなる偏見を作り上げてしまったように思います。
こうした教科書の記述は、それからのちの部落史研究の成果を踏まえてかなり修正され、1992年には、「きびしい差別の中で、農業をはじめ、さまざまな仕事について、社会をささえました」(これもA社の場合)となり、1995年には、「差別にたえながら、荒れ地を耕して農業を営み、人びとのくらしに必要な生活用具を作ったり、伝統的な芸能を伝えたりして、日本の社会や文化をささえていきました」と、さらに変わっていきます。
そしてこの時期は、教科書から民衆史の記述が少なくなった時期と、ほぼ重なっているのです。もし、民衆史の記述がそのまま残り、そこに1990年代の部落史の記述が結びつけば、画期的な部落史学習が展開されたにちがいありません。
話がだいぶ横道にそれてしまいましたが、部落問題学習ネタつくろう会のこの部落史教材集には、民衆史と部落史研究の到達点が、みごとに反映されているのです。“究極”と評するもう一つの理由がここにあります。この教材集は、おそらく多くの子どもたちに、歴史のおもしろさを教えることになるでしょう。さらに、ところどころに挿入されたコラムなどは、「読める教材」としても活用できるように思います。
この部落史教材集が、多くの人びとに読まれ、活用されることを願っています。そして、教師も子どもたちも、部落史をはじめ、日本史に対する興味関心を、さらにふくらませていただきたいと思います。
上記内容は本書刊行時のものです。