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教科書をタダにした闘い
高知県長浜の教科書無償運動
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年11月
- 書店発売日
- 2017年11月6日
- 登録日
- 2017年10月20日
- 最終更新日
- 2017年10月26日
書評掲載情報
| 2018-04-01 |
法学セミナー
2018年4月(通巻759号) 評者: LIBRARY [新刊ガイド]欄 |
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紹介
日本国憲法第26条2項(義務教育無償)の具体化を求めて、1961年から高知県長浜で展開された教科書無償を求める運動は、義務教育教科書の無償配布の大きな契機となった。そのたたかいを関係資料と当事者の回顧で再現する。
目次
はじめに
運動が始まるころの長浜
当時の長浜の様子/長浜南部地区における解放運動の歴史/清交会の結成/部落解放同盟長浜支部の結成/自彊館(南部公民館)とその周辺の様子/平和まつり/教員人事異動反対運動と学校安全会費の問題
教科書無償運動のはじまり
第六回四国四県母親と女教師の会/国会と高知県議会あての請願書/第七回日本母親大会/解放同盟長浜支部、教科書「不買運動」を提起/塩谷の読書会グループ
「タダにする会」の結成
「長浜地区小中学校教科書をタダにする会」の結成/南海中、長浜小に協力要請/「タダにする会」第一回対策会/高知市議会での質問/最初の市教委交渉/市議会総務委員会(合同審査会)での議論
高知市教育長との大衆交渉まで
高知市教組と教科書無償運動/「タダにする会」第二回対策会の開催/長浜小学校PTA支部長会/高知市教委との第一回大衆交渉/高知市議会「教科書無償要望決議」/高知市教委の文部省あて照会文
長浜で、教育長と大衆交渉
長浜での教育長交渉へ/盛り上がる大衆交渉/講堂をゆるがした団結の力/解放同盟高知県連の大会決議
高知市教委の雲隠れ
三月三〇日の市教委交渉/八割が教科書を買わず/市教委から破約の「申入書」/再度の市教委交渉、徹夜となる/市教委の雲隠れと声明書/抗議集会に切り替え
市長交渉と市教委の総辞職
市長交渉のはじまり/市教委の「声明書」と捜索願い/市長、打開を約束/喜びあふれる「タダにする会」/市教委、ついに総辞職/市教委の総辞職をめぐって
高知市教委総辞職の波紋
「タダにする会」の運動の再出発/高知市議会総務委員会の確認事項/教育現場の混乱/「正規な教育促進の会」の結成/最後の市長交渉/迫られる戦術の見直し/運動支援の拡がり
教科書を使った授業の開始
教師集団の努力/強まる反動攻勢/教科書を使った授業の開始/子どもの感想
交錯するさまざまな人びとの思い
聞き取り(1)/聞き取り(2)/プリント教材に励む教師たち/『高知新聞』投書に見る運動の評価
憲法第二六条の解釈をめぐって
高知市教委総辞職の波紋/憲法第二六条の法解釈/『高知新聞』報道の衝撃/『高知新聞』の運動への評価
終結へ
革新クラブの斡旋/部落解放同盟高知市協議会第三回大会/市教委、最終案を提示/苦渋にみちた役員会/市教委案、受け入れへ/教科書配布に喜ぶ子どもたち
運動の総括
『るねさんす』誌上座談会/部落解放同盟高知市協の総括/高知市教組の総括
一九六二年以降の運動
一九六二年の教科書無償運動の開始/市議会での質問/二度にわたる教育長交渉/解放同盟高知市協の活動報告/一九六三年の教科書無償運動の開始/教育長交渉/長浜隣保館の開設
教科書無償制度の実現
教科書無償制度構想/教科書無償法の成立/教科書無償調査会の答申/教科書無償措置法の成立/教科書無償制度の実現
おわりに
資料
岩松良子「会議録」(一九六一年三月七日~三月一七日)
高知県教職員組合『教育通信』№339(一九六一年六月一五日)
第七回日本母親大会[一九六一年八月二〇日、東京都]討議資料
教科書無償運動関連年表
前書きなど
はじめに
現在、小中学校(特別支援学校の小学部・中学部も含む)の児童生徒には毎年新しい教科書が配布されています。小学校一年生には入学式当日、文部科学省の作製した紙袋が手渡されますが、紙袋の裏面には「保護者の皆様へ」と題する次のような文章が印刷されています。
お子様の御入学おめでとうございます。
この教科書は、義務教育の児童・生徒に対し、国が無償で配布しているものです。
この教科書の無償給与制度は、憲法に掲げる義務教育無償の精神をより広く実現するものとして、次代をになう子どもたちに対し、我が国の繁栄と福祉に貢献してほしいという国民全体の願いをこめて、その負担によって実施されております。
一年生として初めて教科書を手にする機会に、この制度にこめられた意義と願いをお子様にお伝えになり、教科書を大切に使うよう御指導いただければ幸いです。
文部科学省のこの文章は、憲法第二六条第二項後段の「義務教育は、これを無償とする」に込められた義務教育無償の精神の具体化として教科書の無償配布があることを、学校教育の出発点においてあらためて明示し、その周知徹底を図ろうというものです。
教科書の無償配布は、一九六三年度入学の小学校一年生にはじまり、順次その対象が拡大されて一九六九年に全小中学生への無償配布が実現し、現在にいたっています。この教科書無償制度がはじまるのは、一九六二年三月の「義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律」と、一九六三年一二月の「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」というふたつの法律が制定されたことによるものですが、これらの法律制定の契機となったのが高知市長浜における教科書無償運動だったのです。
本書でとくに留意したのは、高知市長浜の教科書無償運動について、可能なかぎり資料にもとづいて事実経過を丹念に整理していくことと、運動について語ることのできる当事者が少なくなってきている現在、運動についての当事者ならではの思い出を記録として残しておくこと、このふたつを柱にして運動の経過をまとめあげることでした。とりわけ、村越良子さんの「これは私に課された最後の責任だ、できるかぎり正確で正直な、悔いのない仕事をしたい。仮にもこの執筆がひとつの歴史的事実の〈証言〉である以上、我田引水や主観的脚色はゆるされない」との思いを大切にするためにも、これまでに発行された文献やパンフレット類を丹念に読み込むとともに、それらの記述の不十分さを新たに発見した資料や聞き取りなどによって訂正する作業を丁寧におこなったつもりです。
上記内容は本書刊行時のものです。
