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物部氏と石上神宮の古代史
ヤマト王権・天皇・神祇祭祀・仏教
- 書店発売日
- 2019年5月20日
- 登録日
- 2019年4月19日
- 最終更新日
- 2019年5月8日
紹介
物部氏は、蘇我氏と並ぶ古代氏族の雄であるが、実像は鮮明でなかった。蘇我氏との仏教崇廃抗争の真相、石上神宮の性格と祭祀の実態、物部氏伝来の呪儀である鎮魂の目的などの諸問題を、新たな視点から解き明かした。それにより、宗教的性格の色濃い物部氏の実態と律令制以前のヤマト王権の特徴が、明らかとなった。とくに、天皇が納めた神宝を祭る石上神宮の性格と歴史的変遷が解明できたことは、大きな成果である。
目次
本書の記述について
第一章 古代の天皇観 ―天皇神格化論の検討―
はじめに
『万葉集』における天皇神格化
公式令の「明神」
『古事記』の中の現人神
天照大神の「ヨサシ」
宣命の中の「現御神」
神を祭る天子
註
第二章 古代の世界観 ―多元的な古代―
多元的な世界観と慣習法
世俗法と宗教法は別の時空の決まり
あの世は逆さまの世界
古代の霊魂信仰
霊魂を取り込んで〝人〟になる
物部氏をめぐる諸問題
註
第三章 物部氏の神話と呪術
古代の氏族と神話
神話の共有とその歴史的意味
物部氏の神話Ⅰ ―『記』・『紀』のニギハヤヒ命神話―
ニギハヤヒ命神話から読み取れること
物部氏の神話Ⅱ ―『先代旧事本紀』のニギハヤヒ尊神話―
物部氏の神話Ⅲ ―『先代旧事本紀』のウマシマチ命神話―
鎮魂の意義と目的
物部氏の呪儀・鎮魂
註
第四章 物部氏の台頭 ―『記』・『紀』の中の物部氏―
孝元・開化朝の物部氏 ―ウツシコメ・イカガシコメの入内―
崇神朝の物部氏 ―イカガシコオと神祇祭祀―
垂仁朝の物部氏 ―物部十市根大連の五大夫・石上神宮―
景行朝の物部氏 ―物部君・直入物部神―
仲哀朝の物部氏 ―内政に与る物部膽咋連―
履中朝の物部氏 ―物部大前宿禰・石上神宮・物部伊莒弗大連・物部長真膽連―
①物部大前宿禰・石上神宮
②物部伊莒弗大連
③物部長真膽連
安康朝の物部氏 ―物部大前宿禰・石上穴穂宮―
雄略朝の物部氏 ―物部目大連・物部菟代宿禰・采女・木工―
①物部目大連・物部菟代宿禰・筑紫聞物部大斧手
②物部の兵士
③弓削連豊穂・処刑
④木工・刑吏の物部・采女
⑤韋那部真根・刑吏の物部・采女
物部氏と采女
武烈朝の物部氏 ―物部麁鹿火大連・影媛・歌垣―
継体朝の物部氏 ―物部麁鹿火大連・筑紫君磐井の乱―
安閑朝の物部氏 ―物部木蓮子大連の娘宅媛・物部尾輿大連の瓔珞―
宣化朝の物部氏 ―物部麁鹿火大連と新家屯倉―
物部氏の性格と台頭
註
第五章 物部氏と仏教崇廃抗争の真相
仏教の公伝と課題
仏教の公伝 ―欽明天皇紀十三年十月条―
仏教公伝記事は捏造か
仏教は百済王から天皇に贈与された
仏教は天皇から蘇我氏に下賜された
仏教伝来に関する『紀』の歴史認識
仏教外交と仏教下賜
物部氏と蘇我氏の仏教崇廃抗争Ⅰ ―敏達朝Ⅰ―
物部氏と蘇我氏の仏教崇廃抗争Ⅱ ―敏達朝Ⅱ―
物部氏と蘇我氏の仏教崇廃抗争Ⅲ ―用明朝―
物部氏と蘇我氏の抗争の真相
中臣氏の成立と王権の新政策
物部氏による廃仏と二つの仏教
註
第六章 石上神宮と祭神フツノミタマと物部氏
石上神宮の祭神名は布都御魂か、布留御魂か
祭神フツノミタマは物を斬る音か
フツノミタマは光り輝く剣の神
フツノミタマ・フツヌシ・タケミカヅチの関係
『常陸国風土記』のタケミカヅチとフツヌシ
タケミカヅチ・フツヌシの神格
常陸国のタケミカヅチ・フツヌシ
香島神子之社・香取神子之社鎮座の意味
鹿島神宮と中臣氏・卜部氏
香島の砂鉄とタケミカヅチ
不思議な剣の物語
刀剣信仰とフツノミタマ
註
第七章 石上神宮の神宝と禁足地と王宮
石上神宮の諸問題
神宮の呼称からみた石上神宮
Ⅰ『日本書紀』における「神宮」
Ⅱ『古事記』における「神宮」
贈与された七支刀
七支刀と石上神宮
鉄盾と石上神宮
石上神宮の禁足地
禁足地の由来と実態
石上神宮と石上の王宮
石上神宮禁足地の発掘
布留遺跡の性格と石上神宮
註
第八章 石上神宮の祭祀とヤマト王権の変質
石上神宮の神宝の管治=祭祀の起源
石上神宮は物部氏の氏神社か
石上神宮と春日和珥氏系の物部首氏
神宝の性格からみた石上神宮
王権による神宝の検校と武器の賜与
ⓐ王権による神宝検校の意味
ⓑ王権成員による前方後円墳の築造
ⓒ王権から豪族への武器の賜与
ⓓ王権から下賜された刀剣の実例
石上神宮の建物と鍵が意味するもの
古代王権の変質
石上神宮の神宝移動騒動
註
第九章 石上神宮の祭祀と物部氏と蘇我氏
蘇我馬子の物部氏出身の妻と石上神宮
『先代旧事本紀』の伝える石上神宮の祭祀
石上神宮の女性の神官
女性神官から物部大臣へ
石上神宮と蘇我氏と物部首氏の成立
物部氏の復権
物部は石上神宮の祭祀に不可欠
物部氏の鎮魂と石上神宮の祭祀
物部氏の石上神宮祭祀から離脱
註
おわりに
あとがき
上記内容は本書刊行時のものです。