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任侠俳句―八九三の五七五
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2023年12月20日
- 書店発売日
- 2023年12月6日
- 登録日
- 2023年9月14日
- 最終更新日
- 2024年12月22日
紹介
かつて任侠団体にも機関紙がありその中に投句欄があり、ヤクザの心情、体験をもとに詠んだ俳句が多数ありました。本書はそれらの中から昭和の匂いの漂うしかもリアリティある俳句を選句、それに俳句に造詣の深い二人の解説が加わり、味わい深い独特の俳句集となりました。
前書きなど
まえがき
ヤクザが俳句を詠むのを意外に思う方が多いだろう。私に教えてくれたのは、ヤクザの足を洗って堅気になったA氏である。私が任侠小説を執筆した際、編集者に紹介してもらった同世代の方だ。現役時代、傷害罪で服役した折、同房に俳句をたしなむ受刑者に師事して句を詠むようになったそうだ。作品を見せてもらったが、ヤクザならではの視点で日常を詠んだ句に、感心しきりであった。
某任侠団体の機関紙を見せてくれたのもA氏である。組織内の人事、盃事の情報、服役中の組員が仮出所する日取りなど、興味深い記事が多い中、投句欄があった。ヤクザの心情、体験をもとに詠んだものだ。そこで私はA氏に、ヤクザの俳句を集めてもらえないかと依頼した。もちろんA氏の句を含めて。快諾したA氏は、現役時代の人脈をたどって集めてくれた。匿名希望なので、いずれの句も「詠み人知らず」である。
さらに、ヤクザ関連の記事を専門に執筆している知人のライターにも協力を要請。彼が取材を通して築いた関西と広島のヤクザ人脈で、「極道俳句」とも言うべき句を集めてもらった。こちらも詠み人知らずである。
集まったものを吟味すると、A氏と同世代の詠み人が多いのか、「昭和の匂いが漂う」句が大半を占めた。若い衆の視点で詠んだ句にしても、現役でなく、己の若い頃を思い出して詠んだ句では、と拝察する。
解説を書くにあたって、百二十句余りの句すべてを私が書くと、ワンパターンになってしまう恐れがあるので、助っ人を頼んだ。
私が俳句を始めたのは1990年、イラストレーターの山藤章二氏が宗匠の「駄句駄句会」に入ってからだ。その同人であった藤原龍一郎氏に半数の解説を依頼した。駄句駄句会は2017年に解散したが、2022年9月、藤原氏を宗匠に仰いで、「だんだん句会」を始めた。私も同人で、月に一度、例会を開いている。
そんなご縁もあって、藤原氏を頼みとしたわけだ。氏は短歌と俳句に関する著書があり、俳句に関しては私より造詣が深い。ヤクザの俳句も、氏の解説で引き立つと考えた。
「八九三の五七五」というサブタイトルだが、ヤクザが「八九三」と表現される由来は、花札のオイチョカブで、八+九+三=二十で「ブタ」。最低の数字であることからきている。ヤクザは最低の存在と軽蔑したのか、ヤクザ自身が卑下したのかは定かではない。
そんなわけで、ヤクザでなくては詠めない俳句を、解説共々ご笑覧頂きたい。
吉川潮
上記内容は本書刊行時のものです。