書店員向け情報 HELP
出版者情報
在庫ステータス
取引情報
〈熟議投票〉の政治学
アイルランドの憲法改正にみる民主主義の変革
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2026年2月28日
- 書店発売日
- 2026年3月2日
- 登録日
- 2026年1月29日
- 最終更新日
- 2026年4月1日
紹介
熟議と投票は、対立するものなのか。本書は、ミニ・パブリックスと国民投票を結びつける〈熟議投票〉という民主主義の新たなプロセスを理論化し、アイルランドの憲法改正事例を通じて検証する。投票を「プロセス」として捉え直し、日本の民主主義への示唆を提示する一冊。
目次
第1章 序論
(1)背景と問い
(2)対象と方法
(3)本書の構成
第Ⅰ部 アイルランドにおける〈熟議投票プロセス〉
第2章 アイルランドの政治と憲法
第1節 アイルランド政治と憲法改正手続
(1)議会と政党システム
(2)憲法改正と国民投票
第2節 アイルランド憲法と社会的・道徳的争点
(1)「婚姻の平等」をめぐる議論の変遷
(2)人工妊娠中絶をめぐる議論の変遷
第3章 ミニ・パブリックスと憲法改正
第1節 憲法会議と「婚姻の平等」
(1)憲法会議
(2)「婚姻の平等」国民投票
第2節 市民議会と人工妊娠中絶
(1)市民議会
(2)人工妊娠中絶国民投票
第4章 熟議デモクラシー論と直接投票
第1節 直接投票プロセス論と熟議
(1)「まず話しあい、それから投票する」
(2)レヴィの「熟議投票」論
(3)ランデモアの「一般投票プロセス」論
第2節 熟議システム論と直接投票
(1)マンスブリッジらの「熟議システム」論
(2)熟議システム論における直接投票の位置づけ
(3)熟議の2つの質
第5章 ファシリテーション再考
第1節 熟議デモクラシー論におけるファシリテーション
(1)熟議/ファシリテーションをめぐるジレンマ
(2)仲介行為とファシリテーション
(3)「包摂性と多元性」の2つのレベル
第2節 ファシリテーション概念の拡張
(1)「熟議システム論」からの捉え直し
(2)ファシリテーターとしてのアクティビスト?
(3)〈熟議投票プロセス〉のファシリテーション
第6章 事例の分析と評価
第1節 「婚姻の平等」合法化過程の分析と評価
(1)ミニ・パブリックス内のファシリテーション
(2)ミニ・パブリックスをめぐるシステム的影響
(3)キャンペーンをめぐるシステム的影響
第2節 人工妊娠中絶合法化過程の分析と評価
(1)ミニ・パブリックス内のファシリテーション
(2)「婚姻の平等」合法化過程との共通点・相違点
(3)「反復一般投票」としての機能?
小括
補論 2024年の「家族」と「ケア」をめぐる国民投票
第1節 2024年国民投票の争点
(1)第39次改正(家族)法案
(2)第40次改正(ケア)法案
第2節 2024年国民投票の実施過程
(1)キャンペーンの実際
(2)分析と考察
第Ⅱ部 日本における〈熟議投票プロセス〉の可能性
第7章 憲法改正と「国民的議論」
第1節 憲法改正に関する法制度
(1)発議前――ミニ・パブリックスでの熟議可能性
(2)発議後――キャンペーンでの熟議可能性
第2節 「国民的議論」の可能性
(1)エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査
(2)みんなで決めよう「原発」国民投票
第8章 地方自治体における住民投票
第1節 諸外国における住民投票制度
(1)米国およびドイツ
(2)英国およびフランス
(3)法制化の方向性
第2節 わが国における住民投票法制化への試み
(1)地方自治基本法構想
(2)住民投票に関する特別措置法案
第9章 住民投票法制化への一試論
第1節 憲法第95条「復活」の可能性
(1)憲法第95条の立法趣旨
(2)憲法第95条をめぐる議論の展開
(3)「一国多制度」の根拠としての第95条
第2節 あり得る批判とそれに対する反論
(1)間接民主制との矛盾・抵触――議事機関を経由することによる回避
(2)世論操作・誘導の危険――〈熟議投票〉実現への制度的工夫による回避
第10章 原子力政策に関する〈熟議投票〉の可能性
第1節 「いばらき原発県民投票の会」での実践から
(1)受任者募集の段階における熟議
(2)署名収集の段階における熟議
(3)条例制定までの段階における熟議(の不在?)
第2節 高レベル放射性廃棄物の地層処分をめぐって
(1)高レベル放射性廃棄物処分問題の概要
(2)北海道寿都町・神恵内村での動き
小括
第11章 結論
(1)本書の要約
(2)本書の意義
(3)本書の限界
あとがき
文献一覧
注
索引
前書きなど
第1章 序論
(…前略…)
(3)本書の構成
以下、本書の構成と概要を述べる。本書は、大きく第I部「アイルランドにおける〈熟議投票プロセス〉」と、第Ⅱ部「日本における〈熟議投票プロセス〉の可能性」から構成される。
第I部の「アイルランドにおける〈熟議投票プロセス〉」は、計5章からなる。第2章・第3章で事例の背景や経緯を確認し、第4章・第5章で分析のための理論的枠組みの検討を行った上で、第6章で事例の分析を行う。
第2章では、アイルランド政治と憲法改正手続を概観するとともに、アイルランド憲法における社会的・道徳的争点、特に「婚姻の平等」や人工妊娠中絶をめぐって、どのような議論が積み重ねられていたかを確認する。第3章では、2012~14年の「憲法会議」と2015年の「婚姻の平等」国民投票、および2016~18年の「市民議会」と2018年の人工妊娠中絶国民投票のそれぞれにつき、実施のプロセスを整理する。第4章では、いったんアイルランドの事例から離れ、熟議デモクラシーの規範的・理論的研究における直接投票の位置づけを確認する。さらに第5章では、熟議デモクラシー論においてファシリテーションはどのように論じられてきたか(あるいは、論じられてこなかったのか)を検討する。ここでは、所与の場での熟議の支援・促進としてのファシリテーションだけでなく、対話/熟議の場の生成という広義のファシリテーション機能に着目する。「非熟議的実践」と見なされがちなキャンペーンにおいても熟議の契機が見られるとするならば、ファシリテーターとアクティビストとの間に、重なり合う役割を看取することも可能となるであろう。その上で第6章では、第4章・第5章で得られた視座をもとに、2つの国民投票のプロセスを分析・評価する。
なお、アイルランドでは、その後も複数の国民投票が実施されている。中でも2024年に実施された国民投票においては、第I部で分析した2つの事例とは対照的な経過と結果が観察された。すなわち、2つの事例と同様にミニ・パブリックスとレファレンダムとを組み合わせる〈熟議投票プロセス〉を経たにもかかわらず、憲法改正案が国民投票において大差で否決されたのだ。そこで、第I部の末尾に「補論」を置き、この新たな事例が何を物語るのかを検討する。
さて、このように分析してきた〈熟議投票プロセス〉は、日本においても実現の可能性があるのか、あるとすれば何がそれを促進し、ないとすれば何が妨げとなるのかを検討するのが、第Ⅱ部「日本における〈熟議投票プロセス〉の可能性」である。第Ⅱ部は計4章からなり、ナショナルレベル(第7章)とローカルレベル(第8章~第10章)の2つの層で考察を行う。
ナショナルレベルを扱う第7章では、憲法改正国民投票において〈熟議投票プロセス〉が成立する可能性を、日本とアイルランドの法制度の比較も含めて検討する。そして、ローカルレベルにおける成立可能性の検討として、第8章では、わが国における住民投票の現状、特にその制度化が不十分であることを確認し、第9章では、住民投票法制化の可能性を探る。そして第10章で、現行の不十分な制度下においても〈熟議投票プロセス〉が成立する可能性があり得ることを論じる。
最後に、結論として、第11章で本書の意義と限界を確認する。
上記内容は本書刊行時のものです。
