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戦後日本学生セツルメント史の研究 岡本 周佳(著) - 明石書店
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戦後日本学生セツルメント史の研究 (センゴニホンガクセイセツルメントシノケンキュウ)

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発行:明石書店
A5判
392ページ
上製
価格 5,400円+税
ISBN
978-4-7503-5904-5   COPY
ISBN 13
9784750359045   COPY
ISBN 10h
4-7503-5904-1   COPY
ISBN 10
4750359041   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2025年2月28日
書店発売日
登録日
2025年2月14日
最終更新日
2025年3月11日
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紹介

戦後の学生セツルメント運動の意義と果たした役割は何か。再興期、組織構築期、転回期、組織変容期、そして現在までの5期に区分し時代背景や社会状況の変化、地域との関わり、社会運動・社会福祉の動向、人間形成・自己教育の視点から、その全体像を描く。

目次

序章
 第1節 はじめに
  1.本書の背景
  2.本書の目的
 第2節 本書の視点と方法
  1.視点と研究課題
  2.研究方法
  3.時期区分について
  4.用いる史資料
  5.用語の定義
  6.地域の広域連合について
  7.倫理的配慮
 第3節 研究の枠組みと構成
  1.研究の視点
  2.研究課題
  3.本書の構成

第1章 先行研究の到達点と課題
 第1節 セツルメントの系譜と学生セツルメントの位置づけ
  1.欧米におけるセツルメントの展開
  2.日本におけるセツルメントの系譜
  3.東京帝大セツルメントから戦後学生セツルメントへの系譜と思想
  4.戦後学生セツルメントの定義
 第2節 戦前のセツルメントに関する先行研究の概観
  1.大林宗嗣によるセツルメント研究
  2.大学セツルメントの誕生
  3.大学セツルメントの思想と特徴
  4.戦前と戦後の共通点と相違点――先行研究からの論点
 第3節 戦後の主なセツルメント研究の概観と変遷
  1.戦後-1960年代
  2.1960年代後半-1980年代
  3.1990年代-現在
  4.学生セツルメントをめぐる研究の変遷から――到達点と課題
  5.課題別の先行研究の概観と論点
 第4節 小括

第2章 学生セツルメントの再興期(1945-1955年)
 第1節 日本の社会状況と社会福祉の動向
  1.日本社会の状況と戦後社会事業改革の原点
  2.社会福祉をめぐる動向と制度・政策にみる保護的・救貧的特徴
  3.組織化と社会運動
 第2節 全国における学生セツルメントの再興期
  1.東京大学セツルメントの発足――組織化への萌芽としての東大セツルメント
  2.全国セツルメント連合の結成(1954-1955年)
 第3節 各地域における学生セツルメントの誕生
  1.東京および関東におけるセツルメントの活動と組織化
  2.関西における学生セツルメントの成立
  3.再興期における戦前との連続性――教員・OS とのつながりから
 第4節 小括
  1.再興期における学生セツルメントの展開
  2.学生セツルメントの再興期における社会福祉運動との関係性

第3章 学生セツルメントの組織構築期(1956-1966年)
 第1節 社会状況と社会福祉の動向
  1.社会状況と国民生活――高度経済成長と国民生活の変化
  2.社会福祉六法体制とその他の法整備
  3.社会運動・学生運動の高揚
  4.本期における社会福祉の特徴
 第2節 全国における学生セツルメントの展開――方針に着目して
  1.全セツ連の方針と議論
  2.方針の背景と影響
 第3節 各地域における学生セツルメントの組織化と展開
  1.関東セツルメント連合の動向と組織の実際
  2.関西におけるセツルメントの組織化――関西セツルメント連合の結成
 第4節 単一のセツルメントにおける実践――地域活動を着実に行ってきたセツルとは
  1.関西における地域実践――東住吉セツルメントの勉強会
  2.関東における地域実践――若者会・若者パートの実践から
  3.その他の地域での実践
 第5節 小括
  1.組織構築期における学生セツルメントの展開
  2.60テーゼまでの動向と社会福祉運動との関係性

第4章 学生セツルメントの組織転回期(1967-1973年)
 第1節 社会状況と社会福祉の動向
  1.国民生活と革新自治体の誕生、大学をめぐる変化
  2.社会福祉をめぐる動向――地域福祉・ボランティアへの注目
  3.社会運動の展開――住民の参加と学生運動の衰退
 第2節 全国における学生セツルメントの動向――全セツ連の方針転換
  1.安保闘争前夜――1968-1969年を中心に
  2.1970-1973年にみられる方針転換――60テーゼ以降の継承
  3.方針転換と組織構造
 第3節 各地域における連合組織の展開――大阪と愛知を中心に
  1.各地の連合組織の活発化
  2.関西セツルメント連合から大阪府学生セツルメント連合へ
  3.愛知県における連合結成
 第4節 単一のセツルメントにおける実践
  1.阪セツ連所属セツルメントの実践――人間形成・地域との連携の視点から
  2.愛セツ連所属セツルメントにおける実践――ヤジエセツルメント青年会の実践
  3.各地の本期における実践
 第5節 小括
  1.組織転回期における学生セツルメントの動向
  2.本期の実践にみられる特徴と変化

第5章 学生セツルメントの組織変容期(1974-1989年)
 第1節 社会状況と社会福祉の動向
  1.社会状況――日本経済の国際化と臨調行革路線
  2.社会福祉をめぐる動向
  3.社会運動の動向――新たな社会運動の展開
 第2節 全国における学生セツルメントの動向――全セツ連の機能停止へ
  1.全セツ連の拡大と衰退――加盟セツルメントの変遷から
  2.1970年代後半における全セツ連の動向
  3.1980年代の全セツ連大会における議論と方針――全セツ連の機能停止
  4.全セツ連の機能停止の背景
 第3節 各地域の連合組織の動向――全セツ連との関係
  1.阪セツ連の動向――加盟セツルメントの変遷と議論および特徴
  2.愛セツ連の動向――加盟セツルメントの変遷と本期の特徴
 第4節 単一のセツルメントにおける実践
  1.関西における学生セツルメントの実践――障害児者パートの実践と学生をめぐる状況
  2.愛知における学生セツルメントの実践――本期の社会調査の実践から
  3.各地の学生セツルメントの実践――追廻セツルメント老人パートの実践から
 第5節 小括

第6章 1990年-現在
 第1節 社会状況と社会福祉の動向――1990年代を中心として
  1.バブル崩壊と新自由主義傾向の進展
  2.1990年代の社会福祉をめぐる動向――分野別の拡充と社会福祉基礎構造改革
  3.地域福祉をめぐる動向と社会福祉養成教育
  4.社会運動・社会福祉運動をめぐる動向――非営利・協同の広がり
  5.「共生」概念と地域共生社会
 第2節 全国の学生セツルメントの動向――機能停止宣言後の全国集会と変遷
  1.機能停止宣言後の全国のつながりの模索
  2.1990年以降における全国のセツルメントの動向
  3.1990年代における実践の動向と特徴
 第3節 近年まで活動を続けていたセツルメント――弥次衛セツルメントを例として
  1.伝統的な活動の継承と模索(1)――地域との関わりと調査活動、情宣活動
  2.伝統的な活動の継承と模索(2)――組織構造と行事、学習会
  3.弥次衛セツルメントにみる継承とその課題
 第4節 現在も活動を続けるセツルメント――大阪府立大学セツルメントを例として
  1.地域実践を離れた大阪府立大学セツルメントの実践とその経緯
  2.大阪府立大学セツルメントにおけるあり方をめぐる葛藤と悩み――「セツルメントといえるのか」という疑問
  3.大阪府立大学セツルメントにおけるあり方の模索と取り組み
 第5節 小括
  1.「1990年-現在」における動向と現状
  2.本期における学生セツルメントの特徴

 終章
 第1節 本書の総括
  1.学生セツルメントの展開
  2.学生セツルメントの展開の整理
  3.学生セツルメントの変化
  4.学生セツルメントにおける人間形成・自己教育の役割
 第2節 総合考察
  1.学生セツルメントの再興期(1945-1955年)
  2.学生セツルメントの組織構築期(1956-1966年)
  3.学生セツルメントの組織転回期(1967-1973年)
  4.学生セツルメントの組織変容期(1974-1989年)
  5.1990年-現在
 第3節 結論
  1.学生セツルメントの歴史的意義と役割
  2.学生セツルメントの課題
  3.未来への展望
  4.本書の意義と課題
  5.おわりに――学生セツルメントの歴史と未来

資料
 資料1 セツルメントの発祥と全国のセツルメントに関する略年表
 資料2 地域の広域セツルメント連合結成時期に関する略年表(関東・関西・愛知を中心に)

 あとがき
 初出一覧
 参考文献
 索引

前書きなど

序章

 (…前略…)

3.本書の構成
 (1)各章の構成と内容
 本書は、序章、終章を含めて全8章で構成される。
 序章では、研究の目的、研究の視点と研究課題、研究方法、用語の定義、本書の構成について述べる。
 第1章では、セツルメントの歴史の概略を確認した上で、先行研究の検討を行う。先行研究の検討を通して、まず、学生セツルメントの定義づけを行う。次に、学生セツルメントに関する先行研究の到達点と課題について論じ、本書の取り組む課題を示す。そして、戦前の大学セツルメントと戦後の学生セツルメントとの共通点や相違点についても、成立の経緯や組織体制、思想などの面から検討する。
 第2章から第5章は各時期区分で章立てしている。第1節で日本の社会や社会福祉の動向、第2節で全国の学生セツルメントの動向および全セツ連における議論と展開、第3節で地域の広域連合における議論と展開、第4節で単一のセツルメントにおける議論や実践、セツラーの思いなどについて共通して論じる。なお、単一のセツルメントについては、本書で取り上げる地域の広域連合に属するセツルメントを中心としつつその時期において特徴的と考えられる実践についても論じたい。また同時に、OSの語りをもとに、どのような意識で学生セツルメントに参加しそこから何を学んだのか、という人間形成・自己教育の視点からも共通して検討を行う。
 具体的な内容について簡潔に述べると、第2章では、学生セツルメントの再興期として1945年から1955年を取り上げ、戦後キティ台風を契機として東大セツルメントが発足し全国セツルメント連合が結成されるに至る経緯と戦後の混乱状況の中で先駆的・補完的に取り組まれた実践について論じる。
 第3章では、学生セツルメントの組織構築期として1956年から1966年を取り上げ、学生セツルメントが活発に展開した経緯とその背景について述べる。本期は、全セツ連から労働運動や平和運動に偏った方針提起がなされ、その後の方針転換へと至る時期でもある。そうした方針提起や転換の経緯と背景、そして本期における地域の広域連合の議論や各セツルメントでの実践を検討することによって、三者の関係性の分析を深める。
 第4章では、学生セツルメントの転回期として1967年から1973年を取り上げる。本期は、前期の影響を受け、学生の学びの場・自己教育運動としての位置づけが明確に打ち出される時期である。同時に、学生運動が1969年の東大安田講堂事件を頂点として陰りをみせはじめる時期でもある。そうした中で学生セツルメントは、社会に何か貢献をしたいという学生のエネルギーの受け皿として、1970年代にさらに拡大した側面がある。一方で、ボランティアの広がりや大学進学率の上昇、サークルの増加などを背景に、学生セツルメント独自のあり方を求められる時期でもあるといえる。本章では、このような社会動向との関連の中で、全セツ連の組織構造や方針の変化、地域の広域連合の動向、そして単一のセツルメントにおける多様な取り組みについて論じる。
 第5章では、学生セツルメントの組織変容期として1974年から1989年を取り上げる。本期は、社会福祉の制度化がすすみ、大学教育のあり方の変化などがみられる時期である。学生セツルメントでは、前期の流れを汲み全国的な広がりがみられたものの、1980年代以降、執行部のセツラーの負担の大きさや運動に取り組む必要性に疑問を抱くセツラーの増加などを背景としつつ、実際的には執行部の人事が立たないことを理由として1989年に全セツ連が機能停止を宣言する。このような動向の中での地域の広域連合における議論や単一のセツルメントの実践を検討し、三者の関係性の変化や実践において果たした役割と限界などについて論じる。
 第6章では、1990年から現在に至る学生セツルメントの展開について、とくに2019年までを主な対象として、資料およびセツルメントへの調査などを用いて検討する。そして、学生セツルメントが縮小しているなか、セツラーにはどのような思索があり、どのような取り組みがみられるかについて論じ、歴史から受け継がれているものや今後の展望について考察する。なお、第6章で詳述するが、本期は、第2章から第5章までのように三位相から論じることが困難となる。そのため、第6章は、1990年以降の展開と今日の実践に焦点をあてて論じる。具体的には、1990年以降の展開並びに全セツ連の機能停止後も継続したセツルメントについて検討を試みる。
 終章では、学生セツルメントの展開について整理した上で、それぞれの時期区分について先述の4つの視点から総括し、学生セツルメントの歴史的意義と役割、学生セツルメントの課題と未来への展望、本書の課題について論じる。

 (…後略…)

著者プロフィール

岡本 周佳  (オカモト チカ)  (

1988年大阪府大阪市生まれ。日本福祉大学大学院福祉社会開発研究科社会福祉学専攻(博士課程)修了、博士(社会福祉学)。東洋大学ライフデザイン学部助教を経て、関西学院大学人間福祉学部助教。主な論文に、「1950年代後半から1960年代半ばにおける学生セツルメントの展開――社会福祉運動の視点から」(『社会事業史研究』54号、2018年)、「1960年代後半から1980年代における学生セツルメント運動の展開――人間形成・自己教育の視点から」(『社会事業史研究』56号、2019年)、「複合的側面を有する対象への研究方法論の検討――学生セツルメント史研究を例として」(社会事業史学会創立50周年記念論文集刊行委員会編『戦後社会福祉の歴史研究と方法――継承・展開・創造 第2巻〈理論・総括〉』近現代資料刊行会、2022年)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。