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中国の外交と国連システム 加治 宏基(著) - 明石書店
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中国の外交と国連システム (チュウゴクノガイコウトコクレンシステム) 「国際の平和及び安全」をめぐるパラドクス (コクサイノヘイワオヨビアンゼンヲメグルパラドクス)

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発行:明石書店
A5判
256ページ
上製
価格 5,400円+税
ISBN
978-4-7503-5892-5   COPY
ISBN 13
9784750358925   COPY
ISBN 10h
4-7503-5892-4   COPY
ISBN 10
4750358924   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0031  
0:一般 0:単行本 31:政治-含む国防軍事
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2025年3月20日
書店発売日
登録日
2025年2月4日
最終更新日
2025年3月11日
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紹介

経済成長をとげ、世界的プレゼンスをますます高める中国。その中国が一貫して国際連合を中心とした戦後国際秩序を打ち立てようとした事実はあまり知られていない。俗流の中国脅威論からでは見えない中国外交を「国連」という鏡を通して見る現代中国外交論。

目次

序章 「中国」の「平和及び安全」
 本書の問題意識
 学術議論の整理
 戦後国際秩序――二元一体構造の変容
 政治力学としての「安全保障化」

第Ⅰ章 「中国」の“戦後”構想――国連創設と戦後処理
 はじめに
 連合国戦争犯罪委員会での模索――過去に対する自己正当化
 極東太平洋小委員会での定礎――過去、そして現在に対する自己正当化
 ダンバートン・オークス会議での飛躍――未来に対する自己正当化
 おわりに

第Ⅱ章 国連の「中心」を目指す中国――「中国代表権」問題をめぐる非同盟会議と対外援助
 はじめに
 2つのアジア・アフリカ連帯運動――国連の「周辺」からの胎動
 1960年代の国連の変容――東西・南北対立と「中国代表権」問題
 だれが中国の「安全」を保障したのか?
 おわりに

第Ⅲ章 国連の「中心」による「平和及び安全」――国際平和(維持)と活動と国益の対峙
 はじめに
 「中国脅威論」の膨張と変質――日本世論への波及
 中国連の目的と平和(維持)活動――法文規定なき平和維持の授権者
 中国による国連平和(維持)活動の黎明――慎重姿勢の背景
 中国の「国際の平和及び安全」の維持――積極姿勢の背景
 おわりに

第Ⅳ章 中華世界の復興と国際秩序との相克――UNESCO世界遺産をめぐる政治力学
 はじめに
 UNESCO世界遺産「行政」をめぐる政治的相克
 UNESCOにおける中国とその世界遺産政策
 おわりに

第Ⅴ章 安全保障としてのグローバル・ヘルス――WHOにおける「中国」の恣意性
 はじめに
 国連における中国プレゼンス――台湾排除の合法性と合理性
 台湾のWHO「参加」――説明変数としてのグローバル・ヘルス?
 グローバルヘルス・ガバナンスをめぐる「中国方案」
 おわりに

終章 中国の「国際の平和及び安全」にある不変と普遍?
 「国際の平和及び安全」という目的と原則、そして「正義」
 中国の「国際の平和及び安全」
 中国の「国際の平和及び安全」にある不変
 中国の「国際の平和及び安全」にある普遍?

 あとがき
 参考文献
 図表一覧

前書きなど

序章

 (…前略…)

 本書は、国連システムにおける中華民国(民国)とそれを「承継」した中華人民共和国(共和国)が、国連憲章で措定される「国際の平和及び安全」の維持を、自国にとっての「平和」そして「安全」といかに接続し、どのように獲得してきたかを検証する。この「中国」の国連外交ディシプリンを体系的に検証するため、6つの課題を設定する。
 第一に、民国がいかなる戦後構想を描き、その具現策として国連システムにどのような機能を埋め込んだのか、その結果、どういう地位を獲得・確立し得たのかを検証する。第二に、共和国が、「中国代表権」を受け継ぐ過程で、アジア・アフリカ諸国への対外援助を通じて支持を獲得していった実態、そして共和国を支持した主体についても討究する。第三に、共和国が安保理常任理事国として担う責任と自国の国益をいかに接続してきたのか、国連平和(維持)活動(United NationsPeacekeeping Operations/ Peace Operations: 日本では一般的にPKO)に関する政策展開と決定因から分析する。第四は、共和国の国連教育科学文化機関(UNESCO)世界遺産政策から、同国がウェストファリア体制的国際関係のなかで中華文化圏の輪郭を誇示し、いかなる「平和」「安全」を獲得したかを考察する。第五が、世界保健機関(WHO)が所管する公共衛生領域で、「中国」を保障するため、そのセーフティネットから台湾を排除する共和国によるグローバル・ガバナンスの「中国方案」について検証する。
 本書の目的は、第一に、1940年代から2020年代までの国連80年史を考察対象とすることで、「民国」と「共和国」の国連外交を貫くディシプリンを抽出することである。国連における「中国」は、1971年の中国代表権の承認交代を経て、国府と人民政府という2つの政府が単一主権を承継した二位一体の構造をなす国家主体である。この「中国」は、アジア・アフリカ諸国の多くがそうであったように、米ソなど大国の意向によって投票行動など国連政策に制約を受けてきた。しかし同時に、同国は主要な創設国であり安保理常任理事国でもあったため、いわば国連の「中心の周辺部」という唯一のプレゼンスを発揮する。共和国は、「別にかまどを築く(別起炉灶)」という建国当初の外交指針にあるとおり、概して民国の「遺産」に対して否定的である。従って、国連外交においては例外的な「継承」があったのか否か、そしてその政策状況について明らかにする。
 本書のもう1つの目的は、グローバル・ガバナンスの「中国方案」06)が国連システムにもたらした協調と相克の状況を提示することである。
 冷戦が終結し、さらに2000年代になると、領域主権的・軍事的分野から公共衛生まで、国際政治空間では安全保障化(securitization)がグローバルに拡張していった。それにしたがい、主権国家からなる国連は、PKO、UNESCO世界遺産、そしてWHOが所管する公共衛生といった、国家主権・領域を超越する「平和及び安全」にかかるアジェンダに取り組んできた。国連システムにおいて中国(共和国)は、どのような課題を重点化し「全球治理」のイニシアティブを執ろうとしてきたのだろうか。本書は、国家イメージ戦略の考察といった従来の研究とは異なり、それら機関や活動における政策分析を通じて、中国が追求する「平和」と「安全」という国益の質的変化、その拡張と凝集を明らかにする。以上の作業によって、戦後国際秩序における「中国」プレゼンスに関する視座を提示しようと試みる。

 (…後略…)

著者プロフィール

加治 宏基  (カジ ヒロモト)  (

 1974年奈良県生まれ。愛知大学大学院中国研究科博士後期課程修了、博士(学術)。
日本学術振興会特別研究員(DC1)、三重大学社会連携研究センター研究員、愛知大学現代中国学部助教、准教授を経て、愛知大学現代中国学部教授。
 専門分野は、中国外交論、東アジア国際関係論、平和研究。
 主な論文に、「台湾のWHO『参加』をめぐる国際政治?――グローバルヘルス行政のなかの非国家主体」(『不確実性の世界と現代中国』日本評論社、2022年)、「米中対立の遠景としての国連における台湾問題――キッシンジャーからの“宿題""をどう解くか」(『東亜』(649)、霞山会、2021年7月)、「中国の国連平和維持活動――『国際の平和及び安全の維持』は脅威か」(『中国・北朝鮮脅威論を超えて』耕文社、2017年)、「中国の世界遺産政策にみる政治的境界と文化実体の国際的承認」(『民主と両岸関係についての東アジアの視点』東方書店、2014年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。