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子どもの日本語教育を問い直す
外国につながる子どもたちの学びを支えるために
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年4月15日
- 書店発売日
- 2024年4月30日
- 登録日
- 2024年4月8日
- 最終更新日
- 2024年5月27日
紹介
日本語を学習する外国につながる子どもたちは、「日本語」をとおして何を学ぶのか? 子どもたちにとって「日本語」「日本語指導」はどのような意味をもつのか? 本書では、30年以上にわたる教育現場での実践や自治体での取り組みを多角的に捉え直すと同時に、そこにある「ことば観」の問い直しを通して、外国につながる子どもの多様な成長・発達を支え、生活と未来を切り拓くための日本語教育について提言する。
目次
序章 子どもの日本語教育を捉え直す
1部 子どもの日本語学習
1章 学校における日本語教育の問い直し
1 学校の日本語教育はどのように取り組まれてきたか
2 これまでの日本語教育の問い直し
3 子どもの日本語教育を進めるには
2章 ことば観の問い直し
1 「言語」とは
2 「日本語」をめぐるみえにくい特権性
3 ことばの欠陥的見方と二元論を振り返る
3章 「日本語」を学ぶことを改めて考えてみる
1 知能テストと「日本語」というボタンのかけ違い
2 「日本語を学習する」とは何を意味するのか
3 「日本語」と子どもたちの社会関係――「何となく一緒にいない」に至るまで
2部 学校の日本語教育
4章 日本の学校で生きていくこと――子どもの思い
1 日本語で話すということ・日本語が話せないということ
2 日本語を学ぶということ
3 日本語で学ぶということ――教科学習を支える
4 子どもたちにとっての日本語とは
5章 学校における日本語教育はどのように進められているか
1 学校の日本語指導
2 授業時間内に行なわれる日本語指導の現状
3 子どもの日本語教育の充実に向けて
4 地域で子どもを支える仕組み
6章 母語をどのように位置づけるか
1 母語とは何か
2 母語に対する子どもたちの思い
3 母語に対する保護者の意識
4 子どもたちは授業で母語をどう活かしているか
5 母語・母文化を積極的に取り入れる
7章 先生の学びを支える
1 先生が直面する課題――想像不可能な教育活動への挑戦
2 「教員研修」の現状
3 研修から学ぶには
4 「教員研修」の課題
3部 国と自治体の取り組み
8章 国の取り組み
1 外国にルーツのある子どもの教育政策の流れ
2 学校の日本語教育の主な政策
3 学校の日本語教育の政策上の課題
9章 自治体の取り組み
1 千葉県の取り組み
2 神奈川県川崎市の取り組み
3 佐賀県の取り組み
終章 これからの子どもの日本語教育に向けて
1 子どもの日本語学習
2 学校の日本語教育
3 国と自治体の取り組み
4 子どもの日本語教育の課題
著者紹介
前書きなど
序章 子どもの日本語教育を捉え直す
(…前略…)
学校での日本語教育が進み、教材も徐々に整備され、また、学校の先生方への研修もなされるようになりました。同時に、「日本語教師」「日本語ボランティア」など多くの人たちが子どもの日本語教育に関わるようになりました。子どもの日本語教育は、「年少者日本語教育」と呼ばれ研究と実践が蓄積されるようになりました。それとともに多くの書籍や論文も刊行されています。こうした中で、私たちはあえて「子ども」、特に小中学生を主な対象にした日本語教育に目を向けることにしました。学校の日本語教育が進む中で、その教育に潜む問題にも目を向ける必要があると考えたからです。これまでは日本語教育の充実を図ることが喫緊の課題でした。そのため「日本語を教えること=善」という意識のもとその実践が進められてきました。しかし、そうしたことが実は日本語教育を狭めているのではないかと考えています。私たちは、今一度、学校の日本語教育を多角的に捉え直し、子どもの日本語学習の可能性を広げたいと願っています。そのためには、学校の日本語教育を批判的な視点から捉え直すことが必要です。
(…中略…)
なお、本書は、研究書ではありません。ですから、自分たちの思いや願いをこめた書き振りになっていますし、立場の違いもあり書き方もそれぞれやや違っています。また、取りあげた実践や事例は私たちが直接関わったり、あるいは担当者から直接話を聞いたりしたものです。外国にルーツのある子どもの教育に関心を持つ行政担当者、学校で指導している先生、日本語の先生、ボランティアの方、この教育に関心を持つ学生さんや一般の人たちに、本書を通して子どもの日本語教育について考えてほしいと思っています。
本書は3部構成で全部で11の章からなります。1部「日本語学習を問い直す」(1章~3章)ではこれまでの日本語教育の取り組みの問い直しと子どもの側から「日本語」の捉え直しを試みたものです。これまで教える側からの視点が強調されてきましたが、子どもは「日本語」を通して何を学ぶのか、子どもからみて「日本語」や「日本語指導」はどのような意味があるのかについて考えてみました。そのことを通して子どもの日本語教育のあり方を問い直しています。
2部「学校の日本語教育」(4~7章)では学校における日本語教育の実践を取りあげ、その現状を子どもの側から捉え直しをしています。また、ここでは母語について取りあげました。母語の重要性はよく指摘されますが、学校でどのように位置づけるかについてははっきりしていません。母語をどのように実践で位置づけるかを考えてみました。さらに、学校の先生方の研修を取りあげ、その現状から今後の課題について提案しています。
3部「国と自治体の取り組み」(8~9章)は、外国にルーツのある子どもの教育に関する国と自治体の取り組みに注目しました。学校の実践に大きな影響力を持っているためです。8章では国の政策がどのように進められてきたか、そしてその政策にどのような特徴があり、どのような問題を抱えているかについて考えてみました。さらに、9章では自治体の取り組みに注目しました。自治体は国の政策をそのまま受け止めて実践しているわけではなく、地域の実態に即してその取り組みは多様です。私たちが直接関わりのある千葉県、神奈川県川崎市、そして佐賀県の三つの自治体を事例にして外国にルーツのある子どもの教育、とりわけ日本語教育がどのように進められているかをみたものです。最後に、終章では本書の知見を踏まえて子どもの日本語教育の今後の課題について提案しました。
このように本書では学校の日本語教育について多様な面から捉え直しを試みています。学校の日本語教育は対象となる子どもの増加と多様化の中で問い直しが必要になっており、これまでとは異なった対応が求められます。そのためにもいま行なわれている日本語教育の現状をしっかり捉え、その教育がどのような問題を抱えているかを把握しようとしたのが本書です。本書が学校で外国にルーツのある子どもの教育、とりわけ日本語教育に関わっている方々の今後の実践の一助になれば幸いです。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。