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パラリンピックと共生社会 久田 満(編著) - 明石書店
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パラリンピックと共生社会 (パラリンピックトキョウセイシャカイ) 2020東京大会のレガシーとは何か (ニーゼロニーゼロトウキョウタイカイノレガシートハナニカ)

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発行:明石書店
A5判
196ページ
並製
価格 2,500円+税
ISBN
978-4-7503-5729-4   COPY
ISBN 13
9784750357294   COPY
ISBN 10h
4-7503-5729-4   COPY
ISBN 10
4750357294   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2024年3月30日
書店発売日
登録日
2024年1月25日
最終更新日
2024年5月27日
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紹介

障害者との共生を考えるきっかけとなった東京2020パラリンピックは、日本のどのような変化に寄与したのか。リハビリテーション、歴史、難民、地域社会など、障害者とスポーツの関わりを多面的に解説し、共生社会実現のための成果や課題を考察した一冊。

目次

 はじめに

第1部 共生社会と障害者
 第1章 共生社会とは何か――障害のある人々をめぐる「共生」に焦点をあてて[新藤こずえ]
 第1節 「共生」概念が用いられる文脈
 第2節 マジョリティから見た障害のある人々と共生社会
 第3節 「共生社会政策」における障害児者
 第4節 共生社会実現の切り札とは?――大学での教育活動としての取り組み

第2章 障害学[戸田美佳子]
 第1節 動き出した障害者政策
 第2節 障害学の誕生と発展
 第3節 社会モデルによる研究上の困難――地域研究からの視座
 第4節 おわりに――障害学と障害の人類学

第2部 障害者スポーツと共生社会

第3章 リハビリテーションとスポーツ[石川ふみよ]
 第1節 リハビリテーションとスポーツの関係
 第2節 リハビリテーションとは
 第3節 リハビリテーションを必要とする人のスポーツ
 第4節 障害のある人がスポーツを行うことの課題

第4章 パラリンピックの歴史と開催意義[谷口広明]
 第1節 リハビリテーションとしてのスポーツ
 第2節 ストーク・マンデビル競技大会
 第3節 障害別国際スポーツ統括団体の台頭と国際パラリンピック委員会の設立
 第4節 パラリンピックの開催意義

第5章 パラリンピック難民選手団からみえてくるもの[子安昭子]
 第1節 パラスポーツと難民
 第2節 リオデジャネイロ大会から始まった難民選手団
 第3節 東京2020パラリンピック大会に参加した6人のRPT選手のプロフィール
 第4節 難民問題への取り組み――歴史と現状
 第5節 PRTが国際社会に問いかけるもの

第6章 地域社会とパラスポーツ――「心のバリアフリー」に取り組む企業の事例[倉田秀道]
 第1節 パラリンピックの意義と期待されるレガシー
 第2節 ヨーロッパとの対比から見えてくる日本の姿
 第3節 地域社会における社会課題の解決に向けたパラスポーツ支援
 第4節 企業における特徴的な事例
 第5節 まとめ

第3部 公開シンポジウムの記録

第7章 パラリンピックの開催が障害者イメージに及ぼす影響――4,000人の追跡調査から[久田満]
 第1節 パラリンピックの起源と開催意義
 第2節 パラリンピック開催の影響
 第3節 障害者とは
 第4節 調査の概要
 第5節 調査結果
 第6節 調査結果に対するコメント
 第7節 結論

第8章 東京2020パラリンピック大会のレガシーとは何か
 第1節 調査結果の印象
 第2節 パラリンピックへの関心度
 第3節 障害者教育とパラスポーツ教育
 第4節 障害者のイメージ

終章 残された課題[久田満]
 第1節 障害者との共生
 第2節 障害者に対する偏見と差別がもたらす影響
 第3節 偏見や差別はどのようにして生じるのか?
 第4節 集団と集団の対立
 第5節 偏見や差別のない社会の実現に向けて
 第6節 東京2020パラリンピックのレガシーと今後の課題

 索引

前書きなど

はじめに

 2013年9月,「東京2020オリンピック・パラリンピック大会」が決定した。これを受け,数年の準備期間ののち,上智大学では2016年4月に「学内横断的教職協働プロジェクト」として,ソフィア・オリンピック・パラリンピック・プロジェクト(SOPP)が発足した。このプロジェクトの目的は,オリンピックやパラリンピックの開催意義を理解し,直接的・間接的に開催を支援し,ボーダーレスな社会の実現を展望する機会を上智大学の構成メンバーのみならず,広く一般市民に提供することであった(上智学院 ソフィア・オリンピック・パラリンピック・プロジェクト活動報告書,2022)。
 このプロジェクトの統括責任者を務めた編者(久田)は,パラリンピックに注目した。なぜならパラリンピックは,人間の多様性を尊重し,障害の有無にかかわらず誰もが個性や能力を発揮し,積極的に参加できる社会,すなわち「共生社会」の実現をビジョンとして掲げているからである。
 東京で開催されることになったパラリンピックによって,東京が,そして日本全体が「共生社会」に向けて変化していくのだろうか。このリサーチクエスチョンの下,SOPPのメンバーであった教員のなかから有志を募り,パラリンピックの開催がもたらすレガシーを掘り起こす調査研究を開始した。
 幸運にも,この調査研究の意義に賛同して下さった,あいおいニッセイ同和損害保険株式会社(代表取締役社長 金杉恭三氏:当時)より資金面のサポートが受けられることとなり,2020年4月に「上智大学多文化共生社会研究所」を設立することができた。本書は,その研究所に所属する所員(当時)によって実施された研究の成果を中心に,学生や一般市民にもわかりやすいように執筆されたものである。
 本書でも述べられているように,「共生社会」という言葉には様々な意味が伴っている。そもそも「共生」という用語は生物学に由来し,2つの生物種が一緒に生きる,あるいは一緒に棲むという価値中立的な状況を意味している。そこには,双方に利益がある場合(相利共生)もあれば,どちらか1つの種にのみ利益がある場合(片利共生)もある。寄生虫は片方の生物に侵入し,栄養を奪い取る。さらには,片方の種を餌にして自らの生存率を高めようとする場合も「共生」である。
 動物や植物,細菌やウイルスなどの「共生」は,大自然の生態系を保全するという目的にかなったものであるが,もし人間の1つの集団が別の集団を取り込んだり,利用したり,さらには自らの集団の結束力を高めるために,もう一方の集団を消滅させることとなるとどうだろうか。理性ある人間は,そんなことはしないと言い切れるのだろうか。無自覚に,自分が所属する集団の規律や常識を他の集団に押しつけてはいないだろうか。
 本書を通して,そのような問いかけに答えられる人,「共生」と相反する「偏見」や「差別」に対して少しだけでも敏感になれる人,積極的に「共生社会」の実現に貢献しようとする人,そのような人が1人でも多くなるような社会に日本が向かっていくことを,執筆者一同,願っている。

 (…後略…)

著者プロフィール

久田 満  (ヒサタ ミツル)  (編著

上智大学文学部心理学科卒業,慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程満期退学,東京大学医学部助手,東京女子医科大学看護学部助教授,同教授を経て,上智大学総合人間科学部心理学科教授。博士(医学)。2020年より上智大学多文化共生社会研究所所長を兼任。定年退職に伴い2023年より同研究所特任所長。主な共著書に『よくわかるコミュニティ心理学[第3版]』(ミネルヴァ書房,2017年),『コミュニティ心理学シリーズ① 心の健康教育』(金子書房,2021年),『コミュニティ心理学シリーズ② コンサルテーションとコラボレーション』(金子書房,2022年)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。