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児童養護施設 鹿深の家の「ふつう」の子育て
人が育つために大切なこと
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2023年5月30日
- 書店発売日
- 2023年5月26日
- 登録日
- 2023年5月10日
- 最終更新日
- 2023年6月26日
紹介
養育者自身が「弱みを抱える一人の生身の人間」としてあり続けること──。子育てにおいて養育者が迷い、悩み、ときにネガティブな感情に翻弄されそうになりながらも、懸命に子どもたちと向き合おうとする、そのありのままの姿を、事例を通じて豊かに描き出す。
目次
ごあいさつ[春田真樹]
序章 「ふつう」をキーワードにする理由[綱島庸祐]
第1章 児童養護施設・鹿深の家のこと[春田真樹/平野順久]
第2章 「うちの子」のことを担当ケアワーカーが語ります
1 とらわれすぎず、ありのままで
【事例A】私にあなたのお世話をさせて[洋子ケアワーカー]
【事例B】子育てにマニュアルなんてなかったんだ!![恵子ケアワーカー]
2 私の感覚を私が信じる
【事例C】“嵐”の中で私がしていたことは[響子ケアワーカー]
【事例D】可愛いと思えない…けれど[祐子ケアワーカー]
3 違うでもなく、同じでもない存在として
【事例E】裕二王国の法律改正に向けて[亮子ケアワーカー]
【事例F】樹里は“自分の物語”を書き換えられるのか[雅子ケアワーカー]
4 気持ちを込めて贈る
【事例G】何でも買ってくれる両親と口うるさい職員[哲夫ケアワーカー]
【事例H】黄色いワンピースに詰まっていたもの[郁雄心理士]
第3章 日々の暮らしを支えています─「周りの人たち」の眼差し
1 子どもたちと生活する中で大切にしていること~施設内スーパーバイズの重要性~[堺稔]
2 子どものために親にアプローチする~施設職員にできること~[石田一樹]
3 アセスメントをめぐって~施設心理職として子どもたちに向ける眼差しの変遷~[綱島庸祐]
4 愛情の意味をかみしめて~里親支援専門相談員として~[鍬本悟志]
5 食育との出会い[宮川哲治]
6 総務課から子どもの育ちを支える[奥村順子]
7 発見を共に喜ぶ姿勢~用務員として~[奥村和博]
第4章 鹿深の家の子育てを外から眺める
1 退園生・健さんとのお話 今だから話せる施設の暮らし
2 退園生・蘭さんとのお話 当時の思い
3 「かわいい」と思えるのはとても幸運なこと~産休・育休の経験から~[山本菜緒]
まとめにかえて[綱島庸祐]
コラム1 鹿深の家に期待すること[川畑隆]
コラム2 鹿深の家って?
コラム3 鹿深の家の職員について
コラム4 鹿深の家での生活
コラム5 職員インタビュー(1)
コラム6 職員インタビュー(2)
コラム7 職員インタビュー(3)
前書きなど
ごあいさつ
私たち、鹿深の家の子どもたちと職員は、ふだんとても小さな世界で暮らしています。そして、この小さな世界で紡がれている日々の営みは、ほとんど世間に知られていません。
一般家庭であれば、個々の生活の実情を世間が知ることはまずありません。しかし、「社会で子どもを育てる(社会的養育)」最前線で子どもたちと関わる私たちには、その養育の在りようをむしろ積極的かつオープンに社会に示し、子どもたちにとってのよりよい暮らしを考えるための材料として提供していく責務があると考えています。
この本の中核をなす第2章にまとめられているのは、まさしくそうした内容、子どもを直接担当する職員たちの心の変遷です。事例検討会という共通の場面の体験も含んで、養育者のリアルな内面が語られます。
また、小さな世界で暮らすその閉鎖性ゆえに、私たちは知らず知らず世間のあたりまえ(ふつう)とは異なる価値観の中で子どもたちの養育を実践している可能性があります。そのため、折に触れて自分たちの取り組みを率直にふり返り、その内容を外部に発信しつつ検証を行うことは欠かせないとも思っています。この二点が本書を世に出す大きなモチベーションになっています。
加えて、鹿深の家では児童養護上のテーマの一つとして、「“ふつう”とは何か」ということを問い続けています。なぜなら、子どもたちにとって「施設で暮らす」ということは、「それまで自分が“ふつう”だと思っていたのとは違う世界で生きていかねばならなくなること」、そして「事あるごとに新しく知る“ふつう”に傷つき翻弄され続けること」なんだと考えているからです。
本書全体を通して、その姿勢と価値観を読者のみなさんに感じとっていただければ幸いです。
上記内容は本書刊行時のものです。