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「BTS学」への招待
大学生と考えるBTSシンドローム
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2023年3月15日
- 書店発売日
- 2023年3月10日
- 登録日
- 2023年1月31日
- 最終更新日
- 2023年4月3日
紹介
韓国発グループBTSに世界中の多くの人が魅了された。本書は、BTSの何が人々をこれほどまで夢中にさせるのか、そしてBTSをめぐる社会・文化現象をどのように理解すればよいのかに焦点を当て、BTSと「BTS現象」を「学際的に」理解しようとする「BTS学」(BTSology)を追求したものである。
目次
プロローグ 「BTS学」へようこそ[李東俊]
「BTS学(BTSology)」を目指して
「リアルさ」こそ、普遍性獲得の源
「共感」の連鎖
「紫する」まで
第1章 BTS、君は誰?――越境・横断・拡張するそのアイデンティティ[木村愛結・風呂中里菜]
「防弾」が意味するものは?
アーティスト?それともアイドル?
アイデンティティ発信型のアイドル
社会の不公平に対抗、BTSが世界を変える?!
ジェンダー・アイデンティティ、さらなる進化を目指す
時代遅れな「男らしさ」、性別問わない魅力
K-POPスター?ワールドスター?
唯一の世界観、スターへの要因に
新時代の1ページを彼らと共に
第2章 今、私たちの「心の地図」――BTSという名の心理学[今浪ユリヤ・藤岡李香]
今ある時間を大切に
相反しながらも共存する二つの世界
揺るがない「LOVE YOURSELF」シリーズ
既成の価値観を揺るがす
社会全体の代弁者?
己を知れ
苦楽を共に
第二幕への序章
正義とは何か
内に秘めた本心と飛躍の可能性
第3章 歌詞から読み取れる熾烈なヒューマニズムの物語[星野光晴・小吉美彩貴]
夢を語る若者たち
「青春」、すべての人々にあるもの
BTSが伝える愛のかたち
BTSと共に変わっていくメッセージと変わらないメッセージ
BTSの「軌跡」と「奇跡」
メッセージの根底に流れ続けるヒューマニズム
第4章 マーケティング戦略から見るBTSの売上方程式[太田雅子]
収益性の中身
初の1位獲得以降の売上要素
海外市場に浸透した兆候
コンテンツを繋ぐ物語とその共感性
トランスメディア・ストーリーテリング
物語をより「リアル」にするために
物語とIPとの相乗作用:「BT21」
TinyTAN
新たな収入形態「プラットフォーム」=Weverse
BTSの売上方程式=「物語」効果×「メディア」横断×「プラットフォーム」確立
第5章 東アジアのなかの「韓国発」アイドルBTS[田村凜香・藤本風歌]
母国・韓国では意外と熱量が低い?
海外から国内に逆輸入される形で広まったBTS
中国で爆発するBTSへの愛
真のARMYが見せるBTSへの忠誠心
愛憎の日韓関係、BTSから見える歴史認識の差
韓国よりも日本で売れたい?
K-POPアイドルの枠を超えたがゆえの苦労
第6章 「壁」を越えて――「POPの本場」アメリカの心に刺さったBTS[塚盛可蓮・泉咲都季]
BTSの快進撃――勝負の難しいアメリカで
「Dynamite」と「Butter」に見るアメリカ的音楽性
正直なメッセージは人種や言語の壁を越えて
BTSが世界を魅了する理由
ビートルズとBTS、世界的な支持を得た両者の相違点
第7章 「自分を愛し、声を上げよう」――「善なる影響力」のバタフライ効果[金ミンジ・川野友里亜]
Kコンテンツの叙事に注目する世界
多様性と包容の時代を生きるBTS
肯定のメビウスの帯、「善なる影響力」
自己肯定で人々を癒す現代の救世主?
第8章 「共に生きていこう」――アクティビズムに溢れるARMYの新世界[近藤碧・眞名子優斗]
人の心と社会と共生する「ファンダム」とは
自主と連帯によって生まれたK-POPの熱い世界
「サラダボウル集団」ARMYの構成
最強の「営業部隊」としてのARMY
Twitterを通した無限の語り合い
物言うファンたちが見つけた壁の乗り越え方
共により良い世界を目指して
第9章 永久平和に向かった「嗜好共同体」?――カントの「美学」から考えるBTSをめぐる世界[鮫島夏葉・安藤咲彩]
「美」の源泉
「主観的普遍妥当性」とBTS
センスス・コムニスとARMY
「道徳的共同体論」とBTSをめぐる「嗜好共同体」
「美」の共同体へ
エピローグ 「BTSへの旅」を振り返って[李東俊]
楽しむ前に知ってほしい存在?
BTSの物語、これからも続く
前書きなど
プロローグ 「BTS学」へようこそ
(…前略…)
BTSの、BTSによる、そしてBTSをめぐる世の中の変化を、人々は「BTS現象」(BTSphenomenon)あるいは「BTSシンドローム」と呼ぶ。
BTSが「現象」であるのは、その影響がアルバム売上で測定されがちな音楽消費の領域にとどまらないからである。音楽だけでなくソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などを通じて拡散させた世代・文化・人種・言語・ジェンダーなどに対する革命的で前向きな考え方に、多くの人々が心を惹かれ、恐れや痛みを抱くのは人間としてむしろ当然であるという、ともすれば忘れられがちな「人の常」に改めて気づかされた。そして、そこから生まれる新たな考え方や文化に加えて、受容する方式自体も、新たな世界観の出現や、近未来の普遍的な新文明の兆候のようなものを感じさせたのである。
「『人生で一番必要としているときにBTSと出会った』という言葉を多くの人から聞く。でも、実際にはその逆なのではないだろうか……。彼らがあなたを見つけてくれるのだ。何もかもうまくいかず、人生の目的を見失ってしまったかのような瞬間にあなたの前に現れる。彼らには、そんな不思議な力がある。突然現れた彼らは、あなたの手をとって起き上がらせてくれ、音楽と向き合えるようにと力を貸してくれる。」(チャクラボーティ 2022, p.33)
これは、大衆文化専門誌Rolling Stone インド版でシニアライターを務めるリディ・チャクラボーティ氏の告白であるが、いま我々は、氏のように、BTSとともに歩むことを誇りに思い、生涯にわたってBTSの「沼」で共生することを誓った人々による、人類史上もっとも切ない「嗜好共同体」を目の当たりにしている。BTSの熱狂的なファン集団・ARMY(アーミー)(Adorable Representative M.C. for Youth;若者を代表する魅力的な進行役)は、国境や人種、言語などあらゆる障壁を越えて、世界中で生息するばかりか(ARMY is everywhere!)、その生態系を拡張し続けている。そして、もはやBTSについて語ることは、世界のどこでも「いまここ」を共有することを意味するようになった(金 2022, p.254)。
BTSは何者であり、いかにしてあれほど力強く、多様性に満ちたグローバルな現象を起こすことができたのだろうか。また、BTSの、BTSによる、BTSをめぐる様々な現象はそもそも何であり、それらは一体何を示唆するのか。本書は、こうした疑問点を幅広く、そして深く掘り下げていくための素朴な試みである。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。