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先見的ガバナンスの政策学 ピレト・トヌリスト(著) - 明石書店
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先見的ガバナンスの政策学 (センケンテキガバナンスノセイサクガク) 未来洞察による公共政策イノベーション (ミライドウサツニヨルコウキョウセイサクイノベーション)
原書: Anticipatory Innovation Governance: SHAPING THE FUTURE THROUGH PROACTIVE POLICY MAKING

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発行:明石書店
A5判
248ページ
上製
価格 3,600円+税
ISBN
978-4-7503-5530-6   COPY
ISBN 13
9784750355306   COPY
ISBN 10h
4-7503-5530-5   COPY
ISBN 10
4750355305   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0031  
0:一般 0:単行本 31:政治-含む国防軍事
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2023年3月7日
書店発売日
登録日
2023年1月27日
最終更新日
2023年4月3日
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紹介

予測困難なVUCA時代に求められる公共政策はどのようなものか。システム思考、未来洞察、EBPMに関するOECDの調査結果から、先見性のある新しい方法や構造、能力を構築し、AIなど新興技術の発展に対応する政策イノベーションの必要性を提起する。

目次

 日本語版序文
 まえがき
 謝辞
 要旨

第1章 政策立案における変革の必要性
 はじめに
 第1節 ガバナンスシステム上の欠陥とギャップ
  1.1 公共セクターにおける不確実性の把握と対処
  1.2 長期トレンドへの対応
  1.3 現代のポリシーミックスの複雑性
  1.4 リスク回避と無作為の代償
  1.5 技術とガバナンスの関係
 第2節 縦割り打破に必要な新たな政策アプローチ
  2.1 新たな政策アプローチの定義:不確実性と管理統制の方向性

第2章 未来洞察とイノベーションとガバナンスの関係
 はじめに
 第1節 予期とは何か? その起源
 第2節 敵か味方か? 未来洞察と先見的イノベーション
 第3節 予期の実際は? 未来洞察の取り組み事例

第3章 先見的イノベーションガバナンスの制度・機構
 はじめに
 第1節 先見的イノベーションに必要な行為主体性とは?
  1.1 政策オプションの探索と政策実験
  1.2 センスメイキング
  1.3 ツールと方法論
  1.4 データと測定
  1.5 組織能力
  1.6 制度組織構造
 第2節 政策の承認・決定環境
  2.1 既得権益と認知バイアス
  2.2 社会的関心と参加
  2.3 ネットワークとパートナーシップ
  2.4 正統性
  2.5 エビデンスと評価
  2.6 学習ループ

第4章 公共政策イノベーションに向けて――ガバナンス不能なものにガバナンスを効かせる先見的イノベーションガバナンス(AIG)モデル
 はじめに
 第1節 先見的イノベーションガバナンスモデルに向けたアクションリサーチ
 第2節 政府の中核構造における予期とは何か?

 参考文献・資料
 付録
 解説 イノベーションを社会実装させる技術――未来洞察による企業・行政組織のメタ認知能力


コラム・図・表一覧

 ――第1章 政策立案における変革の必要性
 コラム1.1 不確実性の分類
 コラム1.2 未来に関する動物メタファー
 コラム1.3 ケーススタディ:「ハワイ2000」プロジェクト
 コラム1.4 因果関係と未来像の理解のスタンス
 コラム1.5 新興技術と規制に関する代表的なOECD調査:GoingDigitalプロジェクト
 コラム1.6 技術革新への政策対応における制度・越境問題
 図1.1 未来動物園
 図1.2 技術とコリングリッジのジレンマ
 図1.3 OECD公共イノベーション観測所(OPSI)の提唱する多面的イノベーションモデル
 表1.1 未来に対する態度・反応

 ――第2章 未来洞察とイノベーションとガバナンスの関係
 コラム2.1 予期、先見的イノベーション、先見的イノベーションガバナンス(AIG)の基本定義
 コラム2.2 変革への対応:様々なガバナンス理論
 コラム2.3 未来洞察の目的・類型
 コラム2.4 先見的ガバナンスの優良事例:米国ナノテクノロジー・イニシアティブ
 コラム2.5 政府スタッフへの能力構築の優良事例:カナダ政府による分散型の未来洞察に向けた取り組み
 コラム2.6 未来学者リールミラーの未来リテラシー
 図2.1 予期、先見的イノベーション、先見的イノベーションガバナンス(AIG)
 図2.2 起こりそうな未来についての複数シナリオの想定

 ――第3章 先見的イノベーションガバナンスの制度・機構
 コラム3.1 高い未来意識を持つ態度・姿勢
 コラム3.2 フィンランドにおける子どもの将来のための政策オプション探索
 コラム3.3 不確実な状況下での意思決定:不十分理由の原理(による不作為)から予防原則への転換
 コラム3.4 バッシーの未来思考原則
 コラム3.5 中国における政策実験の実践状況
 コラム3.6 金融ガバナンスにおける不確実性の低減:規制のサンドボックス制度
 コラム3.7 カオスエンジニアリング
 コラム3.8 技術進歩のS字型カーブモデル:イノベーションのパターン
 コラム3.9 未来洞察の方法論の普及:フューチャーズツールキット
 コラム3.10 未来洞察における代表的な分析手法:シナリオプランニング
 コラム3.11 スペキュラティブデザイン、デザインフィクションと伝統的なデザインとの相違点
 コラム3.12 責任ある研究・イノベーション
 コラム3.13 平和学の父ヨハン・ガルトゥングのトランセンドメソッド(平和的手段による紛争解決)
 コラム3.14 未来行動モデル
 コラム3.15 ウイークシグナル・兆し
 コラム3.16 リアルタイムモニタリングで世界の飢餓をなくす:世界銀行アルテミス・プロジェクト
 コラム3.17 破壊的な犯罪の予防的検知:データダッシュボード「シティディール」(オランダ)
 コラム3.18 クラウドソーシングによるデータ収集
 コラム3.19 幼児教育システム機構のビジョンを実現するためのナラティブの活用事例(米国カンザス州)
 コラム3.20 イノベーションのジレンマ
 コラム3.21 技術革新と倫理委員会の事例(スウェーデン)
 コラム3.22 英国国営宝くじ基金のエマージング・フューチャーズ・ファンド
 コラム3.23 先見的イノベーションへの資金提供スキーム(スウェーデン・ヘルシンボリ市)
 コラム3.24 フィンランド政府の未来洞察システム
 コラム3.25 予期のためのインフラ・基盤:コードとしての規制
 コラム3.26 未来体験による認知バイアスの打破
 コラム3.27 人工知能(AI)におけるバイアスの回避のためのOECD原則
 コラム3.28 参加型未来プラットフォーム:「未来の社会福祉」(デンマーク)
 コラム3.29 人工知能(AI)に関わるステークホルダーの関与
 コラム3.30 オランダ政府の「未来リハーサル」
 コラム3.31 スペイン北部ギプスコア地域モンドラゴンバレー:D2030ソーシャル・イノベーション・プラットフォーム
 コラム3.32 長期主義視点での未来洞察の専門部署の設置(スペイン):各国の未来洞察組織の存在意義の証明
 コラム3.33 フューチャーレビュー制度:フィンランド政府における未来洞察
 コラム3.34 実験的な政策の正統性の確保方策:英国金融行動監視機構によるデジタルサンドボックスの事例
 コラム3.35 評価制度とエビデンスがイノベーションを阻害するメカニズム:フランスの公共活動変革基金の事例
 コラム3.36 エビデンスに基づくグッドガバナンスの確保:政策設計、実施、評価に必要なエビデンスの基準とは?
 コラム3.37 組織学習のタイプ
 図3.1 先見的イノベーションガバナンスの構成要素
 図3.2 規範的な技術進歩のパターン:S字カーブ
 図3.3 無知(イグノランス)と不確実性のマトリクス
 図3.4 ポッパーの未来洞察ダイヤモンド
 図3.5 フューチャーコーン
 図3.6 先見的実験モデル及び関連する技術・手法
 図3.7 未来アクションラボサイクル
 図3.8 未来クリニック:参加型未来洞察プロセス
 図3.9 インパクト×不確実性マトリクスと未来学の研究方法論
 図3.10 英国政府の政策ラボのビッグデータと厚いデータの融合モデル(2020年)
 図3.11 知識検索マトリクス
 図3.12 ガートナー社のデジタルガバメント関連技術のハイプサイクル(2018年)
 表3.1 伝統的な未来洞察(フォーサイト)手法の代表例
 表3.2 未来洞察の方法論のタイプ
 表3.3 「6つの柱(Six Pillars)」メソッドと利用したワークショップの実例
 表3.4 公共政策イノベーション推進組織:類型と代表事例
 表3.5 イノベーティブな問題解決を目指す中で認知の過程で起きる問題現象
 表3.6 「経路依存性」対「解決の方向性の経路創造」

 ――第4章 公共政策イノベーションに向けて
 コラム4.1 OECD先見的イノベーションガバナンスの研究ポートフォリオ

 ――付録
 表A.1 技術予測の方法論の階層分類

前書きなど

まえがき

 社会のオートメーション化の進展、気候変動、感染症のパンデミック、高齢化社会の到来、人工知能の発展のような(科学技術イノベーションに関連する)今日の社会課題には、グローバル、個人レベルの双方で予想できない意図しない結末を招くことがある。複雑なシステムが、例外的な事象ではなくもはや常態と化しているからである。こうした環境の下では、政策立案における「(問題が起きてからの)事後対応的(reactive)」な取り組みでは、効果的ではないことがますます明らかとなっている。危機に直面してから打開策を考えるのでは、危機が発生する前に事前に予期して備えるよりも、人的リソースの面でも金銭的な面でも、はるかに手間がかかってしまう。新型コロナウイルス(COVID-19)の蔓延に伴う健康危機でいみじくも明らかになったように、(将来を)予期する活動に対して資源配分・投資する必要がある。
 この(科学技術イノベーションと法規制・政策対応)ギャップを埋めるためには、政府組織が新しいツールや手段を用いて複雑な問題や不確実性に効果的に対処できるように、政策立案への新しい取り組みが必要となっている。この取り組みは、未来志向であると同時に、予期に基づいた行動起点(actionoriented)のイノベーション機能を含んだものでなければならない。未来洞察(foresight)のツールが政策立案の過程で統合された形でますます利用されるようになってきたにもかかわらず、不確実な未来を予測するだけでなく、望ましい成果(outcome)を得るために今どのように行動すべきかについては、公共セクターは実践的な理解を欠いていることが多い。本書で紹介する内容は、予期という行為に対する基礎となる姿勢である。また、議論で扱う内容は、(文脈に即した新規性があり、社会に導入され価値観を一変させるような製品、サービス、プロセスと定義される)イノベーションを促進するために政府が利用できる幅広い組織能力としての「先見的イノベーションガバナンス(anticipatory innovation governance)」をめぐる実践の先進事例である。未来に起こりうることに関する知識をまとめるという従来型の予期の取り組みの方向性(将来予想・フォーキャスティング)とは異なり、事前に備えながらイノベーションを通じて未来を切り拓くことにねらいがある。
 本書では、学術的・政策的議論を基礎として、先見的イノベーションガバナンスに関する序論を概観しながら、政策立案の未来の姿を示していく。そこから、こうした(未来に対する予期を重視する)取り組みが、政策立案プロセスをどのように根底から変革していくかを論じる。政策によってシステム内の個人やグループの活動が規定される姿ではなく、個々の実験(的な取り組みの積み重ね)をすることが政策形成と政策の有効性に寄与するものになるのである。それは、政策立案者が変革を望む際に関連する変動要因(パラメーター)を整理した上で、これらを個人又はグループと現実世界の状況で機能するよう、単一又は一連の実験を継続的に繰り返し・検証を行うことで初めて可能になる。結果として、政府は、単に潜在的な望ましい成果(outcome)を予測し対処するためのイノベーティブな政策上のアプローチを開発するだけではなく、これらの政策上の取り組みが着実に機能するように行動することで、理想的な未来に向けて進むことができるようになる。
 本書は、複雑性と政策立案に関する文献レビューと、政策イノベーション、システム思考、予期、新興技術(emerging technology)、未来洞察の分野に関するOECDの広範な調査結果を基づき編集されたガバナンスレポートである。また、OECD(経済協力開発機構)「公共セクターイノベーション観測所(Observatory of Public Sector Innovation: OPSI)」が実施した各国政府及び国際機関の専門家との議論にも依拠している。

著者プロフィール

ピレト・トヌリスト  (ピレト トヌリスト)  (

経済協力開発機構(OECD)公共セクターイノベーション観測所(OPSI)シニアプロジェクトマネージャー。トランスフォーマティブイノベーション、イノベーション理論開発作業のコーディネート、先見的ガバナンス及びミッション指向型イノベーションに関するプロジェクトリードを務める。エストニアタリン工科大学卒。同大にてテクノロジーガバナンスで修士号及び博士号取得。ベルギーカトリックルーベン大学修士(政策評価)。研究テーマは、イノベーション政策、エネルギー技術、社会イノベーション論。イノベーションコンサルタントととして、タリン工科大学研究員、エストニア議会のアドバイザー、イノベーションと起業に関する政策分野担当の国家会計検査院業績評価監査役などを経て現職。

アンジェラ・ハンソン  (アンジェラ ハンソン)  (

経済協力開発機構(OECD)公共セクターイノベーション観測所(OPSI)政策アナリスト。公共部門におけるイノベーションの手法やツール、イノベーションマネジメント、キャパシティビルディングに関する業務に関するリードを務める。ミネソタ大学卒。地理情報の情報技術者、ミネソタ州水土壌資源管理委員会、米国テキサス州オースティン市イノベーションストラテジストなど、米国で複数の州及び基礎的自治体の機関での勤務で経て現職。

白川 展之  (シラカワ ノブユキ)  (

新潟大学教育研究院人文社会科学系経済学系列/工学部工学科協創経営プログラム准教授。東京理科大学経営学部卒。広島大学大学院社会科学研究科マネジメント専攻修了、修士(マネジメント)。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科単位取得退学、博士(政策・メディア)。専門は、技術経営論、政策科学及び人文社会・図書館情報学的な学際融合研究。研究テーマは、科学技術及び社会イノベーションに関するマネジメントとガバナンスを対象とした未来洞察と政策評価。広島県職員、文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)科学技術予測センター主任研究官、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)技術戦略研究センター研究員、慶應義塾大学政策・メディア研究科特任講師などを経て現職。産学官連携の実務を幅広く経験。他に、社会起業家として、一般社団法人コード・フォー・ジャパンに参画、設立時社員・理事を経て、現フェロー。この他、認定NPO法人21世紀構想研究会監事、公益財団法人未来工学研究所特別研究員、公益財団法人中曽根平和研究所客員研究員など公職多数。

上記内容は本書刊行時のものです。