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感染症とソーシャルディスタンシング 林 良嗣(編) - 明石書店
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感染症とソーシャルディスタンシング (カンセンショウトソーシャルディスタンシング) COVID-19による都市・交通・コミュニティの変容と設計 (コヴィットナインティーンニヨルトシコウツウコミュニティノヘンヨウトセッケイ)

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発行:明石書店
A5判
264ページ
並製
価格 3,500円+税
ISBN
978-4-7503-5474-3   COPY
ISBN 13
9784750354743   COPY
ISBN 10h
4-7503-5474-0   COPY
ISBN 10
4750354740   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2022年12月20日
書店発売日
登録日
2022年11月8日
最終更新日
2022年12月9日
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紹介

世界中に感染拡大が起こったCOVID-19対策としての「ソーシャルディスタンシング」を、都市とコミュニティの変容の視点から論理的・統計的に分析。社会分断につながる問題点を洗い出し、様々な角度から都市空間の再設計を展望すべくまとめた論集。

目次

はじめに COVID-19による都市・コミュニティの変容を探る[林良嗣]

第1部 COVID-19とソーシャルディスタンシングがもたらしたもの

第1章 Social Distancing研究から見えてきたもの[林良嗣・森田紘圭]
 1.Social Distancing研究における根源的問い
 2.本書が明らかにしていること――Social Distancing政策による倫理的、法的、社会的課題とその対応策
 3.政策への示唆
 4.本書の役割

第2章 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と倫理的・法的・社会的課題(ELSI)[標葉隆馬]
 1.はじめに
 2.ELSIとRRI
 3.感染症対策を考えるために社会的脆弱性の視点の重要性に立ち帰る
 4.欧州におけるCOVID-19とELSIの議論
 5.COVID-19のELSIをめぐる議論
 6.日本における議論状況――2020年以降の科学技術政策と専門家会議等における議論から
 7.まとめにかえて――COVID-19を超え、将来の新興感染症をめぐるELSI対応と知識生産のために
 8.要点

第3章 ソーシャルディスタンシングがもたらす格差と分断[森田紘圭・高野剛志・中村晋一郎]
 1.はじめに
 2.2020年における外出とコミュニケーション、収入の変化
 3.社会経済状況の違いによる外出とコミュニケーション、収入の変化
 4.生活の変化が社会関係と心身の変化にもたらす影響
 5.ソーシャル・キャピタルの変化
 6.おわりに
 7.メッセージ

第4章 ソーシャルディスタンシング政策の評価、行動適応と立案方法[張峻屹・張潤森・馮涛・康婧・丁泓翔・劉瑞・吉田拓樹・塚元晟矢・鹿嶋小緒里]
 1.はじめに
 2.COVID-19パンデミック初期における日本の感染状況とディスタンシング政策への行動適応
 3.日本における感染拡大抑制のためのディスタンシング政策の立案とその効果
 4.COVID-19ディスタンシング政策の効果の国際比較
 5.個人レベルから見たディスタンシング政策の効果の評価
 6.COVID-19期間中のソーシャルコンタクトの国際比較
 7.活動遂行と移動の視点から見たディスタンシングの具体的な取り方
 8.ゼロ・コロナ政策とウィズコロナ政策の国際的議論から思うこと
 9.ディスタンシング政策のプロセス管理について
 10.おわりに

第5章 ソーシャルディスタンシング効果の充足性指標による評価の提案 モスキート感染モデルとQOLアクセシビリティ法[竹下博之・林良嗣]
 1.はじめに
 2.感染拡大の原因? 「移動」か「活動」か?
 3.これまでの疫学モデル
 4.移動・活動を考慮した感染拡大検証フレーム「モスキート感染モデル」
 5.人々のQOLの変化とCOVID-19パンデミック
 6.ケーススタディ
 7.まとめ
 8.メッセージ

第6章 パンデミック・監視・自己決定[大屋雄裕]
 1.パンデミックと国家の監視
 2.他者という危険
 3.自由と距離
 4.パンデミックが問うもの
 5.国家による監視・国家への監視
 6.メッセージ

第2部 COVID-19による都市・交通・コミュニティの変容と設計

第7章 都市・コミュニティの新たな計画論の形成へ[村山顕人]
 1.はじめに
 2.ウィズコロナ時代の行動変容・社会変容
 3.ウィズ/アフターコロナ時代の都市をめぐる議論や取り組み
 4.計画のアプローチ
 5.ウィズ/アフターコロナで変わる日常生活圏と駅まちデザイン
 6.おわりに
 7.メッセージ

第8章 COVID-19による価値観変容から見た都市のQOL再評価[森田紘圭・高野剛志・中村晋一郎・林良嗣]
 1.はじめに
 2.COVID-19による生活の質の変化
 3.居住に対する価値観の変化
 4.COVID-19を受けた都市構造の再評価――四日市市を例として
 5.COVID-19を受けた都市構造の再評価――名古屋都市圏を例として
 6.経済優先型開発から既存ストックを活用したQuality Stock化へ
 7.メッセージ

第9章 コロナ後、地域公共交通が再起動するために[加藤博和]
 1.はじめに
 2.公共交通利用が戻ってこない
 3.公共交通崩壊がいよいよ現実に?
 4.コロナ禍への対応策を提示できないモビリティ革命
 5.「楽しい外出を提案できる」公共交通事業への転換が必要に
 6.自治体・地域が主体的に地域公共交通を守り育てる
 7.メッセージ

第10章 COVID-19の影響を踏まえた新たな地域公共交通維持スキームの提案[福本雅之・井原雄人]
 1.はじめに
 2.日本の地域公共交通維持スキームの問題点
 3.コロナ禍による地域公共交通利用の変化
 4.ポストコロナ禍における地域公共交通維持スキームのあり方
 5.おわりに
 6.メッセージ

第11章 COVID-19下でのパブリックスペースの利用と管理の変容[中村晋一郎・高野剛志・森田紘圭]
 1.はじめに
 2.COVID-19下でのパブリックスペースの利用状況の変化
 3.COVID-19拡大下におけるパブリックスペースの管理と役割の変容
 4.おわりに
 5.メッセージ

第12章 新型コロナウイルス感染症に対するコミュニティの応答[名畑恵・森田紘圭]
 1.市民による小さな居場所の取り組み
 2.市民による小さな居場所「まちの縁側」をサポートする取り組み
 3.コミュニティの支えになるオープンスペース――管理運営に着目して
 4.「応急」「回復」「予防」のフェーズにみるコミュニティの応答
 5.メッセージ

 索引

前書きなど

第1章 Social Distancing研究から見えてきたもの

1.Social Distancing研究における根源的問い

 未知の感染症が我々の社会に突如として出現したとき、ワクチンや特効薬などが開発されていない段階において、われわれがそれに対応する手段はほとんどなく、その中で人と人との物理的距離を取る政策、すなわちPhysical Distancingが重要となる。その一方、社会や都市は本来的に人と人とが手を取り合い、ともに運営することを前提として設計されてきており、これに配慮することなくPhysical Distancingを実施すれば、経済、社会に様々な問題を引き起こすこととなる。
 現実として、ロックダウン、あるいは緊急事態宣言による営業自粛要請により、運輸業や観光業、飲食業などの産業や、学校、会社、地域の社会システムの機能不全、差別や孤独、格差の拡大、そして社会全体の連帯の欠如が表面化した。これらはパンデミック時の一過性の問題にとどまらず、社会全体に大きく影を落としている。
 では、こうした副作用をもたらさない、人や社会、経済に配慮した程よいDistancingはできないのか? これをSocial Distancingと呼ぶことにすれば、そのクリアすべき条件は何か?
 そこで、本の冒頭で二つの根源的問いかけを行おう。

(1)社会全体の幸福と個人の幸福はどのように調整されるべきか?
 COVID-19に対して実施されたPhysical distanceの確保は、緊急的に「社会全体」の被害を最小化するためにとられた政策であり、これらは社会全体の被害を抑えるという意味で、一定の効果があったと考えられる。他方、その個々人への影響は一様ではなく、個人間のリスクや負担の不平等を生み、さらにはそれが社会的連帯を損ねているのではないか。このような事態が一体どのように発生しているのか、そして同様の事象が発生した際に、不平等を低減する都市コミュニティのSocial Distancingはどうあるべきか。

(2)新たな生活様式(New Normal)と都市文化を両立できるSocial Distancingとは何か?
 人の幸福や暮らし方は、Physical distanceの確保のみで規定されるものではなく、むしろその距離が都市文化を育んできた。物理的に人と人との間隔をあけるということにとどまらず、移動のしやすさやロックダウンなどの活動の自由を制限された状況下においても、都市・空間が提供する価値や、それが人に届いて得られるQOLが低下しないDistancing、すなわちSocial Distancingは極めて重要な概念であり、その計画・設計・管理はどうあるべきか。

 本書は、上記の根源的問いに対して答えていくために、大きく二部構成となっている。
 第1部は、COVID-19やSocial Distancingによる倫理的、法的、社会的課題について、第1章の導入に続いて、第2章ではCOVID-19のELSIの議論の視点、第6章ではパンデミックへ対応としての国家の監視、公益、自己決定の対立と他者への不安の昂進の整理を行っている。この本をまとめるきっかけとなった研究プロジェクトでは、特にこれらの政策による生活行動や生活環境およびその格差について調査・分析・考察を行っており、それらを第3章において格差・分断とソーシャル・キャピタルの減退の視点から、そして第4章においてSocial Distancingへの生活行動適応と政策立案の国際比較、第5章において、Social Distancingによる感染リスク変化とQOL変化の移動・目的地での活動・自衛の三段階分解評価法として、とりまとめている。
 第2部は、COVID-19による都市・交通・コミュニティの変容と対応の具体的な事例をまとめた。第7章ではSocial Distancingに対する国内外の都市計画論と新政策、第8章ではパンデミック下での価値観変容に伴うQOL変化からみた1989年ニュータウンの再評価、そして第9章ではコロナ禍における地域公共交通の崩壊と自治体対応、第10章では「とよたおいでんバス」事例データによるCOVID-19の地方公共交通への影響分析をまとめている。続く第11章ではCOVID-19下での公園等パブリックスペースの利用・管理の変容、最後に第12章ではコロナ禍でのコミュニティ内での市民の小さな居場所の取り組みを、それぞれの視点からまとめている。

著者プロフィール

林 良嗣  (ハヤシ ヨシツグ)  (

中部大学卓越教授、名古屋大学名誉教授。ローマクラブ執行委員・日本支部長、世界交通学会前会長・COVID-19Taskforce議長。交通・都市の費用便益分析をQOL評価へ転換するQOLアクセシビリティ評価法を発案し、コンパクト・プラス・ネットワーク、都市縮退、SDGsの包摂性の評価等、多方面に応用。著書にTransportation amid Pandemics(Elsevier)、Balancing Natureand Civilization、Intercity Transport and Climate Change(いずれもSpringer)、『持続性学――自然と文明の未来バランス』(共編)、『レジリエンスと地域創生――伝統知とビッグデータから探る国土デザイン』(共編著)、『交通・都市計画のQOL主流化――経済成長から個人の幸福へ』(共編)(いずれも明石書店)など。

森田 紘圭  (モリタ ヒロヨシ)  (

大日本コンサルタント株式会社インフラ技術研究所未来都市推進室・室長。博士(環境学)。名古屋大学大学院環境学研究科修了後、同社入社。道路計画および設計、エネルギー事業の調査・計画に関する業務を経て現職。現在は、中心市街地における都市・地域再生や気候変動やSDGsなどに対応する持続可能なまちづくり、スマートシティなど様々な事業の企画から設計、プロジェクトマネジメントに関わる。また、名古屋中区のまちづくりを担う錦二丁目エリアマネジメント株式会社の取締役として地域経営にも携わる。

上記内容は本書刊行時のものです。