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イタリアのフルインクルーシブ教育 アントネッロ・ムーラ(著) - 明石書店
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イタリアのフルインクルーシブ教育 (イタリアノフルインクルーシブキョウイク) 障害児の学校を無くした教育の歴史・課題・理念 (ショウガイジノガッコウヲナクシタキョウイクノレキシカダイリネン)
原書: Pedagogia Speciale. Riferimenti storici, temi e idee

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発行:明石書店
四六判
308ページ
並製
価格 2,700円+税
ISBN
978-4-7503-5471-2   COPY
ISBN 13
9784750354712   COPY
ISBN 10h
4-7503-5471-6   COPY
ISBN 10
4750354716   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0037  
0:一般 0:単行本 37:教育
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2022年9月30日
書店発売日
登録日
2022年8月10日
最終更新日
2022年10月14日
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書評掲載情報

2022-12-11 読売新聞  朝刊
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紹介

1970年代から障害児のための学校を廃止しインクルーシブ教育へと方向転換したイタリア。その歴史的文脈を紀元前からイタールやセガン、そしてモンテッソーリまで概観し、理念と実践の発展・展開を「障害者の権利に関する条約」や教育方法論を踏まえて概説する。

目次

 日本語版まえがき[アントネッロ・ムーラ]
 凡例
 序文
 イタリアにおけるフルインクルーシブ教育に学ぶ[大内進]

第1章 教育的な意図の彼岸――遠い過去へのまなざし
 1 「足跡」を再構築する難しさと障害の拒絶
 2 「複数のまなざし」の必要性
 3 「例外」から最初の興味の芽生えへ

第2章 ジャン・マルク・イタール――「独善的な診断」から教育的な関係へ
 1 侮蔑と科学的な関心――一八世紀末のフランスにおける「異質さ」
 2 違いの存在が「アイデンティティ」を育てる――ジャン・マルク・イタールと「アヴェロンの野生児」
 3 教育的な介入と方法――ほのかな兆し

第3章 エドゥアール・セガンと「白痴」の教育
 はじめに
 1 エドゥアール・セガン――人柄と略伝
 2 「白痴」の教育――思想と方法

第4章 フランスからイタリアへ――マリア・モンテッソーリ
 1 「精神障害(知的障害)」――国外への関心からイタリアの文化的な文脈へ
 2 マリア・モンテッソーリ――最初の人格形成期における医学、文化、社会参加
 3 知的障害への関心とモンテッソーリ自身のコミットメント
 4 自由としての教育

第5章 知育と人間形成の教育――長く複雑な文化的・社会的進展
 1 公立学校における教育の道のり――初めての措置
 2 世界的な変化――解放運動の広がりと政治的・社会的な変化
 3 万人を受け容れる学校――三〇年の道のりの光と影

第6章 インクルージョンを実現するための新たな概念・文化モデル
 1 障害を見つめる新たな視点――国際障害分類(ICIDH)から国際生活機能分類(ICF)へ
 2 「精神遅滞者(知的障害者)の権利宣言」から「サラマンカ宣言」へ
 3 二〇〇六年の国連条約

第7章 「ぺダゴジア・スぺチャーレ」と特別な教育方法論の貢献
 1 「ぺダゴジア・スぺチャーレ」の目的と課題
 2 インクルージョンのための教育法

第8章 インクルージョンのプロセスに現れる側面――いくらかの自覚と多くの挑戦
 1 専門化されたスキルからスキルの共有へ――取り組みを包摂するシステム
 2 世界を生きる――個別教育計画から生涯計画へ
 3 世界を構築する――主人公としての市民

 原著参考文献
 日本語主要参考文献
 訳者あとがき[大内紀彦]

前書きなど

Ⅰ はじめに

 筆者は、国立特殊教育総合研究所(現独立行政法人国立特別支援教育総合研究所)における海外調査の一環として、二〇〇一年にイタリアの学校や教育機関、教育省等を訪問する機会を得て以来、イタリアのインクルーシブ教育の動向について追跡してきた。イタリアは、世界でも数少ないフルインクルージョン体制を原則としているが、本書にはイタリアにおけるインクルージョンの理念とその歴史的経緯が記されており、著者のムーラ(Mura)氏をはじめ、イタリアの研究者たちのフルインクルーシブ教育を貫き通そうとする並々ならぬ決意に圧倒された。
 イタリアのインクルーシブ教育については、わが国にもさまざまな形で紹介されているが、その評価は大きく分かれていると受け止めている。特別支援学校の廃止を目指す立場からは、イタリアでは「理想的なフルインクルージョン」が実践されていると称賛され、他方、イタリアの取り組みに懐疑的な立場からは、現在のイタリアの教育施策は経済問題から派生したものであって、適切な対応が用意されていない通常学級に障害のある子どもを予算削減のために放り込もうとするダンピング施策だと問題視されている。
 本書でも触れられているが、フルインクルージョン体制に大きく舵を切った一九七〇年代は、確かに、混乱が生じており、「ダンピング」の状態にあったといわれても仕方がない時期はあったようである。しかし、本書を読み進めれば、その理念構築が長い歴史的背景の下に組み立てられ、インクルージョンの理念の実現に向けて制度面でもさまざまな工夫改善が進められていることが理解できるであろう。
 イタリアの教育の理念やその特徴については、本書に詳しく学ぶことができるが、本書はそうした理念的な内容の記述に注力しているため、現在のイタリアの取り組み状況を具体的に知ることは難しいかもしれない。そこで、本稿ではイタリアのフルインクルーシブ教育を支える支援の仕組みや通常の学校の環境や体制など制度面での現在の到達点、および現在の学校現場のリアルな状況をできるだけ客観的に紹介していきたい。わが国の教育がさまざまな課題を抱えているように、イタリアの教育も多種多様な課題を抱えている。本稿ではそうした側面も包み隠さず報告していくが、それらのことは、決してイタリアにおける学校のインクルージョンの枠組みを揺るがすものではないということを付言しておきたい。

著者プロフィール

アントネッロ・ムーラ  (アントネッロ ムーラ)  (

イタリア国立カリアリ大学教授
専門はぺダゴジア・スぺチャーレ(特に学校教育および社会における障害者の統合の問題を研究)。イタリア「ぺダゴジア・スぺチャーレ」学会(SIPeS)会員ほか。
著作に Associazionismo familiare, handicap e didattica(『家族会、ハンディキャップおよび教育法――探究的研究』 FrancoAngeli, 2004)、Pedagogia speciale oltre lascuola. Dimensioni emergenti nel processo di integrazione(アントネッロ・ムーラ編『ぺダゴジア・スぺチャーレ 学校を超えて――統合のプロセスに現れる様相』FrancoAngeli, 2015)、Diversità e inclusione. Prospettive di cittadinanza tra processistorico-culturali e questioni aperte(『多様性とインクルージョン――歴史文化的プロセスと開かれた問いの間の市民の視点』FrancoAngeli, 2016)、Orientamentoformativo e progetto di vita. Narrazione e itinerari didattico-educativi(アントネッロ・ムーラ編『教育的な指針とライフ・プロジェクト――自分語りと教育の道のり』FrancoAngeli, 2018)ほか編著、論文など多数

大内 進  (オオウチ ススム)  (監修

星美学園短期大学日伊総合研究所客員研究員
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所名誉所員
1949年生まれ。筑波大学大学院教育研究科修了。東京都教諭、筑波大学附属盲学校(現視覚特別支援学校)教諭、国立特別支援教育総合研究所盲教育研究室室長、教育支援部長などを歴任
日本弱視教育研究会会長(2010-2016)
専門は、視覚障害教育、イタリアのインクルーシブ教育等著書に『視覚障害のためのインクルーシブアート学習――基礎理論と教材開発』(編著、ジアーズ教育新社、2021年)、『視覚障害教育に携わる方のために5訂版』(共著、慶應義塾大学出版会、2016年)、『特別支援教育コーディネーターの役割と連携の実際――教育のユニバーサルデザインを求めて』(編著、教育出版、2012年)、『ルイ・ブライユ(学習まんが人物館)』(監修、小学館、2016年)、『我が国における弱視教育の展開』(編著、あずさ書店、2013年)など

大内 紀彦  (オオウチ トシヒコ)  (

特別支援学校教員
1976年生まれ。イタリア国立ヴェネツィア大学大学院修了。神奈川県特別支援学校教諭
専門は、特別支援教育、日伊文化交流史
訳書に『精神病院のない社会をめざして――バザーリア伝』(共訳、岩波書店、2016年)、『バザーリア講演録 自由こそ治療だ!――イタリア精神保健ことはじめ』(共訳、岩波書店、2017年)、『土地の記憶から読み解く早稲田――江戸・東京のなかの小宇宙』(共訳、勉誠出版、2021年)、論文に「バザーリア講演録より『健康と労働』」(共同執筆、『福祉労働』第165号、現代書館、2019年)、「ラグーサ・玉の発見と日本への帰国――下位春吉家の人々との交流を通じて」(『イタリア圖書』第48号、イタリア書房、2016年)など

上記内容は本書刊行時のものです。