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感情的ウェルビーイング
21世紀デジタルエイジの子どもたちのために
原書: Educating 21st Century Children: Emotional Well-being in the Digital Age
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年6月5日
- 書店発売日
- 2022年5月31日
- 登録日
- 2022年4月27日
- 最終更新日
- 2022年6月13日
紹介
現代のデジタルテクノロジーがつくりだす環境は子どもたちの感情にどのような影響を与えるのか。育児や友人関係、親の関わり、デジタル利用と不平等、オンラインリスクなど、さまざまな観点から多角的に検証し、今後の教育政策上の対応策を提起する。
目次
はじめに
要旨
パート1:21世紀の子どもたちをめぐるトレンドを把握する
第1章 デジタルエイジの子ども時代[トレーシー・バーンズ]
第1節 序論:現代の子ども時代を理解する
第2節 感情的ウェルビーイングとデジタルテクノロジーの関係
第3節 結び
第2章 子どもとデジタルテクノロジー[フランチェスカ・ゴットシャルク]
第1節 序論
第2節 子どもとデジタルテクノロジー:トレンド・パターン・成果
第3節 成功する政策を開発する
第4節 今後の調査を要する領域
第5節 OECD加盟国における最優先課題
第6節 結び
第3章 子どもの感情的ウェルビーイング[リアム・ベキルスキー]
第1節 序論:感情的ウェルビーイングはなぜ重要なのか
第2節 子どものメンタルヘルスと感情的ウェルビーイングのトレンド
第3節 感情的ウェルビーイングの成果に影響する発展因子
第4節 感情的ウェルビーイングの保護因子を強化する
第5節 将来の研究の指針
第6節 各国が直面する課題
第7節 結び
パート2:21世紀の子どもたちの人間関係
第4章 21世紀の育児と友人関係[トレーシー・バーンズ/クイン・グエン]
第1節 序論
第2節 ライフコースの観点からみた家庭と友人
第3節 現代の友人関係
第4節 友人をつくる
第5節 友人関係の質と影響
第6節 結び
第5章 オンラインとオフラインの人間関係[グスタヴォ・メッシュ]
第1節 序論
第2節 オンラインとオフラインの人間関係の認識の変化
第3節 オンラインの人間関係を形成する動機
第4節 オンラインの絆と若者の交友関係の構造
第5節 オンラインの絆とオフラインの絆の質
第6節 最新研究
第7節 結び:まとめと今後の研究
第6章 デジタル育児行動と子どものデータ化[アンドラ・シイバク]
第1節 序論
第2節 誕生前の子どものデジタルシャドウ
第3節 赤ん坊の監視を介して親の不安を和らげる
第4節 身内によるデータ監視:追跡アプリやデバイスの利用
第5節 シェアレンティング:子どものデジタルフットプリント
第6節 結び
第7章青少年期の社会的絆とグローバル規模の環境変化[カトリン・フィンケナウアー/ヤヨーク・ウィレムズ/マディタ・ヴァイゼ/メイケ・バーテルス]
第1節 序論
第2節 社会的関係の重要性と特徴
第3節 気候変動
第4節 強制移住
第5節 個人主義化
第6節 新しいテクノロジー
第7節 結び:21世紀の青少年の人間関係
パート3:オンライン上の子どものウェルビーイングを守る
第8章 デジタルテクノロジーの利用時間とウェルビーイング成果[ダニエル・カルデフェルト=ウィンター]
第1節 序論
第2節 デジタルテクノロジーの利用時間:概念と理論上の仮定
第3節 調査方法:エビデンス中心の文献レビュー
第4節 メディアエフェクト調査の限界
第5節 デジタルテクノロジーの利用時間が子どもに及ぼす影響
第6節 決定的なエビデンスを生み出すために
第7節 結び
第9章 デジタル不平等とウェルビーイング成果[エレン・ヘルスパー/スヴェトラーナ・スミロノヴァ]
第1節 序論:デジタル不平等の3つの段階と概念モデル
第2節 デジタルネイティブ?
第3節 恵まれない若者の社会デジタル生態学
第4節 サポートネットワーク
第5節 リテラシー
第6節 自分と他者への信頼
第7節 デジタルテクノロジーの利用
第8節 デジタルテクノロジーによる成果
第9節 不平等から成果へ
第10節 結び
第10章 オンライン上の子どもの保護[エレットラ・ロンチ/リサ・ロビンソン]
第1節 序論
第2節 オンラインリスクの分類
第3節 OECDオンライン上の子ども保護勧告(2012年)
第4節 オンラインリスクの性質の変化と勧告の改訂
第5節 政策立案の3つの層
第6節 結び
パート4:デジタルシチズンシップとデジタルリテラシーを育む
第11章 デジタルリテラシーとウェルビーイングを育む[フランチェスカ・ゴットシャルク]
第1節 序論
第2節 デジタルアクセスを確立し、デジタルスキルを構築する
第3節 スクリーンタイム指針とウェルビーイングの促進
第4節 結び
第12章 行動的で倫理的な(デジタル)世代に力を与える[トレーシー・バーンズ/フランチェスカ・ゴットシャルク]
第1節 序論:デジタルシチズンシップを育む
第2節 力を与えられた積極的な利用はリスクをともなう
第3節 デジタルレジリエンスを構築する
第4節 他者の尊重とネチケット
第5節 結び
第13章 能力の構築のための教員研修と協力関係[トレーシー・バーンズ/アレハンドロ・パニアグア]
第1節 序論
第2節 現代の教室に立つ教員を支援する
第3節 教員を支援する政策と実践
第4節 部門間の協働と協力体制
第5節 結び:ウェルビーイングの共通ビジョン
パート5:未解決の課題
第14章 デジタル世界の子どものウェルビーイングを育む[トレーシー・バーンズ]
第1節 序論
第2節 新たな横断的テーマ
第3節 知識の空白領域と政策の方向性
第4節 結び
謝辞
編著者・著者紹介
前書きなど
はじめに
現代の子どもたちの生活は、多くの点で概ね良い方向へと変化している。創造的な自己表現を可能にするさまざまなデジタルツールが存在し、メンタルヘルス問題が周知され、ボタンひとつで大切な人々から支援が得られる。しかし、子どもたちは常に新たな困難に直面する。睡眠不足やストレスの増加、ともすれば誕生以前から、本人の同意も得ずにデジタルフットプリントが収集される。従来の脅威がデジタル世界において新たな色合いを帯び、ネットでのいじめなどを生み出した。
教育は社会とともに進化しなければならない。問題が起きてから反応するのではなく、変化を予測しなければならない。21世紀の最初の数十年は、千年紀の変わり目とテクノロジーの急速な変化の交点である。人間は変化に対して臆病であるとはいえ、私たちの生活はデジタルツールによって根本的に変容した。子どもたちにとって何が変化したのであろうか。また、何が変化しなかったのであろうか。家族や友人との健全な絆の重要性は変化したのだろうか。
OECD 教育研究革新センター(Centre for Educational Research and Innovation, CERI)による「21世紀の子どもたち(21st Century Children)」プロジェクトは、現代の子ども時代の性質に注目する。デジタル時代の子どもたちの生活はどのようなものだろうか。それは教育にとってどのような意味を持つのだろうか。教師や学校は、親やコミュニティとどのように協働するべきだろうか。子どもを保護し、導く一方で、失敗やリスクも含めて子どもらしいあり方を守るにはどのようにすればよいのだろうか。
本書は感情的ウェルビーイングと新たなテクノロジーの交点に注目して、現代の子ども時代を検証する。デジタル時代において育児や友人関係はどのように変化したのか。子どもたちはデジタルシチズンとしてどのようにあるべきか。子どもにオンラインの機会を享受させつつ、リスクを最小限に留めるには、教育制度はどのような取り組みを行えばよいのか。さまざまな関係者の協力体制、政策、実践を生かして、デジタルリテラシーとレジリエンスを育むにはどうすればよいのだろう。
これらのトレンドの多く、特にデジタルのトレンドは絶えず変化しており、本書のような報告書もたちまち時代遅れのものになるだろう。本書は、今この瞬間の重要な側面をとらえたものである。世界の教育制度は常に時代を先取りし、あるいは少なくとも変化を把握していなければならない。事実と事実でないものを切り分け、子どもたちが人生で最良のスタートを切る手助けをすることが私たちの使命である。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。