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国家間和解の揺らぎと深化
講和体制から深い理解へ
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年2月28日
- 書店発売日
- 2022年3月17日
- 登録日
- 2022年1月27日
- 最終更新日
- 2022年10月17日
紹介
20世紀の戦争の後始末は、当事国どうしの平和条約の締結によってなされてきた。こうした「講和体制」から取りこぼされた個人被害の救済、植民地支配責任の解決という、より「深い和解」をもたらす条件とは、どのようなものか。21世紀の和解への道程を探る。
目次
『和解学叢書』刊行に寄せて[浅野豊美・梅森直之・劉傑・波多野澄雄・外村大・土屋礼子]
はしがき[波多野澄雄]
第1章「政府間和解」の陥穽――サンフランシスコ講和体制における「植民地主義」の位相[波多野澄雄]
1 東アジアの脱植民地化と脱帝国化
2 講和体制の形成と植民地問題
3 帝国の解体と国籍問題
4 講和体制の揺らぎ
5 植民地主義と「和解」
第2章日本社会党と戦後和解――村山談話の「社会党らしさ」[神田豊隆]
はじめに
1 「非武装中立」と戦争責任
2 歴史問題と社会党
3 村山談話と自社のコンセンサス
おわりに
第3章「戦後和解」における政治的要因――日本とマレーシア・シンガポール関係を中心に[佐藤晋]
1 「和解」とはなにか
2 シンガポール・マレーシアとの「血債」問題
3 結論
第4章日朝和解の困難――北朝鮮における対日認識[宮本悟]
1 北朝鮮のナショナリズムの性質とその変化
2 北朝鮮の最高指導者の対日認識の変遷
3 現在の北朝鮮での歴史教育
まとめ
第5章ドイツ=ポーランド間の「和解」のはじまり――一九六〇年代の教会の動きを中心に[川喜田敦子]
はじめに
1 第二次世界大戦期の経験
2 第二次世界大戦後の領土問題
3 「追放」をめぐるディスコース
4 一九六〇年代の西ドイツにおけるディスコースの変化
5 一九六〇年代の変化の意味
第6章アイルランドと朝鮮半島――グローバル・ヒストリーからの観点[半澤朝彦]
はじめに
1 地図上のイメージ
2 地政学的な位置
3 グローバルなアクセス
4 人の移動
5 ソフト・パワー
おわりに
補章 「和解」交渉の現場から 解説(波多野澄雄)
和解学のもう一つの視点――ソ連との和解を中心に[東郷和彦]
東アジアにおける「戦後の和解問題」を考える[谷野作太郎]
編者あとがき[波多野澄雄]
前書きなど
『和解学叢書』刊行に寄せて
本叢書は、「和解学」という新しい学問領域を拓く先駆けとなる。「紛争」が、社会生活をおくる人間の宿命であるかぎり、「和解」もまた人間の普遍的な営みの一部である。しかし和解はつねに、一定の歴史的・文化的刻印を帯びてあらわれる。紛争を生み出す社会の編制は多様であり、また歴史的に変化するものであるからである。冷戦終結後の不安定地域をめぐる民族宗教紛争が、「紛争解決学」という新しい学問分野の発展をうながしたとすれば、「和解学」は東アジアにおける固有の経験に内在しつつ、現在の世界各地の紛争に接近しようとするものである。この意味において和解学は、「東アジア発の紛争解決学」としての性格を有する。
こんにちの東アジアにおいて「紛争」は、主として歴史認識をめぐる国家間の対立としてあらわれている。これは冷戦後の世界的紛争が、ボスニアやソマリアの内戦(一九九二年)、イスラエル・パレスチナ合意の破綻(二〇〇〇年)、9・11事件とアフガン戦争(二〇〇一年)などに見られるように、国家以外のアクターによる直接的な暴力の発動を主な発端として顕在化してきたことと著しい対照をなしている。こんにちの東アジアにおける紛争が、国家間の「歴史認識問題」としてあらわれるのはなぜか。それは今日のグローバルな紛争状況のなかで、どのような意味をもち、またその解決にどのような貢献をなしうるのか。「東アジア発の紛争解決学」としての和解学に科せられた学問的使命は、こうした問いに解答を与えることである。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。