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ダーク・エミュー アボリジナル・オーストラリアの「真実」
先住民の土地管理と農耕の誕生
原書: Dark Emu: Aboriginal Australia and the Birth of Agriculture
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年6月30日
- 書店発売日
- 2022年6月24日
- 登録日
- 2022年2月2日
- 最終更新日
- 2022年7月1日
紹介
オーストラリア先住民が有史以前から大陸において、高度な農耕、養殖、定住といった文化を発展させていたことを当時の入植者が記録した多くの歴史資料をもとに論じる。既存の狩猟、漁労、採集の民という先住民族のイメージを大きく転回させるきっかけとなった話題の書。
目次
序文
凡例
オーストラリア地図
はじめに
1 農耕
穀物
食用植物の栽培化
灌漑
鳥獣または農耕
まだ納得していない?
オーストラリアの将来の農場
2 水産養殖
ブレワリナ
コンダー湖と西部地区
アワビ
船舶
3 人口と住居
スタートの救い主
ミッチェルの暴露
建設・設計
石の構造
その他の石造物
神聖なデザイン
4 貯蔵と保存
5 火
6 天界と言葉と法
政府
言語
貿易と経済
7 オーストラリア農業革命
8 歴史を受け入れ未来を創る
謝辞
訳者あとがき
参考文献
注
写真・図版出典
索引
前書きなど
序文
(…前略…)
ミッチェルや他の探検家が見たブレワリナ(Brewarrina)の魚捕獲罠は、1000人以上の人々を集約できる半定住的な村での生活を可能にする経済状況を作り出した。ミッチェルはその大きさだけでなく、快適さや優雅さにも驚嘆した。
しかし、ミッチェルの報告以後、この魚捕獲罠が4万年前のものであって地球上でもっとも古い人類の建造物であると推測する考古学者もいるとはいえ、魚捕獲罠についての言及を当てもなく探すことになる。仮に1万5000年という一般的な説を受け入れたとしても、これは世界最古の建造物の一つだ。この建造物についての唯一の出版物は、ブレワリナで1976年に出版された50ページの小さな本である。そこでは、次のように明示されている。
オーストラリアの環境に適応した、アボリジナルの人々によって栽培化された食用の植物がいずれ知られるようになれば、単にパン屋の祝日を祝うだけではなく、アボリジナルの人々が継承してきた知的財産がそこに承認されることを期待しよう。
オーストラリアで広く受け入れられている歴史を批判することは、オーストラリア人を裏切ることではなく、英国から受け継いだものに加え、この大地から与えられたすべてのものを享受することに繋がる。
『ダーク・エミュー』は、これらの問題をすべて提起し、臆することなく政治的な問題へと転化する。なぜなら、アボリジナルの人々の主権を認め、オーストラリアの食生活の一部であることが決定しているこれら食品の知的財産をアボリジナルの人々に認めることは、政治的な行為にあたるからだ。
オーストラリアは先住民の食品にますます興味を示しはじめているが、その食品をより活用することでアボリジナルの人々がどのような利益を得ることができるかを問うことはほとんどない。これは植民地時代から続く考え方の一つである。オーストラリア人が、大陸が占有されていたこの12万年間を真に受け止めようとしないことは、国家の成熟を妨げる大きな要因だ。オーストラリア人は人種差別主義者と呼ばれることを嫌うが、白人の優秀さを示すマンガのような歴史が学校で教えられていることに、その偏見の特徴が見て取れる。
しかし、そうした考えを改め前進する方法があるはずだ。それは、テーブルを挟んでパンを食べること、つまりアボリジナルの人々が作るパンを共食することである。ブラック・ダック・フーズは現在、生産量は少ないものの、粉からパンを作っている。このパンの品質は、オーストラリアの有名シェフやパン職人たちから絶賛されている。
ここワラガロー川沿いのユンブラで栽培している穀物や塊茎はすべて多年生であるため、炭素を除去し土壌を健全に保つ観点から非常に重要である。この二つの問題は、世界の資源の略奪や浪費が人類の生存を脅かしていることもあり、ますます注目されている。
特に若者の間では、こうした食品への注目が高まり、価格高騰や浪費の増加を経験した地域の従来の農家は、多年草に目を向けつつある。
土壌と大気の健康を守ることが、熱狂的な緑化活動家や家庭菜園家だけでなく、すべての人々の任務となる、そうした未来を考える時が来ている。世界は、行き過ぎた産業化による農業から回復するための支援を必要としている。そして、毎年の耕作に依存しない作物を利用することが、ますます重要になるだろう。
私たちは、肥料も農薬も、過剰な水も、穀物に与えていない。この穀物はオーストラリアの固有種であり、オーストラリアの土地と雨だけで育つ。にもかかわらず、それらはこれまで注目されることはなかった。大陸の歴史を完全に受け入れることができない国は、その大陸に蓄積されてきた園芸の知恵に永遠にアクセスすることはできない。私たちの食べ物を食べるには、私たちの歴史をしっかりと咀嚼して理解する必要がある。
『ダーク・エミュー』はアボリジナルの過去について推測していると批判されてきたが、そこでの情報は白人の公文書から得たものである。否定し、断罪することは、オーストラリアのアボリジナルの人々の未来を軽視する作業にすぎない。
アボリジナルの人々にはその未来が見えており、さらに、私たちはそうした未来を皆さんと共有する用意ができている。
上記内容は本書刊行時のものです。