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ウルグアイを知るための60章
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年7月20日
- 書店発売日
- 2022年7月22日
- 登録日
- 2022年6月9日
- 最終更新日
- 2022年8月17日
紹介
サッカー強豪国、牛肉の産地としても知られる南米の国ウルグアイ。80~90年代には多国間交渉ウルグアイ・ラウンドの舞台になり、近年は「世界一貧しい大統領」が話題を呼んだ。諸分野の専門家が結集し、国の全体像を提示する初めてのウルグアイ入門書。
目次
はじめに
地図
Ⅰ ウルグアイ概要
第1章 ウルグアイ概観――欧州の影響を受け、自然豊かで安定した南米の小国
第2章 牛肉の国ウルグアイ――一人あたりの牛肉消費量は世界トップレベル
【コラム1】羊毛とマノス・デル・ウルグアイ
第3章 サッカー――「セレステ」と二大クラブ
第4章 マテ茶――現代に息づく悠久の文化遺産
第5章 ウルグアイ・ワイン――タンニン豊かな極上・稀少種タナット・ワイン
第6章 ウルグアイの1年――自転車レースの最後の走者がゴールをしたら1年が始まる
第7章 ウルグアイの楽しみ方――ウルグアイの観光エリアと観光形式
第8章 ウルグアイと南米南部――南米南部の観光名所とウルグアイの観光地を合わせて
【コラム2】センテナリオ・スタジアムと忘れられないお客様
Ⅱ 歴史
第9章 先住民――変わる「インディオのいない国」というイメージ
第10章 植民地期のバンダ・オリエンタル――スペインとポルトガルの狭間で
第11章 ふたつの国境線と植民地期末期の変化――「ウルグアイ」の胚胎
第12章 五月革命とアルティガス――ウルグアイの独立①
第13章 「33人の東方人(オリエンタル)たち」からイギリスの介入へ――ウルグアイの独立②
第14章 リベラとオリベ――「大戦争」と二大政党の起源
第15章 19世紀後半の試行錯誤――軍事政権と両政党間の宥和へ向けた試み
第16章 第1次バシェ政権と最後のカウディージョ反乱――バシスモの時代①
第17章 バシェ改革の諸相――バシスモの時代②
第18章 政治の保守化と民主主義の深化――バシスモの時代③
第19章 バシスモの歴史的評価――バシスモの時代④
第20章 第二次世界大戦とネオバシスモ――グラフ・シュペー、二大政党の再編、コレヒアード再び
Ⅲ 政治
第21章 拘束名簿式比例代表制が基調の選挙制度――二重同時投票は改善されたものの、やはり複雑
第22章 政党――二大伝統政党制から三党制へ
第23章 国民投票――「規模のデモクラシー」の理想形?
第24章 トゥパマロス――都市ゲリラから合法政党へ
第25章 軍事政権――南米のスイスから一転、監視国家へ
第26章 民主化以降の政党システムの変化――三党制? それとも二大ブロック?
第27章 ホセ・ムヒカ――「考える政治家」の肖像
Ⅳ 経済
第28章 林業の発展――日本の貢献
第29章 エネルギー政策の転換――グリーン・エネルギーの導入
第30章 大きな政府――国営企業と政府系機関の存在
第31章 ウルグアイの労使関係――労働者保護を重視した労使関係
第32章 地方都市の諸相①――観光ガイドに載っていないウルグアイ
第33章 地方都市の諸相②――国境の町を目指して
Ⅴ 国際関係
第34章 ウルグアイの国際関係――国際社会でのプレゼンス
第35章 アルゼンチンとの関係――共通点の多い隣国の大国
第36章 ブラジルとの関係――左派政権での関係強化
第37章 イギリスとの関係――19世紀の経済関係と社会の形成
第38章 米国との関係――ウルグアイと米州関係、その後
第39章 アジアとの関係①――日本、中国、インドとの関係
第40章 アジアとの関係②――韓国とASEANとの関係
Ⅵ 社会
第41章 ウルグアイの教育――平等性を追求した教育制度
【コラム3】日本の小学校とウルグアイの公立小学校の違い
第42章 社会福祉――南米高福祉国家の変遷と課題
第43章 ウルグアイと移住――移民国家の現在
第44章 大きな軌跡を残した逞しい女性たち――自分の気持ちに正直に生きた結果
第45章 「アンデスの奇跡」――雪山で生き延びたウルグアイ人
第46章 モンテビデオ――町の変遷
【コラム4】モンテビデオを作った人々
【コラム5】日本からのお客様――豪華客船やピースボートでモンテビデオ観光
第47章 宗教――ウルグアイの政教分離
第48章 コロニア――時間が止まる場所
Ⅶ 文化
第49章 ウルグアイの食文化――肉料理やイタリア料理が主流
第50章 文学①――世界に開かれゆく小国
第51章 文学②――オネッティ、〈危機の世代〉、そして現在
第52章 ウルグアイの音楽――ウルグアイのフォルクローレ
第53章 ムルガ――力強い歌唱力とパフォーマンス
第54章 カンドンベ――ウルグアイを象徴するアフリカ系文化
第55章 ウルグアイの画家――ブラネス、フィガリ、トーレス・ガルシア
第56章 カサ・プエブロ――カルロス・パエス・ビラロの夢の城
Ⅷ 日本との関係
第57章 日系人社会――「アジア人NO」でもやって来た日本人転住者たち
第58章 戦前の日本とウルグアイ――外交官の派遣と通商航海条約
第59章 戦後の日本とウルグアイ――日本公使館開設から外交関係開設100周年
第60章 両国の文化交流――日本で見られるウルグアイ、ウルグアイで見られる日本
日本とウルグアイの要人往来
前書きなど
はじめに
ウルグアイは、近代的な面もありつつも、自然が豊かで、かつ歴史を感じさせる成熟した国だ。飛行機で首都のモンテビデオに向かうと、着陸を目指す飛行機の眼下には豊かな緑が広がり、東京国際フォーラムのデザインも手がけた建築家のラファエル・ビニョリが設計し、世界で最も美しい空港の一つにも選ばれたカラスコ空港に到着する。空港を出ると、広く青い空と緑が広がっている。町にはイギリスやフランスなど、ウルグアイの歴史に深いつながりがあるヨーロッパの影響を感じさせる公園や100年以上前に建てられた建物が残っている。道行く人々がマテ茶を飲みながらのんびりと生活している。ゆっくりと流れるラプラタ川の堤防でのんびり釣り糸を垂れている人もいる。
地方に行くと、更に緑が広がり、たくさんの牛や羊が草を食んでいる。ウルグアイの発展に貢献してきた畜産や林業の源泉がここにある。
2020年に政権に就いたラカシェ・ポウ大統領は、大統領就任式のパレードに、歴史的な指導者だった曾祖父のルイス・アルベルト・デ・エレーラが所有していた1937年のフォードV8に乗って登場した。父のルイス・アルベルト・ラカシェ元大統領が1990年に大統領に就任した時にも使われたクラシックカーだ。ラカシェ・ポウ大統領の就任を祝って3000頭の馬に乗ったガウチョ(カウボーイ)たちも地方からモンテビデオに参集し、古き良きウルグアイが再現された歴史的な一場面となった。ウルグアイは、こうした自然と歴史の融合によって、南米の静かな観光地として外国人を魅了している。
(…中略…)
日本では、これまでに日本貿易振興機構(JETRO)や国際協力機構(JICA)の報告書をはじめとする出版物や、畜産、林業、農業、音楽雑誌などの専門誌でもウルグアイの特集が組まれ、各分野の専門家によってウルグアイについての様々な情報が発信されてきた。しかし、ウルグアイの全体像が紹介される機会は皆無に近い。ウルグアイについての日本語の書籍も非常に少ない。
本書は、これまでそれぞれの分野でウルグアイの情報を集めてきた方々の経験や知識を頼りに、ウルグアイに様々な角度から焦点をあて、それによってウルグアイの全体像が少しでも分かるような日本語の概説書を作ること、そしてウルグアイを日本でもっと知ってもらうことを目的としており、それによってウルグアイに興味を持つ人やウルグアイについての研究・調査をする人が増えることを期待して作られたものである。
(…後略…)
追記
【執筆者一覧】
アサンブーシャ、トリルセ(Trilce Azambuya)
労使関係専門家。
1987年、モンテビデオ市生まれ。ウルグアイ共和国大学労使関係学部で労使関係コンサルタントの資格を修得。高校時代、日系人の同級生との出会いがきっかけで日本文化に興味を持ち、ウルグアイでの日本文化普及イベント企画に数回参加した。現在、人事支援に従事。
内田みどり(うちだ・みどり)
和歌山大学教育学部教授。専攻は比較政治。「ウルグアイにおける軍部人権侵害をめぐる政治力学」(『国際政治』第131号、2002年)、「ウルグアイ2014年大統領・国会議員選挙」(『ラテンアメリカ・レポート』第31巻1号、2015年)など。
国沢知恵美(くにざわ・ちえみ)
日本語⇔スペイン語通訳・翻訳家。
1988年、モンテビデオ市生まれ。幼少期を日本で過ごし、思春期にウルグアイへ帰国したバイリンガル。2008年、技術専門教育学校観光学部を卒業。観光ガイド、日本語教師、通訳・翻訳と幅広い分野で活動し、現在は通訳・翻訳業に加えLinkedInにて専門分野の情報発信を行っている。www.linkedin.com/in/chiemikunizawa-4148b1202
サンティアゴ、マリア・ビクトリア・デ(Maria Victoria de Santiago)
1991年、モンテビデオ市生まれ。ウルグアイ共和国大学国際関係学部を卒業。在アルゼンチン・ラテンアメリカ社会科学部(FLACSO)にて修士課程修了。日本の文学・音楽がきっかけで日本文化に興味を持ち、日本語を学び始める。2013年に奨学金を獲得し、大阪経済大学で経済と法学の学位を修得。帰国後、日本の経済史と外交政策の研究を継続。ラテン・アメリカ・アジア・アフリカ研究学会(ALADAA)の一員。専門を活かしコンサルトに従事。
中沢知史(なかざわ・ともふみ)
立命館大学外国語教育センター嘱託講師。元在ウルグアイ日本大使館専門調査員。専門は南米を中心とする比較政治、政治史、先住民運動研究。一般向け著作に「ウルグアイ」(分担執筆、『ラテンアメリカ文化事典』丸善、2021年)など。その他主要学術論文は執筆者のリサーチマップ(https://researchmap.jp/tomofuminakazawa)からダウンロード可能。
馬場香織(ばば・かおり)
北海道大学大学院法学研究科准教授。専門は比較政治、ラテンアメリカ政治。主要著作に『ラテンアメリカの年金政治』(晃洋書房、2018年)、「メキシコの政党システム変容を捉える」(『年報政治学』2021年II号)など。
馬場由美子(ばば・ゆみこ)
2017年、国際協力機構(JICA)シニア海外協力隊としてウルグアイに赴任し、移住史『ウルグアイ日系人の歩み』(在ウルグアイ日本人会、2019年)を刊行。2021年から愛知県立大学大学院国際文化研究科にてウルグアイの日系社会を研究中。元朝日新聞記者。
浜田和範(はまだ・かずのり)
慶應義塾大学法学部専任講師。専門はラテンアメリカ文学。主要著訳書に『抵抗と亡命のスペイン語作家たち』(共著、洛北出版、2013年)、フェリスベルト・エルナンデス『案内係』(水声社、2019年)、オラシオ・カステジャーノス・モヤ『吐き気』(水声社、2020年)。
松尾俊輔(まつお・しゅんすけ)
明治大学法学部専任講師。専門は南米近現代史、スポーツ史。主要著作にOlimpismo: TheOlympic Movement in the Making of Latin America and the Caribbean(分担執筆、TheUniversity of Arkansas Press,2020年)、『スポーツの世界史』(分担執筆、一色出版、2018年)など。
山口恵美子(やまぐち・えみこ) ※編著者プロフィールを参照
渡邉尚人(わたなべ・なおひと)
日本・UNEP協会顧問、前在バルセロナ総領事、ニカラグア言語アカデミー海外会員。専門は、ルベン・ダリオ文学研究。主要著訳書にルベン・ダリオ『青…』(文芸社、2005年)、同『ルベン・ダリオ物語全集』(文芸社、2021年)、アンドレス・オッペンハイマー『創造か死か』(明石書店、2016年)、『葉巻を片手に中南米』(山愛書院、2014年)など。
上記内容は本書刊行時のものです。