書店員向け情報 HELP
出版者情報
在庫ステータス
取引情報
福祉心理学〈日本福祉心理学会研修テキスト〉
基礎から現場における支援まで
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年10月20日
- 書店発売日
- 2021年10月22日
- 登録日
- 2021年9月24日
- 最終更新日
- 2021年11月5日
紹介
近年、心理職国家資格として公認心理師が誕生し、かつ様々な福祉分野での課題がニュースで取り沙汰される中、“福祉心理学”の必要性について社会的なニーズが高まっている。本書はこれらの現状に合わせて編まれた新たなテキストである。
目次
はじめに
第Ⅰ部 福祉心理学の基礎
第1章 福祉心理学原理
1 福祉心理学原理
2 社会福祉と心理学
3 福祉心理学とは
4 福祉領域と近接領域
第2章 福祉心理学の歩み
1 福祉心理学の構築を目指して
2 福祉心理学研究とは
3 研究方法概論
4 近年の研究動向
第3章 福祉心理士会と福祉心理士
1 福祉心理士会
2 福祉心理士
第4章 福祉心理学的支援の基盤Ⅰ
1 実践への主眼
2 福祉心理学にかかわる意思決定支援
3 自立とその実態
4 発達理論
5 アタッチメント
第5章 福祉心理学的支援の基盤Ⅱ
1 福祉心理学的支援の基盤的理論
2 心理療法の概要
3 心理療法の各論Ⅰ
4 心理療法の各論Ⅱ
5 心理検査の概要
第Ⅱ部 各領域における福祉心理学的支援
第6章 子ども家庭福祉領域の心理学的支援
1 子ども家庭福祉における課題と法制度
2 乳児院・児童養護施設における心理学的支援
3 里親の心理学的支援
4 児童相談所一時保護所における心理学的支援
5 児童自立支援施設における心理学的支援
6 自立援助ホームにおける心理学的支援
7 保育所における心理学的支援
8 障害児福祉における心理学的支援
第7章 障害者福祉領域の心理学的支援
1 障害者福祉における課題と法制度
2 身体障害児(者)福祉における心理学的支援
3 知的障害者福祉における心理学的支援
4 精神保健福祉における心理学的支援
第8章 高齢者福祉領域の心理学的支援
1 高齢者福祉における課題と法制度
2 高齢者の心理学的支援
3 認知症支援の実際と知見「ユマニチュード」
第9章 地域福祉領域の心理学的支援
1 地域福祉における課題と法制度
2 地域福祉課題を抱える人々の心理学的支援
3 医療現場における心理学的支援
4 コロナや災害等危機時における心理学的支援
第10章 関係行政・機関
1 三権分立
2 関係行政と機関① 教育機関である学校を起点とした連携・協力
3 関係行政と機関② 矯正施設等
4 関係行政と機関③ 裁判所
おわりに
◇◇◇ 一口メモ ◇◇◇
保育所に関する福祉心理学的知見
ハローワーク、ジョブカフェ、サポステ
障害年金について
司法福祉に関する研究
精神障害者の差別解消と心のバリアフリー
司法面接
「チーム学校」を展開していく上で必要なこと
離婚裁判と親権
前書きなど
はじめに[十島雍蔵]
本書は、福祉心理学の教科書である。
だが、福祉心理学というものは(定型的な実体としては)ないようなものである。なぜなら、現に今、「福祉心理学」は、福祉関連領域の現場における日常的な心理臨床的実践の積み重ねによって、日々新たに〈学〉として創出され続けているからである。福祉心理学は、優れてダイナミックな臨床実践の学である。それを「こういうものだ」と決めつけて定型化した瞬間、そういうものではなくなる。とはいうものの、現時点で「どういうものか」ということを相互確認しておくことは〈学〉の成立にとってきわめて重要である。
20世紀最後の10年間、つまり1990年代は社会福祉基礎構造改革の嵐が吹き荒れ、戦後社会福祉のあり方が根本的に変革された。それに呼応するかのように登場したのが福祉心理学である。単なる生活支援だけではなく、合わせて心のケアが重視されるようになったのである。福祉は幸福を意味する。人間の営みは、それがたとえどのような営みであれ、すべてそれなりの幸福の達成を目的としている。福祉心理学は、それを心理学的側面から実現しようとするのである。
(…中略…)
福祉心理学を志すわれわれには、社会が福祉にではなく、福祉心理学に何を求めているのかを自覚し、「誰にとっての何のための福祉心理学」であるかを明確にする義務がある。それが本書の刊行目的である。具体的には本文を参照してほしい。福祉心理学の対象領域としては、子ども家庭福祉、障害者福祉、高齢者福祉を主要3領域として、医療、教育、司法、産業など多肢にわたっている。福祉ニーズのある一人ひとりの生きづらさを理解し、その人たちの心が「安らかにあること(well-being)」を心理学的に支えることを任務としている。それには科学的・客観的実証主義に基礎を置きながらも、それを超えた間主観的な「臨床の知」が重視される。福祉心理学の独自性もそこにある。
世界に先駆けて少子高齢社会に突入し、福祉先進国となったわが国においては、もはや欧米の福祉モデルの直輸入では間に合わない。世界の動向には十分目配りしながらも、わが国における長い歴史の中で培われた精神文化的伝統を背景に、現在の日々の福祉心理臨床の実践活動を支える理論を構築し、技法として体系化した主体的な独自の福祉心理学の創出が期待されており、それを世界の福祉向上に向けて発信すべき責任を担っている。
本書は、日本福祉心理学会で中心的に活躍されている一流の執筆陣による豊富な内容を持っており、現在における最も標準的な「福祉心理学」の教科書である。上述の社会的要請にも十分応えることができるものと自負している。
上記内容は本書刊行時のものです。