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日本の介護現場における外国人労働者
日本語教育、キャリア形成、家族・社会保障の充実に向けて
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年9月10日
- 書店発売日
- 2021年10月8日
- 登録日
- 2021年9月1日
- 最終更新日
- 2021年10月13日
紹介
EPA介護福祉士候補者受け入れからの10年強を、介護施設現場の調査、施設長・職員、さらには現地での希望者へのインタビュー調査をもとに検証した上で、今後の介護現場の人材不足とあわせ外国人介護福祉士の支援育成の課題と提言をキャリア形成や社会保障等の視点からまとめる。
目次
はじめに
第Ⅰ部 導入編 日本の介護現場における外国人労働者の受け入れ制度
第1章 矢継ぎ早に拡げられる外国人介護労働者の受け入れ[塚田典子]
第1節 日本の外国人労働者の受け入れ基本姿勢について
第2節 外国人介護労働者の受け入れ制度の変遷
第2章 日本の介護福祉士育成の歴史と外国人留学生の受け入れ[白井孝子]
第1節 日本の介護職員の需給予測と介護福祉士養成の制度的な歴史
第2節 これからの介護福祉士養成における課題と将来展望――外国人介護人材の受け入れ環境の整備に向けた調査研究を基に
おわりに
第3章 EPAの動向と課題――国際厚生事業団の調査から[安里和晃]
はじめに
第1節 EPA介護福祉士候補者の実態分析の方法
第2節 EPAにおける人材育成と国家試験
おわりに
第Ⅱ部 研究編 日本の介護現場における外国人労働者に関する研究
第1章 EPA介護福祉士候補者受け入れに関する訪問インタビュー調査(2009~2011年)[塚田典子]
第1節 初めてEPA介護福祉士候補者を受け入れた施設現場の実態
第2節 初めてEPA外国人介護福祉士候補者を受け入れた施設への10年後のフォローアップ・アンケート調査
第2章 外国人介護労働者の受け入れに関する全国アンケート調査(2014年)[塚田典子]
第1節 研究の目的
第2節 調査の方法
第3節 調査結果(記述統計)
第4節 施設長の調査結果
第5節 介護職員の調査結果
第6節 考察
第7節 本全国調査研究の課題
第3章 外国人介護労働者の受け入れに関する成果と課題[塚田典子]
第1節 EPA介護福祉士候補者/EPA介護福祉士の受け入れから見えてきた成果と課題
第2節 技能実習制度の課題
第Ⅲ部 実践編 外国人介護労働者の受け入れを成功に導くために
第1章 ワーキングホリデーによる重症心身障害者への支援[大槻瑞文]
第1節 ワーキングホリデースタッフの現状
第2節 相違点――日本には「仕事に限界はない?」
第3節 成功に向けて――「介護ロボット」にさせない
おわりに――「外国人施設長は可能か?」
第2章 「社会福祉法人千里会」における外国人介護労働者の受け入れ[牧野裕子]
第1節 10年間のEPA介護福祉士候補生受け入れの成果と課題
第2節 介護・福祉に対する認識や技能の異文化間の違いや共通点
第3節 グローバルな外国人介護労働者の受け入れを成功に導くために
おわりに
第3章 「社会福祉法人近江ふるさと会」における外国人介護労働者の受け入れ[大久保昭教]
はじめに
第1節 大学間交流の想定外効果
第2節 急展開する外国人介護人材の受け入れ制度
おわりに
第Ⅳ部 今後の展望 動くアジアと日本――外国人介護労働者を日本に定着させるために
第1章 日本の介護を世界に届ける![福井淳一]
第1節 フィリピン人と日本式介護の受験
第2節 実体験から学んだ異文化理解力
第3節 フィリピンにおける介護と福祉への認識
第4節 外国人介護人材を日本に定着させるために
おわりに
第2章 グローバル介護人材の受け入れに着手して[深澤優子]
第1節 アジアからの戦略的人材確保の実際と課題
第2節 介護・福祉に対する認識や技能の異文化間の違いや共通点
第3節 グローバル介護人材の定着の可能性と課題
終章 外国人介護労働者の受け入れを成功させるために[塚田典子]
第1節 在留資格「特定技能1号」で入国を目指す人たちの姿
第2節 外国人介護労働者の受け入れを成功させるために
前書きなど
はじめに
(…前略…)
本書は、4部と終章で構成されている。第Ⅰ部は「導入編」で3章からなる。第1章では、日本における介護分野の外国人労働者受け入れ制度を概観する。次の第2章では、そもそも論として、日本における介護福祉士育成の歴史と外国人留学生受け入れまでの流れを、介護福祉士養成校の人材育成の視点から論述していただいた。そして第3章では、EPA介護労働者受け入れの12年間の評価をしていただいた。
次の第Ⅱ部「研究編」も3章で構成されている。第1章では、2009~2011年に「インドネシア人介護福祉士候補者受入れ施設における受け入れ体制の実態に関する研究」と題して足掛け1年半かけて行ったインタビュー調査結果を紹介し、外国人労働者を歴史上初めて受け入れた現場の様子を浮き彫りにした。そして、その調査の約10年後(2020年2月)にフォローアップ調査が可能となったので、調査協力が得られた20施設のEPA介護福祉士受け入れ10年後の施設現場の様子を紹介した。次の第2章では、全国の高齢者施設の施設長および介護職員を対象として2014年8~9月に実施した「外国人介護労働者受け入れに関する全国アンケート調査」の結果を紹介した。これら第1章および第2章の結果の多くは、すでに、いくつかの論文として発表されているが、それらの結果に新しい分析も少し加えた。第3章では、日本の約10年間のEPA介護福祉士(候補者とEPA介護福祉士)受け入れから見えてきたその成果や課題について、他の研究者が蓄積してきた先行研究をレビューするとともに、技能実習制度の課題をまとめた。この度「介護」業種が加えられた「技能実習制度」に関する文献レビューは、制度発足が1993年であることから研究の歴史が長かった。
第Ⅲ部「実践編」も3章からなるが、外国人介護労働者の受け入れを実施している施設に、異文化の相違について焦点を当てながら取り組み実践を報告していただいた。第1章では、在留資格「特定活動」で受け入れる、ワーキングホリデーで長く外国人介護労働者を受け入れている大阪の重度障害者施設での実践を、第2章では、EPAの介護福祉士候補者を制度発足当初から受け入れて今日まで成功裏に継続している横浜の特別養護老人施設での取り組みを、そして第3章は、海外の大学と協定を結ぶなど、昔からユニークなチャネルを模索しながら大学生を受け入れる工夫をしてきた、滋賀県の社会福祉法人の実践を報告していただいた。
第Ⅳ部は「今後の展望」と表した2章構成で、第1章では、フィリピンから介護労働者を「特定技能1号」で送り出すため、現地の日本語学校で行われている人材育成の実態を紹介していただいた。次の第2章では、そのフィリピンから、「特定技能1号」で外国人介護労働者を初めて受け入れ始めた、足立区の医療法人社団の取り組みなど、まさにフロントラインの様子を報告していただいた。
そして、終章では、「特定技能1号」で来日を夢見るフィリピンの日本語学校で勉強する生徒さんへ簡単なアンケート調査をする機会を得たので、その結果を紹介した後、今後日本はどのようにすれば外国人介護労働者の受け入れを成功させることができるのかについて考察した。
なお、本書の第Ⅲ部・第Ⅳ部の各章では、外国人介護労働者受け入れの取り組み実態とその経験を基に受け入れを成功させるためのアイディアをまとめていただいた。同時に、異文化のアジアからやってくる外国人介護労働者と共働する中で起こる、異文化ならではの課題についても述べていただいた。しかし、個々の分担執筆者の主張に対して編者は何ら介入をしていない。なぜなら、この本を手にとっていただいた方が、それぞれの立場で、目まぐるしく変わる日本の介護現場における外国人介護労働者受け入れ制度について、今一度立ち止まって考えていただくこと、また、今後日本はどのようにしていけばよいのかについて考えていただく契機の1つとなれば、と思っているからである。
このように、4部+終章構成となった本書には、日本における外国人介護働者の受け入れを成功に導くために何が重要なのか、何が足かせとなっているのかを考える重要な視点がちりばめられている。介護現場で日々外国人介護労働者を受け入れて奮闘する施設経営者や介護者、また、今後受け入れを考えている施設あるいは受け入れたばかりの施設現場の実践者の方々は言うまでもなく、介護・福祉領域の教員や研究者、そこで学ぶ学生や大学院生、そして政策立案に携わる人たちに、ぜひとも手にとっていただきたい。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。