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地方小都市の知的社会基盤の形成プロセス
「こと・ひと」から始まる持続可能なまちづくり
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年9月30日
- 書店発売日
- 2021年10月7日
- 登録日
- 2021年9月1日
- 最終更新日
- 2021年10月13日
紹介
地域の活性化や地域再生には「内発的発展」と共に継続的なイノベーションが求められる。その観点から本書では、地域特性分析と類型化、都市化過程の実態分析と比較考察、知的社会基盤の形成モデルの提示により、地方小都市の実態とメカニズムを実証的に探究した。
目次
はじめに
第1章 序論
Ⅰ 研究の基本的視座
Ⅱ 地域が振興している「証」とは
Ⅲ 価値観のパラダイムシフト
Ⅳ 地方小都市問題の位置づけ
Ⅴ 既往研究の考察
Ⅵ 研究の目的・方法
第2章 地方小都市の地域特性分析
Ⅰ 地域特性分析の基本フレームと方法
Ⅱ 分析結果の考察
Ⅲ 実態調査都市の選定
第3章 地方中核・中心都市圏包含型小都市――山形県寒河江市
Ⅰ 寒河江市の素描
Ⅱ 市振興計画の展開過程
Ⅲ 主要プロジェクトの概況と課題
Ⅳ 主要産業の動向と課題
Ⅴ 新たな展開への課題
第4章 高速交通体系ブランチ型小都市――岩手県花巻市
Ⅰ 花巻市の素描
Ⅱ 市振興計画の展開過程
Ⅲ 主要プロジェクトの概況と課題
Ⅳ 主要産業の動向と課題
Ⅴ 新たな展開への課題
第5章 沿岸域・農山村独立型小都市――新潟県村上市
Ⅰ 村上市の素描
Ⅱ 市振興計画の展開過程
Ⅲ 主要プロジェクトの概況と課題
Ⅳ 主要産業の動向と課題
Ⅴ 新たな展開への課題
第6章 広域中心型小都市――青森県五所川原市
Ⅰ 五所川原市の素描
Ⅱ 市振興計画の展開過程
Ⅲ 主要プロジェクトの概況と課題
Ⅳ 主要産業の動向と課題
Ⅴ 新たな展開への課題
第7章 地方小都市の知的社会基盤の形成方向
Ⅰ 実態調査を踏まえた都市化形成過程の特性把握
Ⅱ 知的社会基盤の計画論的な要件と方向に関する傍証分析
Ⅲ 地方小都市の知的社会基盤の形成に関する計画論的考察
第8章 総括
Ⅰ 各章のまとめ
Ⅱ 結論と今後の課題
参考文献
あとがき
前書きなど
はじめに
本書は、2000年以降行ってきた、地方中小都市問題について「知的社会基盤」(詳細は下記に示す)という概念の導入を図り、その下で地域形成の展開メカニズムと計画論的課題ならびに、その形成モデルに関する研究をまとめたものである。
地方中小都市は、特に地方圏における日常生活の圏域での中心的都市と期待されながらも、その多くは大都市指向の振興と拠点主義的な国土政策の中では停滞性の強い存在として推移している。1970年代以降の地域主義的な地域振興の思潮は、少なからぬ過疎町村に新しい息吹を与え、地域おこしの実を結びつつあるが、地方中小都市では、都市としてそれなりの複合的ニーズを内包しているためか、特定の機能だけでの振興のみでは、都市総体としての活性化に届かないケースが少なからず見受けられる。地方中小都市にあっては中心市街地と背後の農漁村部との共生的展開を名実ともに作り上げていくべき発展論理の構築が求められている。第三次全国総合開発計画での定住圏構想やその後の多自然居住地域、定住自立圏構想、平成の大合併による団体自治の広域化の中で、昭和の大合併における自然村から発生した日常生活圏としての旧町村や大字が改めて注目されている。しかし、その理念と構築手段を明確にし得ないまま今日に至っていることは、わが国の国土政策の中にあって地域振興の基礎単位地域であるところの地方中小都市問題への対応が未成熟なままであると考える。
また、地方中小都市は交通の発達の如何などにより、一面では活動の範囲を拡大するとともに、他面では都市自体の有機的な統一性を失い、社会経済的、文化・教育的な機能を低下させている。このような状況におかれている地方中小都市の中でもいわゆる「地方小都市」(地方圏に立地し、昭和、平成の大合併で町村のみで合併し都市として成立した人口3万人から10万人の都市)は、その成立過程に起因する特有な課題も加わり、より一層厳しい地域経済環境におかれていることも指摘できる。
一方、地域の活性化や地域再生には「内発的発展」が今こそ求められていると言う。この内発的発展は経済現象だけではなく社会や文化の変化を伴う社会全体の現象であり、この側面を含む概念としており、その基底には、地域に賦存する様々な素材を資源化するのは「ひと」であり「ひと」が地域の素材を活用して地域資源化するものである。そのためには「人的資源集合」が必要であり、内発的発展のためには何らかのイノベーションがなければならず、しかも、それは継続的に繰り返すものでなければならない。その繰り返しの集積が地域の風土、文化を醸成する基盤であると指摘しながらも、実体的には、地域が独自の地域資源を活用して地域発展する具体的な論理やメカニズムは示されていないと考えている。それを議論するためには現実の地域発展と結びついた具体的・即地的検討が求められていると考える。
本書は上記の背景・問題意識の下で地方小都市の「知的社会基盤」形成の展開メカニズムと計画論的な課題を明らかにすることによりその形成モデルの提示を目的としている。なお、「知的社会基盤」を次のように概念規定している。「物理的な社会基盤に対して、日常的な生活空間の単位としてのコミュニティ、旧町村を対象に、持続可能な地域づくりの実体を形成する重要な計画要素であると考える『こと・ひと(活力)』の織り成すダイナミズムにより形成されるところの地域自立化に向けた地域革新力の醸成や社会的な土壌・風土」と定義している。
今日、地方小都市の存立、活性化の方向を見据えることは、都市と農山漁村、自然と人間の共生など、生態系を体系的に生かした生命論的視点での都市の展開方向を模索するための重要な示唆を与えるものであり、今後の国土政策上の積極的位置づけが欠かせない課題の1つであると述べている。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。