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原発と闘うトルコの人々 森山 拓也(著) - 明石書店
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原発と闘うトルコの人々 (ゲンパツトタタカウトルコノヒトビト) 反原発運動のフレーミング戦略と祝祭性 (ハンゲンパツウンドウノフレーミングセンリャクトシュクサイセイ)

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発行:明石書店
A5判
304ページ
上製
価格 4,000円+税
ISBN
978-4-7503-5265-7   COPY
ISBN 13
9784750352657   COPY
ISBN 10h
4-7503-5265-9   COPY
ISBN 10
4750352659   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2021年10月20日
書店発売日
登録日
2021年9月1日
最終更新日
2021年11月5日
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紹介

トルコでは政府の開発主義に抗して、長らく反原発運動が行なわれているが、従来の抗議運動とは異なり、祝祭的で党派を超えた大規模な運動という特徴がある。どのように運動が発生し、進展したのか。日本の原子力輸出にも警鐘を鳴らす必読の書!

目次

 凡例
 略号表

序章 市民の声を求めて
 1.日本の原発輸出と現地の反対運動
  1-1.日本の原発が「トルコで一番幸せな街」へ
  1-2.原発をめぐる世界の動向と日本の原発輸出
  1-3.祭りのような反原発集会
  1-4.40年以上続くトルコの反原発運動
 2.社会運動のフレーミング戦略と予示的政治
  2-1.社会運動研究のアプローチ
  2-2.トルコの原子力問題についての研究
  2-3.トルコの社会運動についての研究
  2-4.分析に用いた資料
 3.本書の構成

第1章 トルコの原発建設計画
 1.原子力「平和利用」の拡大とトルコ
  1-1.「アトムズ・フォー・ピース」
  1-2.親米政策の一環としての原子力協定
 2.繰り返された原発建設の試み
  2-1.原子力研究の開始(第1期:1955~1971年)
  2-2.建設地の選定とスウェーデンとの交渉(第2期:1972~1980年)
  2-3.契約方式をめぐる交渉の難航(第3期:1980年代前半)
  2-4.国際社会に懸念されたアルゼンチンとの協力(第4期:1980年代後半)
  2-5.進まない国際入札(第5期:1992~2000年)
  2-6.AKP政権下の原発建設計画(第6期:2004年~)
 3.初の原発稼働へ近づくトルコ
  3-1.ロシアによるアックユ原発の建設
  (1)世界初のBOT契約
  (2)事業の運営体制
  (3)2023年に向け進む建設
  3-2.先行き不透明なシノップ原発事業
  3-3.第3原発建設に向けた動き
 4.大国のシンボルとしての原発

第2章 トルコにおける環境運動と政治
 1.トルコの環境運動の始まり(1960~70年代)
  1-1.都市公害問題の深刻化
  1-2.ローカルな環境運動の発生と環境団体の設立
  1-3.政治的混乱と社会運動の先鋭化
 2.社会運動の停滞と「新しい社会運動」の登場(1980~90年代)
  2-1.1980年クーデターと市民社会の統制
  2-2.民主化と市民社会の再活性化
  2-3.「新しい社会運動」の登場
  2-4.開発の加速と環境運動の拡大
  2-5.クーデター後に生じた新たな機会
 3.トルコにおける「緑の党」の試み
 4.新自由主義への抵抗(2000年代以降)
  4-1.民主化の進展と後退
  4-2.縁故主義と開発事業へ高まる反発
  4-3.ゲズィ抗議運動のインパクト
  4-4.強まる権威主義
  4-5.資本主義の正当性を問う

第3章 トルコにおける反原発運動の展開
 1.漁民たちの反対運動――反原発運動の登場
 2.「放射能を帯びたチャイはおいしい」――チェルノブイリ原発事故とトルコ
  2-1.1980年クーデターの影響
  2-2.チェルノブイリ原発事故へのトルコの反応
  2-3.「放射能チャイ」論争――広がる放射能汚染への不安
  2-4.「中東工科大学レポート」
  2-5.署名・啓発運動の開始
 3.高揚した1990年代の運動
  3-1.運動拡大へ高まる気運
  3-2.反核プラットフォームの結成
  3-3.アックユ反原発フェスティバル
  3-4.シノップでの反原発運動の始まり
  3-5.原発建設中止を求める裁判
  3-6.自主管理住民投票
  3-7.反原発運動の勝利
 4.2000年代以降の展開
  4-1.反核プラットフォームの再結成
  4-2.原発の建設・運転・売電関連法とアックユ原発入札への抗議
  4-3.福島原発事故のインパクトと日本への抗議
  4-4.環境影響評価をめぐる裁判闘争
  (1)アックユ原発の環境影響評価
  (2)シノップ原発の環境影響評価
  (3)その他の裁判闘争

第4章 運動レパートリーと予示的政治
 1.社会運動のレパートリー
 2.トルコの反原発運動のレパートリー
 3.創造性と祝祭性――予示的政治の顕れ

第5章 反原発運動のアクターと資源動員
 1.反核プラットフォーム
 2.各アクターによる資源動員
  2-1.公的職業団体
  2-2.環境団体
  2-3.政党と地方自治体
  2-4.芸術家

第6章 トルコの反原発世論と運動参加の背景
 1.原発建設に対するトルコの世論
  1-1.ボアジチ大学の研究者による調査(2007年7~8月実施)
  1-2.グリーンピース地中海による調査(2011年3~4月実施)
  1-3.Ipsos社による調査(2011年5月実施)
  1-4.KONDA社による調査(2011年4月、2012年3月、2018年3月実施)
  1-5.政治的・社会的分断を越えた反原発世論
 2.運動参加者たちの語り――なぜ原発に反対するのか
  2-1.「どの家にもガン患者がいる」――チェルノブイリの記憶
  2-2.日本への視線――広島・長崎・福島
  2-3.その他の運動参加動機
  (1)環境意識の高まりと資本主義への懐疑
  (2)生業への悪影響の不安
  (3)将来世代への責任

第7章 反原発運動のフレーミング戦略
 1.反原発運動の主張
 2.フレーミング論の視点
 3.表現とデザインのフレーム分析
  3-1.原発の危険性
  (1)「核は死を招く」――危険性の警告
  (2)「原発事故を繰り返すな」――過去の教訓
  (3)核兵器のイメージ――広島・長崎とナーズム・ヒクメット
  (4)「核より命」
  3-2.安全管理への懸念
  3-3.放射性廃棄物への懸念
  3-4.自然環境への悪影響
  3-5.原発の経済的非合理性
  3-6.再生可能エネルギーへの期待
  3-7.「原発は時代遅れ」
  3-8.外国依存悪化への懸念
  3-9.「原発は嘘まみれ」――政権への不信
  3-10.民主主義との矛盾
  (1)「政府は市民の声を無視している」――政権批判のフレーム
  (2)「我々の未来を守る」――自己決定への要求
  (3)森林伐採と民主主義
 4.マスターフレームとしての「自由と民主主義」

終章 社会変革の要求と予示的実践
 1.本書のまとめ
 2.変革を求める市民たち――建国100周年を前に

 巻末資料
 参考文献
 あとがき
 索引

前書きなど

序章 市民の声を求めて

 (…前略…)

3.本書の構成

 本書は、序章と終章を含めた全9章から構成されている。
 第1章では、原発の利用を目指してきたトルコの取り組みについて、歴史的経緯と現状を整理する。まず、1950年代から現在に至るまでの原発建設に向けたトルコの取り組みを時系列に沿って概観し、現在の原発建設計画の交渉経緯や事業の運営体制について説明する。続いて、原発事業の宣伝広告などを分析しながら、原発の建設が開発主義と強く結びついた事業であることを指摘する。
 第2章では、強い開発主義の下でトルコの環境運動がどのように展開してきたのかを、トルコの民主化過程と共に振り返りながら整理する。1980年代後半以降の環境運動の高まりは、民主化の進展とも相互作用しながら、同時期の反原発運動に影響を及ぼしてきた。さらに、近年の環境運動は個別の環境問題に取り組むだけでなく、政権による新自由主義的な開発政策や建設利権をめぐる縁故主義への批判を強めていることを指摘し、トルコ政治における環境運動の役割や位置付けについて考察する。
 第3章では、1976年に始まってから今日に至るまでのトルコの反原発運動の展開を概説する。アックユ周辺の漁民らを中心に始まった反原発運動は、1980年クーデターによる中断を経て、1986年のチェルノブイリ原発事故や1990年代の民主化の波を通して拡大し、2000年に原発建設の阻止に成功する。2000年代に原発建設計画が再開された後も、原発反対派はその時々の推進派の動きに合わせ、原発事業の入札への抗議、環境影響評価への抗議、日本への原発輸出中止要請など、様々な活動を展開してきた。
 第4章では、集会やデモ行進、裁判、出版、講演といった反原発運動の用いるレパートリーを整理し、その特徴を明らかにする。その際に予示的政治の概念を用い、反原発運動のレパートリーに見られる祝祭性や創造性の意味を考察する。
 第5章ではまず、反原発運動の中心的なアクターであるNKPについて概説し、NKPの姿勢にあらわれる予示的政治について指摘する。続いて、資源動員論の視点を用いながら、その他の市民社会組織や政党などのアクターが、どのような方法で反原発運動を支えているのかを明らかにする。
 第6章では、過去に実施された世論調査をもとにトルコの反原発世論を分析すると共に、運動参加者への聞き取り調査を実施し、トルコの人々が原発に反対する理由や、運動に参加した動機を明らかにする。そのなかで、チェルノブイリ原発事故がトルコに及ぼした汚染被害が、強い反原発世論の形成につながっていることを指摘する。また、福島原発事故に対するトルコでの反応についても触れる。
 第7章では、フレーミング論を用いて反原発運動の集会やデモ行進における表現を分析し、文化的側面から運動の戦略について考察する。そのうえで、「自由と民主主義を求める運動」という自己認識フレームが、反原発運動に多くの人々を動員するマスターフレームとして機能していることを指摘する。
 最後に、終章で本書の総括を行う。第7章までの議論をふまえて、運動の戦略や、その有効性を支える社会的・文化的背景を整理したうえで、トルコの政治・社会において反原発運動が持つ意味を指摘する。
 巻末には資料として関連地図と年表を用意した。年表では本書に登場する出来事のほか、筆者が確認することのできたトルコの反原発運動に関連する出来事を、トルコの主な政治的出来事と並べ整理した。トルコ現代史の流れの中で反原発運動や原発推進の動きを把握しようとする際などに参照していただきたい。

著者プロフィール

森山 拓也  (モリヤマ タクヤ)  (

同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士後期課程修了。博士(グローバル社会研究)。NPO法人ピースデポ研究員、「脱軍備・平和レポート」編集長を経て、現在、NPO法人気候ネットワーク職員。著書に『イスラーム世界の挫折と再生:「アラブの春」後を読み解く』(共著、明石書店、2014年)、『ピース・アルマナック2021:核兵器と戦争のない地球へ』(共著、緑風出版、2021年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。