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都市高齢者の介護・住まい・生活支援
福祉地理学から問い直す地域包括ケアシステム
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年9月20日
- 書店発売日
- 2021年9月16日
- 登録日
- 2021年8月17日
- 最終更新日
- 2021年9月22日
紹介
高齢者福祉の重要課題となった地域包括ケアシステムの構築はどうあるべきか。本書は福祉地理学の立場から、地域包括ケアシステムの構成要素と位置付けられている個々の福祉サービスや資源の空間的側面に注目し、その実情を明らかにする。
目次
まえがき
第1章 都市における高齢者人口の増加
1 はじめに
2 都市における後期高齢者の増加
3 都市における高齢者のみの世帯の増加
4 都市における高齢者の住まい
5 おわりに
第2章 介護サービスの地域差を生み出す事業者の空間的意思決定
1 はじめに
2 介護保険サービスの全国動向
3 居宅サービスの供給量にみられる地域差
4 サービス提供事業者の法人種別にみられる地域差
(1)サービス別にみた参入事業者の法人種別
(2)保険者別にみた参入事業者の法人種別
5 サービス事業の特性と事業者の参入地域の関係
6 おわりに
第3章 民間事業者による居住系サービスの供給拡大と大都市集中
1 はじめに
2 居住系サービスの供給動向
(1)居住系サービスの増加
(2)有料老人ホームの大都市集中傾向
3 東京大都市圏における有料老人ホームの立地特性
4 都市圏スケールにおける有料老人ホームの立地要因
(1)ニーズ・需要との関係
(2)用地・建物の確保との関係
5 大都市圏における有料老人ホームの供給拡大の要因
6 おわりに
第4章 入所施設の地域的集積が呼び寄せる高齢者
1 はじめに
2 横浜市都筑区の概要
3 都筑区における高齢者入所施設の増加要因
4 都筑区における高齢者向け施設の入所者・利用者特性
(1)高齢者入所施設の入所者特性
(2)在宅でサービスを利用する高齢者の特性
5 都筑区に転入する高齢者
(1)高齢者転入の実際
(2)都筑区に転入する高齢者の類型
6 おわりに
第5章 公募方式による地域密着型サービス整備の課題
1 はじめに
2 地域密着型サービスの全国動向と地域差
3 長崎市における小規模多機能型居宅介護の立地と運営実態
4 小規模多機能型居宅介護の整備過程の実際
5 公募方式の課題
6 おわりに
第6章 地域密着型サービス事業所による地域交流・連携
1 はじめに
2 長崎市の空間構造
3 地域密着型サービス事業所による地域交流・連携
(1)資料ならびに対象事業所の概要
(2)事業所による地域交流・連携
(3)事業所特性と取組み内容の関係
4 交流・連携を通じた介護事業所と地域社会の関係構築の実際 132
(1)市中心部A地区のX事業所の例
(2)郊外住宅地B地区のY事業所の例
(3)新興住宅地C地区のZ事業所の例
5 効果的な地域交流・連携のための実践手法
6 おわりに
第7章 住宅団地の再生と高齢者のつながりづくり
1 はじめに
2 賃貸住宅団地の建替えが抱える問題
3 草加松原団地の建替え事業
4 建替えが高齢者の生活環境と近隣・友人との交流に与える影響
(1)被調査者の概要
(2)生活環境の変化に対する評価
(3)近隣・友人との交流の変化
(4)建替えの問題点
5 コミュニティ・カフェ活動による高齢者のつながりづくり
(1)事例コミュニティ・カフェの概要
(2)コミュニティ・カフェにおける高齢者の社会関係
(3)建替えによる影響とコミュニティ・カフェのその後
6 おわりに
第8章 福祉を担う民間非営利組織の地域的分布と活動基盤
1 はじめに
2 福祉系民間非営利組織の地域的分布
(1)民間非営利組織の概要
(2)NPO法人の地域的分布
3 多摩ニュータウンにおける高齢化と生活問題の拡大
4 多摩ニュータウンにおける福祉系NPO法人の活動
(1)多摩ニュータウンで活動する福祉系NPO法人
(2)NPO法人による福祉活動の実際
(3)福祉系NPO法人の活動拠点の立地
5 ニュータウンの再構築における民間非営利組織の存在意義
6 おわりに
第9章 大都市郊外における地域包括ケアシステムの構築
1 はじめに
2 圏域構造からみた都市の地域包括ケアシステム
3 多摩市における地域包括ケアシステムの構築
(1)多摩市の概要
(2)圏域構造からみた多摩市の地域包括ケアシステム
4 日常生活圏域における地域包括支援センターの事業活動
(1)地域包括支援センターの受託法人の概要と事業活動実績
(2)多様な主体の参加による地域包括ケアの基盤づくり
5 おわりに
あとがき
索引
前書きなど
まえがき
(…前略…)
第1章は、日本において地域包括ケアシステムの構築が喫緊の課題とされるようになった原因である都市の高齢者人口の増加について、現在および近い将来の動向を概観し、あわせて福祉のニーズを大きく左右する高齢者の家族と住まいについての都市における状況を確認する。このことは、本書において大都市圏およびその郊外と非大都市圏の主要都市の中から事例地域・都市を取り上げる理由を示すことにもなるため、本書の導入の役割を担う章である。
第2章から第4章は、訪問介護をはじめとする居宅介護、有料老人ホームなどの施設を居宅とみなしてサービスを提供する居住系サービスの施設を対象とする。第2章では、地域包括ケアシステムにおける介護分野の中心を成す介護保険のサービスから居宅サービスを取り上げて、関東地方を事例地域にその供給にみられる地域差を計量的手法を用いてとらえた上で、介護事業者の地域的な参入行動に注目して地域差形成の要因を考察する。第3章では、都市の地域包括ケアシステムにおいて、高齢者の住まいを考える際に無視できない存在となった居住系サービスの中から有料老人ホームを取り上げ、東京大都市圏を事例地域として大都市における同ホームの集積とその要因を考察する。(……)それを受けて第4章では、居住系サービスを含む施設型のサービスの偏在が引き起こす高齢者の人口移動の特徴について、東京大都市圏の西郊に位置する横浜市都筑区を事例地域に明らかにする。(……)
第5章からは、地域包括ケア推進の根底にある、福祉の地域化と関係したテーマを取り上げる。第5章と第6章では、認知症高齢者のケアをモデルに創設された介護保険の地域密着型サービスを対象とする。(……)そこで第5章では、長崎市における地域密着型サービスの整備過程をみることを通じて、公募方式によるその整備の課題を論じる。第6章では、引き続き長崎市を対象地域に、地域密着型サービスの事業所が取り組む地域交流と地域連携に注目する。(……)
第7章と第8章では再び対象地域を東京大都市圏に戻し、高齢化が著しい郊外の住宅団地における高齢者の居住安定と生活支援およびその担い手に関するテーマを扱う。第7章では、先の章で扱った居住系サービスとは入居対象者の所得階層が異なるものの、ともに都市の地域包括ケアにおいて高齢者の住まいを考える上で重要視されている公的な賃貸住宅を対象とする。(……)続く第8章では、そのような活動が地域包括ケアシステムにおける介護予防と生活支援の重要な要素とされていることを踏まえ、民間非営利組織(NPO)の福祉活動にみられる地域差や活動の持続可能性についてさらに掘り下げて論じる。この章では、東京都の多摩ニュータウンを事例地域に、福祉系NPO法人の活動を支える下部構造を析出するとともに、そこから導かれる住民主体の福祉活動の課題に言及する。
最後の第9章は、本書において唯一地域包括ケアシステムをそれ自体として取り上げるが、その中でも地域包括ケアシステムの中核機関とされる地域包括支援センターの取組みに注目する。(……)
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。