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先住民のメキシコ
征服された人々の歴史を訪ねて
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年8月31日
- 書店発売日
- 2021年10月4日
- 登録日
- 2021年9月1日
- 最終更新日
- 2021年10月13日
紹介
征服者の歴史では語られることのなかった、メキシコ先住民たちの悲運、悲劇、塗炭とはどのようなものだったのか。各地に残る農園、アシエンダを訪ね、虐げられながらもその土地で紡いできた彼らの日々の光と影を、写真家のまなざしが鮮やかに描き出す。
目次
はじめに
メキシコ地図
用語解説
登場人物
第一章 大航海時代前夜
第二章 混乱のメキシコ植民地
第三章 メキシコの裁判制度の顛末
第四章 「インディオ」たちの訴訟記録
第五章 アシエンダ
おわりに
参考文献
年表
前書きなど
はじめに
(…前略…)
本書では、アメリカ大陸のスペイン国民、「インディオ」と呼ばれたメキシコ先住民へ施されたスペイン統治の歩み、つまりスペイン人探検家エルナン・コルテスの、モクテスマ率いる大帝国アステカの首都テノチティトラン征服(二〇二一年八月に五〇〇周年を迎える)後の、総督コルテスの統治、高等司法行政院による統治、そして、副王制による長い統治制度にふれ、裁判制度や裁判記録、さらには、スペイン人征服者や入植者に与えられた官僚職、公務職、土地所有権などの違法な譲渡から、メキシコ先住民に浴びせかけられていた数々の困難を洗い出して示そうと思う。
これまで、メキシコ関係の多くの本で、植民地時代を通して「人口破壊」をはじめとするメキシコ先住民の悲運、悲劇、塗炭を抽象的で概念的な言葉で知っていたが、その実態を身近に感じることはできなかった。それは私がその時代に生きていないことが決定的な理由だが、もう一つ、その時代の上澄みに生きている人々の歴史記述はたくさん残されているのに、その下層で生きて亡くなった無名の先住民の残したものがほとんどないのが理由である。彼らは貧しさや厳しい生活のために、それをする能力を身につけることがかなわなかったともいえるが、苦しい生活を思い出すのもいやな精神状態にあったからかもしれない。
メキシコの植民地時代を扱ううえで忘れてはいけない、三つのキーワードがある。その一つが、前述した「アシエンダ」とその経営者を意味する「アセンダド」で、二つめが、おもに征服者が成功報酬としてあてがわれた先住民集落、あるいは税を徴収する権利制度を意味する「エンコミエンダ」とその権利者「エンコメンデーロ」、そして三つめが労働力分配制度と訳される「レパルティミエント」である。この三つの言葉は本文中にたびたび出てくるので、記憶されることをお願いしたい。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。