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交通・都市計画のQOL主流化 林 良嗣(編) - 明石書店
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交通・都市計画のQOL主流化 (コウツウトシケイカクノキューオーエルシュリュウカ) 経済成長から個人の幸福へ (ケイザイセイチョウカラコジンノコウフクヘ)

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発行:明石書店
A5判
396ページ
上製
価格 4,500円+税
ISBN
978-4-7503-5226-8   COPY
ISBN 13
9784750352268   COPY
ISBN 10h
4-7503-5226-8   COPY
ISBN 10
4750352268   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0065  
0:一般 0:単行本 65:交通・通信
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2021年8月31日
書店発売日
登録日
2021年7月1日
最終更新日
2021年9月14日
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紹介

人口減少時代の道路交通に対して、経済規模拡大・経済効率性の観点のみではなく、接続する交通ネットワークや心を癒す地域の関連環境の整備を含めた、市民への統合効果としてはかる、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)による評価法の確立を目指す。

目次

 はしがき

第Ⅰ部 QOLに基づく交通と都市の新たなプロジェクト評価法――公共事業評価からSDGs、GNHまで

第1章 なぜQOLなのか?
 1.1 将来世代が求めるインフラと国土・都市
 1.2 現行の費用便益分析による事業評価の矛盾
 1.3 社会変化・気候変動・パンデミックなど変化と新たなニーズへの対応評価を可能に
 1.4 国民経済GDP評価から個人幸福QOL評価へ
 1.5 コンパクト・プラス・ネットワークの評価
 1.6 異なる種類のプロジェクトの比較を可能に
 1.7 SDGs「誰一人取り残さない」、GNH「国民総幸福」の評価を可能に
 1.8 広い適用対象への対応を可能に:交通プロジェクトからスマートシュリンクまで

第2章 最終帰着効果で測るQOLアクセシビリティ法
 2.1 QOLに関するこれまでの研究の概観
 2.2 QOLアクセシビリティ法の提案
 2.3 QOL評価指標の設定
 2.4 QOLアクセシビリティ法の効能と広い応用範囲

第3章 QOL評価における価値観の比較分析
 3.1 人々の価値観の推定方法
 3.2 国際比較アンケート調査による比較分析の事例
 3.3 日本における生活環境と移動環境に関する価値観の分析

第4章 ケーススタディ:都市・交通プロジェクトへのQOL評価の適用事例
 4.1 交通プロジェクトにおけるQOL評価手法の適用
 4.2 QOLアクセシビリティ法による都市構造分析
 4.3 スマートシュリンクを中心とした土地利用政策におけるQOL評価手法の適用:名古屋都市圏におけるエコ・コンパクトな市街地形成
 4.4 スマートシュリンクを中心とした土地利用政策におけるQOL評価手法の適用:インフラ老朽化を考慮した市街地維持費用の推計と市街地拡大抑制策の検討

第5章 QOL評価のSDGsへの展開
 5.1 SDGsと都市・交通
 5.2 QOLアクセシビリティ法とSDGsの関係
 5.3 まとめ


第Ⅱ部 国際シンポジウム:交通と都市の計画評価におけるQOLの主流化――Wider Economic ImpactからGNH、SDGsへ

開会の挨拶と趣旨説明
 1.ウェルカムスピーチ
 2.開会挨拶
 3.シンポジウムの趣旨説明

セッション1:欧州と日本におけるプロジェクト評価の歴史的変遷と代替アプローチ

1 拡張効果から変革効果へ:大規模プロジェクトにおいて展開されるイギリスのアジェンダ(Roger Vickerman)
 1.イギリスにおける交通プロジェクト評価の現在
 2.HS2におけるケーススタディ
 3.結論
 4.質疑応答

2 広範な経済効果(WEI):ドイツにおけるプランニングの実践(Werner Rothengatter)
 1.現在のドイツにおける交通プロジェクト評価
 2.現在の方法に対する批判と提案
 3.これからの経済効果分析
 4.質疑応答

3 フランスにおける費用便益分析と都市交通への投資:アクセシビリティ転換を目指して(Yves Crozet)
 1.CBAと「グラン・パリ・エクスプレス」
 2.速度の向上と「アクセシビリティ転換」
 3.アクセシビリティ地図を読む
 4.結論
 5.質疑応答

4 日本における道路事案の評価:防災機能評価の取り組みについて(八尾光洋)
 1.道路事業の評価の概要
 2.道路事業の防災機能評価
 3.まとめ
 4.質疑応答

セッション2:QOLアクセシビリティアプローチ

1 QOLアクセシビリティ法とそのケーススタディ:シンガポール、南京、高蔵寺ニュータウン、インド高速鉄道、バンコク、COVID-19パンデミック(林良嗣)
 1.QOLアクセシビリティ法
 2.南京、シンガポールにおける都市鉄道・コンパクトシティのケーススタディ
 3.高蔵寺ニュータウンにおけるケーススタディ
 4.インド高速鉄道におけるケーススタディ
 5.バンコクにおけるQOL-MaaSのケーススタディ

2 SDGs達成に向けた運輸部門の貢献度評価のためのQOLアクセシビリティ法の拡張(竹下博之)
 1.QOLアクセシビリティ法のSDGsへの拡張
 2.ケーススタディ

3 日本におけるQOL評価の実践:高速道路とストリートデザインへの適用(森田紘圭)
 1.新たな機能評価の必要性とQOL
 2.道路事業へのQOLの適用
 3.高速道路事業のケーススタディ
 4.街路再整備事業のケーススタディ

4 QOL評価の都市のスマートシュリンクへの応用(加知範康)
 1.「小さな拠点」形成による生活の質(QOL)と防災力の向上
 2.生活サービス施設と居住地集約のシナリオ設定と評価項目
 3.居住者QOLの評価方法(個人の価値観×生活環境)
 4.長崎県壱岐市を対象としたシナリオ分析

5 セッション2の発表者4名へのコメント(James Leather)
 1.林良嗣氏(セッション2-1)へのコメント
 2.竹下博之氏(セッション2-2)へのコメント
 3.森田紘圭氏(セッション2-3)へのコメント
 4.加知範康氏(セッション2-4)へのコメント
 5.全体へのコメント

セッション3:ポストコロナ社会におけるプロジェクト評価

パネルディスカッション
 1.COVID-19後の社会とQOL評価
 2.COVID-19後の交通行動
 3.QOL指標を活用した政策決定プロセス
 4.COVID-19が渋滞回避の感度分析に
 5.環境から広範な経済効果そしてQOLへ
 6.これからの社会成長に必要な考え方
 7.1分コメント
 8.まとめ

 あとがき
 索引

前書きなど

はしがき

 (…前略…)

 本書は、これらの疑問に正面から答えるもので、2部構成をとっています。
 第Ⅰ部は、林とその研究チームが20年来開発してきたQOLの分析評価モデルと様々な適用事例をまとめたものです。費用便益分析の略史と、その問題点を克服する「QOLアクセシビリティ法」を提示し、それを応用して様々な交通・土地利用政策をQOLという統一指標により評価します。具体的には、(1)中部横断自動車道・福井バイパス道路・道路空間再設計の道路事業、(2)南京市交通ネットワーク、(3)シンガポールの都市内鉄道整備 vs コンパクトシティ政策、(4)高蔵寺ニュータウンのLRT(ライトレール)整備 vs 緑化政策、(5)名古屋都市圏での災害高リスク地やスプロール地からの撤退・集住計画、および(6)豪雪地帯の上越市でのスマートシュリンク政策に向けた市街地維持費用の推計などに適用しています。
 それぞれの適用範囲について、まず、通勤、ビジネス、医療、買い物、ツーリズムなど異なる交通目的ごとに、男女、年齢層、所得層などにより異なる価値観をもつ個人のQOLを計測します。次に、各政策が誰にとっていかほどの効果をもつのか、それらを属性グループごとに集計してSDGsの「誰一人取り残さない」の視点から検討し、また、それらのQOLを集計してブータンの国民総幸福(GNH)やグループごとの総幸福の比較をします。さらには、総幸福と、自治体財政負担額や地球環境負荷などを含めた社会的コストとの比である充足性(sufficiency)による政策評価手法を提案します。
 第Ⅱ部は、中部大学(持続発展・スマートシティ国際研究センター)とアジア開発銀行研究所(ADBI)が共催したQOL主流化をテーマに掲げた国際シンポジウム“Mainstreaming Quality of Life in Evaluation of Transport and Spatial Planning”の内容をまとめたものです。セッション1では、現代の交通プロジェクトにおいて、50年前に導入された費用便益分析がカバーした便益をはるかに超える様々な要因が出現するなか、英、独、仏の各国でいかにしてこれらを克服しようとしてきたかを、世界を代表する研究者Roger Vickerman、Werner Rothengatter、Yves Crozetの各教授がその理論的背景とともに解説し、国土交通省道路局の八尾光洋国際室長が日本特有の災害対策評価を報告します。セッション2では、シンポジウムにおいて本書第Ⅰ部の「QOLアクセシビリティ法」を要約的に解説します。これに対してアジア開発銀行のJames Leather交通部門主管がその新しい手法の途上国への適用性の視点を中心に、また広島大学の張峻屹教授がCOVID-19パンデミックと地方都市の魅力度評価への適用性を興味深く語ります。最後のセッション3は、ADBIのK. E. Seetharam博士のコーディネートによるパネルディスカッションの内容で、「QOLアクセシビリティ法」の実践とその理論的背景について、登壇者全員で根源的な議論を展開します。
 「QOLアクセシビリティ法」は、異なる場所や施設で提供されるサービスを、交通ネットワークの改善により、どれだけ享受できるようになるのかについて、空間相互作用モデルとQOLとをつなげて評価するシステムです。本書は、この手法を開発し、様々な都市の交通システムや都市縮退の有効性に関する応用例を蓄積してきた林研究室における20年来の研究成果を集約したものです。その中で、道路事業に関しては、国土交通省の道路政策の質の向上に資する技術研究開発「QOLに基づく道路事業評価手法の開発とSDGsへの貢献評価」(平成30年度~令和2年度)を得て実施したものであり、審査の過程で貴重な意見をいただいたことを記し、謝意を表します。
 最後に、本書がわが国における国土・都市政策の重要課題であるコンパクト・プラス・ネットワーク、立地適正化や、頻発する自然災害へのレジリエンス向上のための計画策定に、さらには、全世界規模で課題となっている脱炭素社会の実現やCOVID-19パンデミック後のニューノーマルの形成に向けた交通・土地利用政策転換の実務のお役立にてば、望外の幸せであります。

著者プロフィール

林 良嗣  (ハヤシ ヨシツグ)  (

中部大学卓越教授、持続発展・スマートシティ国際研究センター長、名古屋大学名誉教授。ローマクラブの執行委員・日本支部長、世界交通学会(WCTRS)の会長(2013~2016年)、COVID-19Taskforce議長などを歴任。東京湾アクアライン、つくばエクスプレス、中央リニア、バンコク都市鉄道導入、インド新幹線などの効果分析に携わる。集計経済便益による事業評価に代わる、個人の幸福度を計測し、コンパクト・プラス・ネットワーク、都市縮退、SDGsの包摂性の評価にも使えるQOLアクセシビリティ評価法を発案し、多方面に応用。

森田 紘圭  (モリタ ヒロヨシ)  (

大日本コンサルタント株式会社インフラ技術研究所主任研究員。博士(環境学)。名古屋大学大学院環境学研究科修了後、同社入社。道路計画および設計、エネルギー事業の調査・計画に関する業務を経て、現職。現在は、中心市街地における都市・地域再生や気候変動やSDGsなどに対応する持続可能なまちづくり、スマートシティなど様々な事業の企画設計に関わる。その他、名古屋の錦二丁目エリアマネジメント株式会社取締役等を務める。

竹下 博之  (タケシタ ヒロユキ)  (

中部大学持続発展・スマートシティ国際研究センター特定講師。2010年に名古屋大学大学院環境学研究科にて博士(工学)取得後、一般財団法人運輸政策研究機構にて、高速鉄道をはじめとする本邦の鉄道インフラ海外展開や、ASEAN諸国の低炭素交通のロードマップ作成といった研究プロジェクトに従事した後、民間企業にて交通事業の動向調査や海外展開、グループ全体の法務担当を含む経験を積む。現在はQOLと脱炭素社会を同時に実現するための都市や交通のあり方に関する研究に取り組んでいる。

加知 範康  (カチ ノリヤス)  (

東洋大学情報連携学部情報連携学科准教授(博士〈環境学〉)。名古屋大学大学院環境学研究科都市環境学専攻博士課程修了後、公益財団法人豊田都市交通研究所、九州大学大学院工学研究院附属アジア防災研究センターを経て、現職。人口減少・少子高齢化や気候変動に伴い、自然災害に対する都市・国土の脆弱性が増大する中で、情報技術を活用し、その実態を把握するとともに、安心して快適に暮らせる都市・国土のあり方を研究している。

加藤 博和  (カトウ ヒロカズ)  (

名古屋大学大学院環境学研究科附属持続的共発展教育研究センター教授、滋賀大学データサイエンス学部特別招聘教授。土木計画学分野の研究者として運輸・交通サービスの低炭素性評価手法の開発を四半世紀続け、2017年に日本LCA学会功績賞を受賞。さらに「人にも地球にもやさしく災害にも強い都市空間構造」究明と実現手法確立に携わる。地域公共交通の再生も全国各地の現場で支援。以上の経験を活かし「臨床環境学」創成に取り組む。国土交通省交通政策審議会委員として交通・環境関連の制度や計画の見直しにも深く関わる。

上記内容は本書刊行時のものです。