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未完の革命
韓国民主主義の100年
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年7月20日
- 書店発売日
- 2021年7月9日
- 登録日
- 2021年6月1日
- 最終更新日
- 2021年7月28日
書評掲載情報
2021-09-18 | 日本経済新聞 朝刊 |
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紹介
植民地からの独立、朝鮮戦争による荒廃、急激な経済発展、民主的な社会の建設……。エネルギーに満ちた韓国現代史を、朴正煕・金大中・朴槿恵・文在寅という1960年代から現在までの保守と革新を代表する4人の大統領を縦軸に、韓国民衆意識と動向を横軸に描く。
目次
はじめに
第1章 民主主義の胎動
植民地支配の受容と反発
朝鮮戦争前の韓国の混迷
朝鮮戦争という人災と転機
第2章 経済と民主主義の分岐点
革命政権と5・16クーデター
経済効率を最優先した朴正煕
日韓基本条約成立過程に見る韓国の選択
第3章 経済成長と民主主義の回復
崩壊を続けた韓国の民主主義
頂点に達した朴正煕の独裁体制
金大中拉致事件
独裁者の死
第4章 民主化獲得の光と影
新たな弾圧の始まり
民主化の実現と不完全な政権交代
盧泰愚の統治手法
金泳三の強硬姿勢とその影響
第5章 リベラル政権10年の成否
経済危機という足かせ
太陽政策の結実とその後
世代交代の胎動
盧武鉉政権の苦悩
盟友の自殺と文在寅の決意
第6章 保守・リベラル、次世代の対立
文在寅の初めての大統領選挙
崔順実ゲート
大統領弾劾へと向かわせた市民の声
韓国は文在寅を選んだ
おわりに
蒔き続けた平和の種
就任1年目の成果
理想と現実との狭間で
あとがき
本文登場地名地図
前書きなど
はじめに
その国は未だ苦難の旅路のなかにある。
この本の主人公である韓国は、植民地支配、民族の分断に伴う数百万人の犠牲、国土の荒廃などを経て、1950年代には世界の最貧国に位置づけられていた。1910年に日本の植民地支配が始まったことを考えれば、20世紀に入ってからおよそ半世紀のあいだに国としてのさまざまな苦難を詰めこんだのが韓国であった。
しかし、近年のGDP(国内総生産)の国際ランキングを見ると、韓国は10位近くを維持するような経済大国へと成長した。朝鮮戦争の際、国連軍総司令官であったダグラス・マッカーサーが「この国を再建するには少なくとも百年はかかる」と語った状況を思うと、隔世の感がある。実際、現在のソウルの街並みは先進国そのものであり、立ち並ぶ高層ビルは昼夜となく活気にあふれ、人びとの手元では世界的な大企業に成長したサムスン電子製のスマートフォンが各種の情報や娯楽を提供している。そうした情景から、かつてこの街に日本の朝鮮総督府が置かれ、朝鮮戦争時に南北に支配権が度々移行した事実を想像することは難しい。
(…中略…)
そこで、本書では大河ドラマのような韓国の歩みを代表的な4人の大統領の人生を軸に追っていく。保守の代表として挙げるのは、1917年生まれの朴正煕、そして1952年生まれの娘・朴槿恵。リベラルの代表として挙げるのは1925年生まれの金大中、1953年生まれの文在寅である。彼らの人生は韓国の歩みであるとともに、さまざまな互いの関係のなかで、物語が織りなされている。良し悪しは別にして、彼らの存在が無ければ、今の韓国は無い。そうした物語は人情劇、史劇、悲劇といったさまざまな側面を見せつつ、一国の歩みを浮かび上がらせてゆく。特に、2017年春の一大変革にすべてが収斂されていく状況は、ある種、シナリオが存在しているかのようである。もちろん、今後の行方は予想できないものの、二世代、三世代にわたる韓国の変化を追わなければ、「あれほど大勢の人びとをデモに向かわせた本質」そして「韓国人の意識」はつかめない。また、その歩みを知るなかで韓国人が長年の経緯により培ってきた民主主義への思いも実感できることであろう。
上記内容は本書刊行時のものです。