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混迷するベネズエラ
21世紀ラテンアメリカの政治・社会状況
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年3月31日
- 書店発売日
- 2021年3月31日
- 登録日
- 2021年2月8日
- 最終更新日
- 2021年10月22日
紹介
経済危機下にあるベネスエラでは、反米・反グローバリズムの独自路線を歩んだチャベス政権を継承するマドゥロ政権と、親米派のグアイドー勢力が激しく対立している。激動するベネズエラをめぐるラテンアメリカの現状を、専門領域の異なる研究者が詳細に分析。
目次
はしがき
ベネズエラ地図
第1章 「人の移動」から読み解くベネズエラ現代史[野口茂]
はじめに
1.移民受入国としてのベネズエラ
(1)独立から二〇世紀初頭まで
(2)戦後から一九九〇年代
2.チャベス政権と人の移動
(1)チャベス政権誕生の背景
(2)チャベス政権期の人口移動
3.移民受入国から送出国へ
(1)急増する出移民の動き
(2)国外へ逃れる人々の姿
おわりに
第2章 比較のなかのベネズエラ――ほかのラテンアメリカ諸国との共通性と相違点[村上勇介]
1.比較から考えるベネズエラ、ラテンアメリカにおける二つの「決定的契機」
2.チャベス政権成立以前のベネズエラ
3.チャベス政権の成立と国内での覇権確立、長期政権の動揺
4.比較についての補足
第3章 比較の視座からのベネズエラの一九九九年憲法改正[岡田勇]
1.はじめに
2.ラテンアメリカにおける憲法改正
3.ベネズエラにおける憲法改正過程
4.大統領権限の強化
5.政治的包摂の模索と課題
6.結びにかえて
第4章 ベネズエラ、何が真実か?[新藤通弘]
はじめに
1.マドゥロ大統領の正当性
(1)制憲議会の成立
(2)野党も参加した二〇一八年の大統領選挙
(3)選挙結果を巡る報道の奇妙な一致
2.グアイドー暫定大統領の正当性
(1)無法なグアイドー議長の大統領自己宣言
(2)大統領自己宣言を演出したトランプ政権
(3)人道的支援の自己演出
(4)今度はクーデターで政権奪取をねらう
(5)再度クーデターを起こすも失敗
(6)国会議長に再選されず
(7)再びクーデターを起こすも失敗
(8)憲法違反、刑法違反を繰り返したグアイドー氏
3.経済危機の原因と現状――厳しい経済状況
(1)交換レート固定の失策でインフレを招く
(2)米国の制裁と破壊行為で一層インフレは悪化
(3)ハイパーインフレ抑制に貢献した仮想通貨ペトロ
(4)誇張された移民数
4.人権が著しく侵害されているか?
(1)国連人権報告とその性格
(2)人道的干渉、保護する責任論の論理
5.制裁と内政干渉
(1)制裁は戦争に代わる代替手段
(2)人権は、主権をもった各国政府が解決するもの
(3)多岐にわたる米国の制裁
6.外国軍事介入の可能性
繰り返される軍事介入の脅迫
7.世論調査は何を示しているか
(1)変わらぬ政党支持の傾向
(2)二〇二〇年一二月の国会議員選挙
(3)グアイドー議員の人気、地に落ちる
8.国際的仲介による対話
(1)国際連絡調整グループ(IGC)の仲介進展せず
(2)前提条件付けず、相互尊重の対話必要
9.真の解決を求めて
【資料】ベネズエラ政党グループ、政党の政治的傾向
第5章 ベネズエラの民主化を阻む国際的同調圧力[山崎圭一]
1.はじめに
(1)本章の目的
(2)「マシン」の構成要素
2.米国によるベネズエラ「攻撃」の経緯
(1)未曾有の経済危機のはじまり
(2)ハイパーインフレ
3.排除のメカニズム
(1)商業ジャーナリズムの加担
(2)米国による数々の内政干渉・軍事侵攻
(3)「左派」政権排除の他の最新事例――ブラジル
4.日本人としての解釈
(1)批判者の限定的中立性
(2)日本人としての論点――米国覇権の牽制法
(3)科学的思考訓練
5.おわりに
第6章 ブラジルからのベネズエラへの視点――権威主義とポピュリズムの力[住田育法]
はじめに
1.ベネズエラの隣国ブラジルの空間と民族
(1)アマゾニアを挟んで
(2)軍政下のアマゾニア
(3)ベネズエラにつながるアマゾニアの人と自然
2.中国とキューバに接近した二〇世紀ブラジルの左派政権
(1)共産圏への接近
(2)新しいユニークなポピュリスト
(3)ヴァルガス派の左派ゴラールの登場
3.二〇世紀権威主義体制と開発優先の遺産
(1)軍政権威主義
(2)経済活動三ヶ年計画(PAEG)
(3)開発戦略三ヶ年計画(PED)
(4)第一次国家開発計画(ⅠPND)
(5)第二次国家開発計画(ⅡPND)
(6)アマゾニア開発
(7)一九八八年憲法公布
4.チャベスと連帯した中道左派のルーラ
(1)憲法の改正
(2)労働者党(PT)政権の誕生
(3)ポピュリズム重視の大統領選挙
(4)チャベスのベネズエラとルーラのブラジル
(5)チャベスとルーラの違い
おわりに
第7章 メキシコの不干渉主義の今日的意義――対米協調とベネズエラとの外交展開[牛島万]
はじめに
1.不干渉主義はどうして生まれたか
(1)一九一七年憲法の骨子と性格
(2)エストラーダ主義の展開
(3)もう一つの「顔」――親米的なメキシコ
(4)メキシコの輸入代替工業化政策の盛衰
2.NAFTAの功罪
(1)所得・購買力・貧困・所得格差
(2)対米依存の現状と背景
(3)米国への人口移動
3.ロペス・オブラドール(AMLO)の政策と展望
(1)T-MEC締結の利点
(2)ロペス・オブラドールの訪米とトランプとの会談
(3)メキシコ国内の親米派
(4)ロペス・オブラドールの不干渉主義とベネズエラ・マドゥロ政権への支援
結びにかえて
あとがき――混迷するベネズエラからの教訓を中心に
ベネズエラ史 年表
索引
編著者・執筆者略歴
前書きなど
はしがき
パンデミック発生直前の二〇一九年一一月八日と九日の両日、京都外国語大学ラテンアメリカ研究所の第一九回ラテンアメリカ研究講座が開催された。「ベネズエラを巡る二一世紀ラテンアメリカの政治・社会状況」をテーマに、京都外国語大学ラテンアメリカ研究所の研究員に加えて、ベネズエラに関心をもつ研究者が集い、イデオロギーや研究分野の枠を越えて議論をかわした。本書はこの研究講座を踏まえて、報告者が原稿を整えて執筆した成果集である。内容は、報告者の多様な立場ならびに学際的な専門分野をいかすため、編集による画一的な意見の統一をできるだけ避けることにした。文章表現のスタイルも読者の妨げにならない範囲で、執筆者の個性を残している。また、反米と親米、保護主義と開放主義、開発優先と格差是正など、対立する理念をそのまま受け入れ、多様な視座からの考察と議論を尊重した。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。