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アマゾニアにおける市民権の生態学的動態
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年3月25日
- 書店発売日
- 2021年3月31日
- 登録日
- 2021年1月25日
- 最終更新日
- 2021年4月5日
紹介
ブラジル固有の領域概念である「法定アマゾニア」と呼ばれる南米大陸中央部の森林地帯で進行する富の不平等是正に向けた革新的取り組みとは。レヴィ=ストロースが踏破し、『悲しき熱帯』として記録した世界を、およそ1世紀を隔てて調査・考察する。
目次
図表目次
略語一覧
凡例
序章 アマゾニアにおける市民権
第1節 問題の所在:占有の視点から捉える市民権
第2節 考察対象:植民、農地改革、土地なし運動
第3節 理論的視座:占有と譲渡可能性
第4節 本書の構成
第1章 アマゾニアの自然と社会
第1節 研究地域の概要
第2節 アマゾニア民族学の知見
第3節 生態環境と産業実践の翻訳的連鎖
第2章 アマゾニア植民の法制史的過程
第1節 軍政期におけるアマゾニア植民
1 「アマゾニア」の策定
2 公的植民
3 私的植民
第2節 民政期における農地改革
1 国家農地改革計画
2 2つの農業担当省
3 受益集団の編成
第3節 所有地作製をめぐる制度と権利
1 自発的植民
2 公有地をめぐる法制
3 ポセイロとグリレイロ
4 正則化をめぐる立法
第3章 キャンプにおける所有地作製
第1節 キャンプの形成
1 占拠の始まり
2 土地なし運動の展開
3 キャンプ周辺の概況
第2節 キャンプの発展
1 居住様式の変化
2 キャンプと入植地の間を往来する人々
3 インフラの到来
第3節 キャンプの消滅
1 都市への変貌
2 到着した者が主人
3 入植者たちの運動
4 土地取引をめぐる慣習
第4章 非公式な入植地における所有地作製
第1節 カポエイラの内部へ
1 INCRA庁舎前の占拠
2 大豆畑の果て
第2節 ポセイロの土地経営
1 非公式な入植地の形成と発展
2 利益当事者たちの翻訳的共同
3 公務員の土地転がし
第3節 空白地をめぐる衝突
1 土地なし運動の新たな展開
2 2つのキャンプ
3 土地なし運動の混迷化
第4節 所有地作製の技術
1 地理情報技術
2 遷移を前提とした生活過程
3 事業の構想
第5節 極相林とカポエイラ
第5章 入植地における土地利用
第1節 非公式な諸関係
1 土地をめぐる「交渉」
2 ファゼンダの遺構
第2節 中間集団をめぐる関係性
1 入植者の住民組合
2 運動と法人
3 農地の私有化をめぐって
第3節 入植者の流動性
1 流動性を生み出す要因
2 日系入植者
3 移住者間の土地利用の差異
第4節 大豆耕作者の参入
1 生産活動と土壌条件
2 ラランジャの実態
3 耕作者と中間集団の関係
4 観念と実体の捩れ
第6章 入植地の発展軌道
第1節 ノルタゥンの最奥部
1 本章の位置づけ
2 牧草地の回廊
3 先駆者たち
第2節 様々な企図の収斂
1 都市域の拡張
2 移動民による農地策定
3 生産体系の確立
(1)アグロフォレストリー
(2)牧畜
第3節 より良い土地を求めて
終章 市民権の生態学的動態
第1節 占有・不在経営・投機
第2節 指示の反復
第3節 切断を通じた拡張
あとがき
参照文献
索引
前書きなど
序章 アマゾニアにおける市民権
(…前略…)
第4節 本書の構成
本書は、序章と終章を含め、全8章によって構成されている。第1章では、序章で提示した理論的視座を、生態学的知見に基づき再提示する作業を行う。具体的には、植民者によって占有された地表に備わった生態学的諸性質とそこに科学技術的介入として及ぼされる諸作用との関係から、アマゾニアにおける市民権の生態学的動態について理論的検討を試みる。
第2章では、植民という実態を伴った農地改革の政策体制が確立された歴史的過程について検討する。軍政期と民政期における領域統治をめぐる立法の動態に注目することで、植民の実現上不可欠な制度、組織、慣習が形成された過程について考察する。
第3章から第6章までが、マト・グロッソ州の複数の地点で実施された調査に基づく民族誌である。第3章では、クイアバ川上流域のサゥン・イリネウで、農地改革の実施を求め形成された土地なしキャンプに着目することで、占有という行為の多義性と、政策過程の予測不可能性に向けた対処術について考察する。
第4章では、シングー川上流域のマデイランヂアで、互いに隣接して形成された2つの非公式な入植地を比較考察し、占有者たちが入植地事業のスキームを自発的に模倣・再現することで、居住と生産の基盤を確立していく過程について考察する。
第5章では、シングー川上流域のイパチンガに立地し、設立からまだ間もない段階にある入植地について考察する。そこでの土地利用状況に注目することで、公式に設立された入植地においても、占有がいかに在地の必要に即した実用的行為として実践されているのかを検討する。
第6章では、ジュルエナ川中流域のクプアスーに立地し、設立から長期間の年月が経過した大規模な入植地に注目し、入植地の全体的な発展過程について、先行する各章で観察された諸事例との比較を通じて考察する。
終章では、各章の民族誌から得られた知見の総括的な分析を試みる。また、その作業を通じて得られた洞察をもとに、アマゾニアにおける市民権の生態学的動態が、我々自身に対して、どのような問題を投げかけているのか、筆者の見解を提示する。
上記内容は本書刊行時のものです。