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教育とエンパワーメント
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年12月31日
- 書店発売日
- 2021年1月28日
- 登録日
- 2020年12月24日
- 最終更新日
- 2023年4月4日
紹介
教育におけるジェンダー問題は、公平さをいかに図るか、公平さとは何かという問いをめぐり展開している。本書ではムスリム女性の教育の歴史と現状から、教育における女性像や家族像、社会に埋め込まれたジェンダーに至るまでを各地域の事例をもとに考察する。
目次
「イスラーム・ジェンダー・スタディーズ」シリーズ刊行にあたって――3『教育とエンパワーメント』
はじめに
第Ⅰ部 【歴史編 女子教育のための改革・思想・運動】
第1章 公平と配慮――オスマン帝国とトルコ共和国における教育と性差[長谷部圭彦]
コラム1 女子教育と女性教師の伝統――オスマン帝国の場合[秋葉淳]
第2章 イランにおける近代女子教育の成立[山﨑和美]
第3章 戦間期(1918~39)の仏領アルジェリアにおけるムスリム女性解放に関する言説――原住民小学校教員組合の機関誌分析から[マルコ・ソッティーレ]
コラム2 ビント・シャーティウ――近代と伝統のはざまで[池田美佐子]
第4章 マレー・ムスリムの女子教育はなぜ必要とされたのか――世紀初頭から1960年代までのマラヤにおける女子教育観の錯綜[久志本裕子]
第5章 インドネシアにおけるムスリマのためのスカウト運動の誕生と展開[服部美奈]
第6章 エジプトのイスラーム女子教育――アズハル系女子学校教員の語り[内田直義]
第Ⅱ部 【現状編 社会変容と教育】
第7章 トルコにおける「敬虔なムスリム女性運動」――宗教学校とスカーフ着用をめぐる二つの流れ[イディリス・ダニシマズ]
コラム3 イスラームにもとづくセクシュアリティ教育教材の開発――オランダにおけるムスリムの挑戦[見原礼子]
第8章 庶民の夢は潰えたのか――エジプトで進む教育のダブルスタンダード化[鳥山純子]
第9章 カタールにおける欧米系外国大学分校とイスラーム女子学生の就学[中島悠介]
コラム4 ジェンダーギャップ最下位の国――イエメン[大坪玲子]
第10章 バングラデシュへき地農村におけるジェンダー格差解消への課題――教育普及後20年の追跡調査から[日下部達哉]
第11章 マレーシアの公立大学における「リバース・ジェンダー・ギャップ」――進む女性の高学歴化、その光と影[鴨川明子]
第12章 インドネシアの「家族の肖像」――小学生用教科書の中のジェンダー[小林寧子]
コラム5 インドネシアのモスクにおける学習活動とともに生きる女性たち[中田有紀]
コラム6 ウズベキスタンにおける女性の学習とコミュニティー活動[河野明日香]
第13章 中国における女性のためのイスラーム教育――差別を超える処方箋か?[松本ますみ]
コラム7 アフガニスタン女子教育支援の経験[原智佐]
前書きなど
はじめに[服部美奈・小林寧子]
本書の目的は、地域に精通した専門家が描き出すそれぞれの地域の豊かな事例を通して、イスラーム世界における女子教育の実像、イスラーム教徒(ムスリム)の教育をめぐる活動をいきいきとした形で社会に発信することにある。本書のタイトルを「教育とエンパワーメント」としたのは、知の獲得が人々をエンパワーする動力となること、そして実際に学んだその知を活かすことによって女性たちが自らのおかれた状況を意識化し、自らの人生を一層豊かに生きられるようになることを示したいという思いがあったためである。
教育は、次世代に対する人々の思いが最もよく表れる営みである。18世紀以降に始まる近代学校教育の世界的な浸透は、人々の学びのあり方や知の形態を大きく変えた。近代学校教育の普及は必ずしも良いことばかりではなく、逆に失われていく学びや知の形態もある。しかし、教育というツールが、ムスリム女性に新たな未来をもたらす契機となっていることは確かであるように思われる。女性たちの生き方やそれぞれがおかれた社会的背景は一括りにできない多様性があるが、女性に対する作られたまなざしや期待、固定化された役割のなかに女性を留めおこうとする社会構造があるなかで、制限を受けつつも女性が主体的に選び取っていく姿が本書には随所に表れている。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。