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コロナ禍における日米のNPO
増大するニーズと悪化する経営へのチャレンジ
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年11月30日
- 書店発売日
- 2020年11月30日
- 登録日
- 2020年11月6日
- 最終更新日
- 2021年4月13日
紹介
世界的なコロナ禍の中、日本のNPO・ボランティア活動はどのような影響を受け、どのような社会的役割を果たしているのか。教育、生活困窮者支援、舞台芸術といった現場に密着し、アメリカとの比較も含め詳細に分析し、今後への問題提起を行う。
目次
はじめに
第1章 感染確認直後から始まった支援や啓発の動き[柏木宏]
1)友好都市やビジネス関係をベースにした支援
2)在留中国人団体による「武漢加油」の動き
3)「緊急支援活動」を実施したNGO
4)「桃を投じて李に報ゆ」の精神
5)ヘイトクライムの続発と人権団体の対応
6)コロナ禍の「インフォデミック」への取り組み
おわりに
第2章 NPOに甚大な影響を与えた臨時休校措置と非常事態宣言[柏木宏]
1)タイムラインでみる感染拡大と政府の対策
2)臨時休校による子どもへの深刻な影響とNPOの「先駆性」
3)各地の子ども食堂への臨時休校の余波
4)「ステイホーム」が生み出した問題
5)コロナ禍による活動継続の困難さと深刻化するNPOの経営
おわりに
第3章 ポスト緊急事態宣言におけるNPOの役割と課題[柏木宏]
1)コロナ禍による経済危機と社会経済活動再開に向けた対策
2)地域経済の活性化に寄与するNPO
3)危機脱出に向けたイベントなどのオンライン化
4)解雇・雇止めなどから働く人々を守る労働相談
5)「スペシャル・ニーズ」への対応の重要性
6)医療従事者や感染者への差別と偏見
おわりに
第4章 調査研究が導く新たな活動や資金調達、政策提言[柏木宏・古山陽一]
1)コロナ禍のNPOへの影響を把握する調査活動
2)調査を通じて汲み取ったニーズから新たな活動の展開
3)必要な情報を掲示したポータルサイトの開設
4)迅速な対応が際立った、助成財団
5)急激な広がりをみせたクラウドファンディング
6)政策提言の実現に寄与した調査研究
まとめ:注目すべき調査研究活動の広がり
7)コロナ禍でNPOが直面した課題と対応策:アンケート調査による考察
まとめ:NPO活動の停止が与える社会的影響
第5章 コロナ禍における生活困窮者とNPOの支援[藤原望]
1)生活困窮者自立相談支援機関から考えるコロナ禍と生活困窮
2)新型コロナウイルスと不登校・ひきこもり・若者支援
3)子どもの学習や生活支援活動に与えた影響
4)釜ヶ崎から考える新型コロナウイルスと生活困窮者支援
おわりに
第6章 舞台芸術活動へのコロナ禍の影響[井上美葉子]
1)コロナ禍で延期を強いられた京都国際舞台芸術祭
2)地域の芸術文化活動における危機管理とネットワーク
3)地域における舞台芸術フリーランスの現状
おわりに
第7章 コロナ禍のアメリカにおけるNPOの活動[柏木宏]
1)社会経済活動の再開へのシフトがもたらした悲惨な状況
2)ヘイトクライムに対峙したアジア太平洋系のNPO
3)失業と貧困、家賃不払い
4)危機に直面するNPOとボランタリーな力の発揮
5)助成財団や企業によるNPOへの支援
6)政策要求活動の意義と課題
おわりに
終章 コロナ禍のNPO:存在価値と残された課題[柏木宏]
1)アメリカとの比較を通じた検討の意義
2)コロナ禍で示されたNPOの存在価値
3)「ポストコロナ」の時代に残されたNPOの課題
【巻末資料】 時系列でみる新型コロナウイルスの感染拡大状況と政府の政策、NPOの動き
前書きなど
はじめに
「原因不明の肺炎」が中国の武漢で確認されたのは、2019年12月のことだ。翌年の1月14日、世界保健機関(WHO)は、「新型コロナウイルス」を確認した。これ以降、世界は、「コロナ禍」との厳しい闘いを強いられていく。
とはいえ、世界中の国が歩調を合わせて、感染防止に取り組んだわけではない。感染状況が大きく異なったことが、その要因のひとつだろう。
では、日本は、どうなのか。
(…中略…)
このため、本書は、大きく3つの部分で構成されている。最初は、新型コロナウイルスの感染拡大にともなうNPO全体の動きを検討していく部分である。とはいえ、情報の収集と整理、分析の能力が限られているうえ、時間や文字数の制約もある。
これらの点を踏まえ、「臨時休校要請以前」、「緊急事態宣言の解除まで」、「その後」と大きく3つの時期にわけて、さまざまなNPOの活動や運営について検討していくことにした。第1章から3章までが、これにあたる。これにより、コロナ禍におけるNPOの多様な活動が理解され、NPOの社会的な役割が再認識されるのではないかと思っている。
第1章から3章までを総論と考えると、第4章と5章、6章、7章は、各論にあたる。本書全体からみると、第2の構成部分となる。第4章は、「調査研究」をキーワードにして、コロナ禍においてNPOがどのようにサービスを展開、活動に必要とする資金の獲得、そして課題の解決に向けた政策提言などを進めていったのかについてみていく。第5章は「生活困窮者」、第6章は「舞台芸術」を、それぞれのキーワードにして、NPOなどによる個別具体的な動きを事例として取り上げる。
第7章では、コロナ禍におけるアメリカのNPOの活動や課題をみていく。海外の状況を知ることで、日本の現状や課題がより客観的に理解できるのではないかと考え、本書に含めることにした。実際、ヘイトクライムや休校にともなう子どもへの影響、経済の悪化による雇用不安など、日本と同じような問題が生じている。また、NPOの多くが経営難に陥ったことも同様だ。こうした課題に対して、アメリカのNPOがどう対応したのか、みていくことにする。
本書の最後の構成部分である、終章では、7章までの内容も含め、コロナ禍においてNPOがどのような役割をはたしつつも、課題を抱えているのかについて整理、分析していく。また、今後、NPOがどのような役割を担うべきなのか、そのためにNPOに関連する制度などがどのように形成される必要があるのか。こうした「ポストコロナ」における、NPOセクターのあり方についても考えていく。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。