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無意識
うんこの名の隠喩
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年11月10日
- 書店発売日
- 2020年11月10日
- 登録日
- 2020年10月23日
- 最終更新日
- 2021年4月13日
紹介
社会の在り方を根底的に問うてきたシリーズ三作目は、より人間の内面に踏み込み、「無意識」とは何かを、フロイトの肛門期理論に端を発し古今東西の神話・習俗・宗教・哲学に表れる「うんこ」の多義性を軸に考察し、現代資本主義の抑圧からの解放を模索する。
目次
プロローグ
第1章 無意識と去勢
1 鏡像段階
2 エディプス期の去勢
3 肛門期の去勢
4 最初のシニフィアン
5 グレート・マザー
6 他者の欲望
第2章 無意識とファルス
1 ファルス
2 うんこの神
3 黄金信仰
4 ペニス信仰
5 蛇信仰
6 穢れ
第3章 母性と父性
1 古代の古層
2 地母神の闘争
3 トーテム信仰
4 家産制と封建制
5 母性原理の残存
6 救済宗教としての仏教
7 救済宗教としてのキリスト教
8 魔女狩り
9 山姥
第4章 エロスとタナトス
1 空の世界
2 識の世界
3 真言の世界
4 道の世界
5 生成と流動の世界
6 欲望と幻想の世界
7 バナナフィッシュ
第5章 ファルスの覚醒
1 プロテスタンティズムと資本主義
2 タナトスと資本主義
3 エロスの活用
4 資本のヘゲモニー
5 腐朽化の果てに
6 死の恐怖
7 惜しみなき贈与のために
8 ニルヴァーナが再構築する世界
エピローグ
あとがき
参考文献
前書きなど
プロローグ
人間は無意識によって支配されている。意識によって支配されているのではない。別の言い方をすれば、意識は無意識によって支配されている。意識のなかでの思考や行動も、実は無意識にしたがっているのである。
意識は無意識を知ることができない。一方的に無意識にしたがうだけである。確かに、夢などを通じて、検閲つきで、その一部を垣間見ることはできる。しかし、意識が無意識を動かすことはできない。
無意識については、これまで多くの学説が提出されてきた。しかし、ほとんどどれも肝心なものが抜け落ちている。それは何かというと、うんこである。
うんこは通常、汚いもの、触れてはならないものとして忌み嫌われている。聞くだけでも、おぞましいとされている。いわばタブーとさえなっている。ほとんど毎日、付き合っているのにである。
しかし、タブーのなかにこそ、真実がある。にもかかわらず、うんこについては、無意識との関連では、ほとんど研究の対象にはされてこなかった。それほどまでに、おぞましいものなのであろう。
その一方で、うんこは直接的にではないにせよ、神聖なものとして崇められてもいる。例えば、黄金は人間を魅了してやまない。古今東西を問わずにである。それは、黄金がうんこの象徴だからである。
(…中略…)
もはや社会は、資本のヘゲモニーを維持できなくなってきている。それにより、綻びが生じてきている。その先にあるのは、互酬、惜しみなき贈与に基づいた、新しい市民社会ではないのか。また、そうであるべきではないのか。本書は、それを実現する上での、より内面に焦点をあてた考察でもある。
「シリーズあしたのために」に共通していることだが、本書においても、われわれの最初の共著書『ヘゲモニー・脱ヘゲモニー・友愛――市民社会の現代思想』〔二〇一一〕を下敷きに、原稿の執筆を断続的に進めてきた。以前、「神田デンケン」と称する勉強会において、参加者から、貴重な指摘、意見も多数いただいた。本書はそれらをもとにした、「シリーズあしたのために」の第三作目である。
無意識とは何か。父性と母性とは何か。エロスとタナトスとは何か。無意識におけるうんこの役割を解明することで、すべてが一直線につながっていく。
互酬、惜しみなき贈与を行うためにも、新しい市民社会を引き寄せるためにも、うんこを隠蔽していてはならない。
上記内容は本書刊行時のものです。