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アメリカ公共放送の歴史 志柿 浩一郎(著) - 明石書店
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アメリカ公共放送の歴史 多様性社会における人知の共有をめざして

発行:明石書店
四六判
272ページ
並製
価格 3,500円+税
ISBN
978-4-7503-5090-5
Cコード
C0036
一般 単行本 社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2020年10月25日
書店発売日
登録日
2020年10月12日
最終更新日
2020年11月25日
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紹介

アメリカには自治体や教育委員会、大学などが運営する数多くの非営利放送局があり、草の根的に公共放送を発展させてきた歴史がある。その背景に何があるのかを探り、教育や社会問題に対してコミュニティレベルで取り組むアメリカ社会の特質を浮き彫りにする。

目次

 まえがき

第一章 放送の誕生
 放送の起源
 通信技術への期待
 電気通信のはじまり
 有線から無線へ
 ハム・ムーブメント
 ハム・ムーブメントとアメリカ海軍
 教育機関によるラジオ放送
 商業放送の原点
 ネットワーク、スポンサー、ラジオ広告概念の誕生
 NBCとCBSの誕生

第二章 アメリカ公共放送前史
 放送の発展
 放送のあり方
 フーバーの放送政策失態と一九二七年無線法の成立
 非営利教育ラジオ放送
 教育放送推進組織の誕生
 大きな政府か小さな政府か
 教育放送に関する議論の衰退

第三章 アメリカ公共放送の誕生史
 アメリカの公共放送誕生
 テレビの普及とアメリカの放送産業
 へノックと教育放送
 へノックの経歴
 へノックの連邦通信委員会委員就任に対する反応
 へノックの描いた教育放送
 教育放送枠チャンネルの確保
 フォード財団と教育放送
 フォード財団の理念
 フォード財団の放送局への支援活動
 教育放送ネットワークの構築
 カーネギー教育テレビ検討委員会の提言
 カーネギー教育テレビ検討委員会の公共放送像
 一九六七年公共放送法の制定

第四章 アメリカ公共放送の不遇な成り立ち
 アメリカの公共放送発展史
 アメリカ放送産業の発展
 公共放送法の制定後
 リベラル・バイアスだ!
 自主規制と表現の自由
 財源の問題
 アメリカ公共放送の現在

第五章 公共ラジオ放送とコミュニティ・ラジオの誕生
 非営利公共ラジオ放送
 シマリングと教育ラジオ放送
 非営利教育ラジオ放送と公共放送
 シマリングとコミュニティ・ラジオ
 NPRの理念
 NPRとシマリング
 NPRのその後
 パシフィカ・ラジオの誕生
 ヒルの人生観
 ヒルの考えたラジオ放送の役割
 対話をする場の構築
 パシフィカ・ラジオの発展
 パシフィカ・ラジオとヒルの対立
 ヒルの死後
 シマリングとヒルが目指した人知の共有

第六章 もう一つの非営利放送
 コミュニティ・ラジオ
 PEGチャンネルとコミュニティ・メディア形成史
 PEGチャンネル義務化

終章 未完の理想像
 知識共有手段としての放送の誕生
 市民の知識レベル底上げの手段としての教育放送
 公共性の模索と公共放送の停滞
 戦後の公共放送再興

 あとがき
 索引

前書きなど

まえがき

 アメリカの放送というと、NBC、CBS、ABCおよびFOXからなる四大ネットワークという言葉を最初に思い浮かべる方が多いのではないだろうか。この他に日本の読者に馴染み深いのはケーブルテレビのニュース専門局CNN、そして近年はFOXニュースを聞いたことがある人もいるかもしれない。これらはどれも日本で言うところの民放にあたる商業放送である。最近では、大手メディア企業の出資による合弁事業体であるインターネット放送Huluや、インターネット動画コンテンツ配信サービス事業ネットフリックス(NETFLIX)を見ている人もいると思われる。
 NHKがある日本やBBCのあるイギリスと違って、アメリカの放送は商業放送が中心であると理解している人は多いだろうし、アメリカでは自由主義経済への信奉が強いことから商業放送の存在が大きくなったと考えている人もいることであろう。それは事実である。
 しかし一方で、アメリカには営利を目的としない小さな放送組織が様々な形で存在している。これらの小さな放送組織は、アメリカの放送の歴史の中で営々と命脈を保ってきており、弱小ではあるもののアメリカの放送の歴史を語る上で大きな役割を果たしてきた。非営利の放送組織の存在により商業であるか非商業かに関わらず、アメリカでは放送の社会的存在意義が問われ続け、放送の役割に関する議論が様々なレベルで続けられた。また、アメリカの放送は、商業目的とは無縁の各地の大学が始めた通信実験や無線愛好家の活動に起源を持っている。これらの事実は余り知られていないのではないだろうか。
 アメリカにおいて商業放送とは異なる非営利放送が形成されてきた背景には、放送が人知を共有するための優れたコミュニケーション・ツールとみなされてきた歴史がある。共通の理解やアイデンティティを形成することが難しいアメリカ社会においては、放送が、異文化間を超えることのできる人知を共有するための手段として捉えられてきた。社会問題解決への大きな期待が寄せられ、歴史的、文化的背景の異なる人々の集団で構成される社会を一つにし、社会を発展させるツールになると考えられたのである。そのため、特定の組織のみが放送を行うことは望ましくなく、政府からコントロールを受けるようなものであってはならないし、巨大資本を有する企業に独占されるようなものでも困ると考えられた。それゆえに、アメリカ社会では商業放送とは別に、商業放送を補完し、さらに、NHKやBBCのような国家的装いの放送とは異なる形の放送が求められた。しかし、現実にはそのような放送を実現させるのは容易ではなく、様々な考えの下、多種多様な試みが重ねられた。その積み重ねによって形成されたのが、アメリカの公共放送であり、商業放送の限界を補完することを期待され続けて今日に至っている。
 本書では、このようなアメリカにおける商業放送以外の放送の歴史を整理し、アメリカの公共放送の態様を明らかにする。

 (…中略…)

 本書では、第一章および第二章においてアメリカの公共放送前史を扱う。そこでは、アメリカにおける公共放送の起源にせまりつつ、アメリカの放送がいかにして誕生し、商業放送などの現在の形の放送産業がどのようにして形成されたのか俯瞰する。第三章および第四章において、アメリカの教育放送および公共放送の形成に関わった個人や組織が、どのような役割を果たしたのかを検討するとともに、現在に至るまでのアメリカの公共放送の成り立ちを辿る。第五章では、アメリカの公共放送のありように影響を与えたNPRとなるコミュニティ・ラジオおよびパシフィカ・ラジオの歴史を遡り、第六章において、パブリック・アクセス・チャンネルやメディア・アーツ・センターなどのコミュニティ・メディアの歴史を簡単に俯瞰した後、それがアメリカの公共放送の成り立ちとどのような関係があるのかを検討する。最後に、公共放送の役割や現在の放送産業のあり方、インターネットを利用した放送に関して、アメリカ放送史から、どのような示唆が得られるのかを論じる。

著者プロフィール

志柿 浩一郎  (シガキ コウイチロウ)  (

1984年熊本県生まれ。San Francisco State University, College of Creative Arts, Department of Broadcasting and Electronic Communication Arts 卒業。東北大学大学院情報科学研究科博士課程修了、博士(学術)。同志社大学アメリカ研究所助教を経て、現在、北里大学一般教育部講師。
主な論文・著書:「アメリカ公共放送史におけるFrieda Hennockの思想的遺産」『社会情報学』5巻2号、「アメリカ第一主義を掲げたローレンス・デイリーの放送の公平性論とイコールタイム・ルール改正」『同志社アメリカ研究』55号、ほか。共著に『日本のコミュニティ放送:理想と現実の間で(松浦さと子編)』(晃洋書房)、『被災地から考える3・11とテレビ(坂田邦子、三村泰一編)』(サンパウロ)。

上記内容は本書刊行時のものです。