版元ドットコム

探せる、使える、本の情報

文芸 新書 社会一般 資格・試験 ビジネス スポーツ・健康 趣味・実用 ゲーム 芸能・タレント テレビ・映画化 芸術 哲学・宗教 歴史・地理 社会科学 教育 自然科学 医学 工業・工学 コンピュータ 語学・辞事典 学参 児童図書 ヤングアダルト 全集 文庫 コミック文庫 コミックス(欠番扱) コミックス(雑誌扱) コミックス(書籍) コミックス(廉価版) ムック 雑誌 増刊 別冊 ラノベ
吸血昆虫ブユの不思議な世界 高岡 宏行(著) - 明石書店
.

吸血昆虫ブユの不思議な世界 謎めいた新種の発見と新興寄生虫感染症の解明

発行:明石書店
四六判
232ページ
上製
価格 2,700円+税
ISBN
978-4-7503-5063-9
Cコード
C0045
一般 単行本 生物学
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2020年9月30日
書店発売日
登録日
2020年8月27日
最終更新日
2020年10月1日
このエントリーをはてなブックマークに追加

紹介

失明の危険をともなうオンコセルカ症を媒介するブユとはどんな生き物か。熱帯アジアを中心に地球上で誰にも知られずひっそりと生き延びてきた小さな生命体・ブユの戸籍をつくる。発見・登録されても世間から注目されることはない昆虫を追い続けた研究の集大成。

目次

 口絵
 はじめに

第一章 研究のあらまし
 1 ライフワークとしてのブユ研究
 2 三つの研究課題と成果

第二章 ブユに出会うまで
 1 生い立ち
 2 鹿児島大学医学部へ就職
 3 医動物学とは
 4 二人の大先達(その1)
 5 二人の大先達(その2)

第三章 初めての新種ブユの発見と記載――南西諸島と九州の調査から
 1 ブユ幼虫と蛹の採集
 2 トカラ列島の新種ブユ
 3 与那国島の新種ブユ
 4 新種かどうかの見極め
 5 新種を記載する
 6 南西諸島のブユ
 7 バトエナンヨウブユは誤同定だった
 8 ヒロシマツノマユブユは未吸血でも卵を発育できる
 9 オオブユ属2種の変わった産卵方法
 10 ウマブユ亜属の種名の変遷
 11 タカハシウマブユの狭所交尾性

第四章 ヨナクニウォレスブユの仲間を求めて――フィリピンと台湾の調査から
 1 フィリピン群島の調査行
   ルソン島/ミンドロ島/ビサヤ諸島/パナイ島/ネグロス島/ボホール島/レイテ島/ミンダナオ島/パラワン島/フィリピンのブユのまとめ
 2 台湾の調査行

第五章 媒介ブユ対策を通じたオンコセルカ症制圧の試み――中米グアテマラの流行地へ
 1 グアテマラのオンコセルカ症研究の歴史
 2 グアテマラ事情
 3 オンコセルカ症対策研究プロジェクト
 4 オンコセルカ症の標高分布
 5 ブユ幼虫の寄生虫

第六章 オンコセルカ媒介ブユ種の調査――南米の流行地へ
 1 ベネズエラ南部アマゾナスの調査行
   右眼の異変/オリノコ川上流域のヤノマミ族/感染実験/スナノミとオンコセルカ感染
 2 ベネズエラ北部の調査行
 3 エクアドルの調査行

第七章 人獣共通オンコセルカ症の研究――一枚の病理標本から新興感染症の解明へ
 1 世界で第5例目の臨床症例
 2 オンコセルカ属の生活史
 3 日本のブユから初めてのオンコセルカ幼虫見つかる
 4 牛のオンコセルカ種と媒介ブユ種
 5 起因種はイノシシ寄生性のオンコセルカ新種だった
 6 野生動物のオンコセルカ種
 7 媒介ブユ種と媒介可能ブユ種
 8 発生を予測する
 9 Serendipity偶然がもたらす幸運な発見

第八章 熱帯アジアのブユを探る
 1 インドネシアの調査行
   スラウェシ島北部/ジャワ島/再びスラウェシ島/スマトラ島/マルク諸島(ハルマヘラ島、アンボン島、セラム島)/イリアンジャヤ/小スンダ列島
 2 マレーシアのブユ
   半島部/サバとサラワク
 3 タイのブユ
 4 ベトナムのブユ

第九章 南太平洋のブユを探る
 1 ソロモン群島のブユ
 2 ブーゲンビル島のブユ

第十章 ブユの戸籍をつくる

 後記
 参考文献
 索引

前書きなど

はじめに

 思わぬ縁からブユという吸血性小昆虫の研究を始めて早や50年。時と人の運に恵まれながら夢中で駆けてきた。この本は、今は年老いた一介の医動物学研究者が、この節目の年に、ライフワークともなったブユ研究の歩みを記憶の薄れる前に書き留めておきたいとの思いから、折々に体験したエピソードを交えながら綴ったものである。
 内容は、中南米におけるブユが媒介するオンコセルカ症(回旋糸状虫症ともいう)という病気の研究や制圧対策を目的とした学術調査や国際医療協力プロジェクト、ブユが媒介する人獣共通オンコセルカ症患者の日本(アジア)での初めての発見とその病原体や媒介ブユ種の解明、これに関連したタイにおける人獣共通オンコセルカ症の予知的研究、さらに、これまで誰も手がけなかった熱帯アジアのブユ相(熱帯アジアに分布するブユの全種類)の探究を中心にしたもので、熱帯寄生虫学や衛生動物学分野の研究者を除けば、我が国ではあまり注目されなかった研究課題だ。しかし、我が国でこれまで顧みられなかった研究でも、世界的にみれば重要で意義のあるものも多い。
 ブユの研究を始めるきっかけとなった大先達との出会い、初心者としての試行錯誤、国内外の野外調査の醍醐味、多彩な新種ブユの発見と驚き、そして数々の失敗も、どれも私の心に残る。
 人の目を惹く美しい蝶や甲虫とちがい、ブユは地味で目立たない小昆虫の一つだ。そんなブユでも顕微鏡で覗いてみると、そこには肉眼では見えない未知の魅力的な世界が拡がる。
 人の病気との関わりも含めそんなブユの世界とそれに向きあってきた研究者の姿がうまく伝われば幸いである。

   2020年5月1日 高岡宏行

著者プロフィール

高岡 宏行  (タカオカ ヒロユキ)  (

大分大学名誉教授、日本衛生動物学会名誉会員、日本熱帯医学会功労会員、医学博士。
大分県由布市に妻と二人暮らし。1945年熊本県菊池市生まれ。
濟々黌高校卒業。九州大学理学部生物学科卒業。同大学大学院理学研究科生物学専攻中退。
鹿児島大学医学部医動物学講座助手、講師。大分医科大学医学部(後に大分大学と合併)助教授、教授。マレーシア国立マラヤ大学理学部生物科学研究所教授、同大学熱帯感染症研究教育センターリサーチフェロー。
第38回日本衛生動物学会賞(1995年)、第2回宮崎一郎研究奨励賞(1996年)受賞。
『昆虫による病原体伝播のしくみ』(1997年、南山堂)、『Blackflies and Parasitic Diseases』(2016年、マラヤ大学理学部生物科学研究所)など21編の単行本(共著、分担も含む)、『The Black flies (Diptera: Simuliidae) of Sulawesi, Maluku and Irian Jaya』(581頁、2003年、九州大学出版会)など、フィリピン、マレーシア、インドネシア、タイ、ベトナム、ネパールのブユの分類に関する英文モノグラフ9編、総説8編、英文原著論文346編(内、筆頭著者216編)。

上記内容は本書刊行時のものです。