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帝国の島
琉球・尖閣に対する植民地主義と闘う
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年7月31日
- 書店発売日
- 2020年7月31日
- 登録日
- 2020年7月17日
- 最終更新日
- 2021年4月16日
紹介
尖閣諸島の領有は、日本帝国による琉球併呑の延長線上にあった。今日なお、尖閣の領有を主張することは、近代日本の膨張主義を克服できていないに等しい。国際法、地理学、歴史学……あらゆる学問を動員して作り上げた近代日本帝国の植民地主義を、琉球独立の視点から根底的に批判する脱植民地化の道。
目次
はじめに
Ⅰ 日本政府はどのように琉球、尖閣諸島を奪ったのか
1 植民地主義を正当化する「無主地先占」論
2 尖閣日本領有論者に対する批判
3 「無主地先占」論と民族自決権との対立
4 琉球、尖閣諸島は「日本固有の領土」ではない
5 歴史認識問題としての尖閣問題
Ⅱ 日本帝国のなかの尖閣諸島
1 日本による尖閣諸島領有過程の問題点
2 他の島嶼はどのように領有化されたのか
3 山県有朋の「琉球戦略」と尖閣諸島
Ⅲ 尖閣諸島における経済的植民地主義
1 古賀辰四郎による植民的経営としての尖閣開発
2 寄留商人による琉球の経済的搾取
3 油田発見後の日・中・台による「資源争奪」
4 「県益論」と「国益論」との「対立」
5 琉球における資源ナショナリズムの萌芽と挫折
6 稲嶺一郎と尖閣諸島
7 なぜ今でも尖閣油田開発ができないのか
Ⅳ サンフランシスコ平和条約体制下の琉球と尖閣諸島
1 サンフランシスコ平和条約体制下における琉球の主権問題
2 アジアの独立闘争に参加した琉球人
3 戦後東アジアにおける琉球独立運動
4 李承晩による琉球独立運動支援
5 日本の戦後期尖閣領有論の根拠
6 なぜ中国、台湾は尖閣領有を主張しているのか――その歴史的、国際法的な根拠
Ⅴ 日本の軍国主義化の拠点としての尖閣諸島と琉球
1 地政学上の拠点としての尖閣諸島
2 尖閣諸島で軍隊は住民を守らなかった
3 八重山諸島の教科書選定と「島嶼防衛」との関係――教育による軍官民共生共死体制へ
4 教科書問題、自衛隊基地建設、尖閣諸島のトライアングル
5 沖縄戦に関する教科書検定問題と日本の軍国主義化
6 琉球列島での自衛隊基地建設と尖閣問題との関係
Ⅵ 琉球人遺骨問題と尖閣諸島問題との共通性
1 学知の植民地主義とは何か
2 琉球における学知の植民地主義
3 皇民化教育という植民地主義政策
4 天皇制国家による琉球併呑140年――琉球から天皇制を批判する
5 琉球人差別を止めない日本人類学会との闘い
6 京大総長による「琉球人差別発言事件」の背景
7 どのように琉球人遺骨を墓に戻すのか
Ⅶ 琉球独立と尖閣諸島問題
1 琉球人と尖閣諸島問題との関係
2 琉球の脱植民地化に向けた思想的闘い
3 尖閣帰属論から琉球独立論へ
4 尖閣諸島は琉球のものなのか
5 「日本復帰体制」から「琉球独立体制」へ
6 どのように民族自決権に基づいて独立するのか
注
索引
あとがき
前書きなど
はじめに
(…前略…)
本書の第一の学術的な独自性は、琉球の脱植民地化、民族自決権という観点から分析した、初めての尖閣諸島問題研究であり、日本の「固有の領土」論を歴史、社会、経済、国際法の各観点から批判したことにある。日本の「固有の領土」論を主張する、日本における全体主義的、画一的な言論、研究状況に一石を投じるとともに、同論を根拠にして琉球列島における軍事基地機能の強化を進める、日本政府の軍国主義政策を批判する。
尖閣諸島には、石垣市登野城の番地が付与されている。2020年6月、石垣市議会は同諸島の字名を「登野城尖閣」に変更する議案を採択した。本書は、石垣島生まれの琉球人研究者が、琉球独立論の立場から尖閣の日本領有論を批判する最初の著書となる。日本による尖閣領有問題は、現在進行形で展開されている琉球の軍国主義化、教科書問題、琉球人遺骨返還運動、独立運動等と密接に関係している。本書は、琉球の脱植民地化、脱軍事基地化を進めるために、尖閣諸島や琉球に対する日本の帝国主義、植民地主義を批判的に検討する。
本書において、尖閣諸島問題を、「島は誰のモノか」という国民国家の所有権をめぐる問題としてではなく、歴史認識問題、日本の帝国主義問題として考え、琉球の脱植民地化、独立にとって鍵となる問題として真正面から取り組みたい。
上記内容は本書刊行時のものです。