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ケースで学ぶ 司法犯罪心理学 熊上 崇(著) - 明石書店
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ケースで学ぶ 司法犯罪心理学 (ケースデマナブシホウハンザイシンリガク) 発達・福祉・コミュニティの視点から (ハッタツフクシコミュニティノシテンカラ)

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発行:明石書店
A5
288ページ
並製
価格 2,400円+税
ISBN
978-4-7503-5009-7   COPY
ISBN 13
9784750350097   COPY
ISBN 10h
4-7503-5009-5   COPY
ISBN 10
4750350095   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0011  
0:一般 0:単行本 11:心理(学)
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2020年6月30日
書店発売日
登録日
2020年6月22日
最終更新日
2021年4月16日
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紹介

犯罪・非行の加害者・被害者の心理や少年法・刑法等の法的手続きの理解から心理的支援までを概説。特に、発達障害や虐待的環境等に起因する少年非行や刑事事件をはじめ、家事・民事分野における離婚、面会交流、養育費、親権等についてもケーススタディで取り上げ、より実証的な思考と理解を目指した一冊。

目次

理論編

第1章 少年・刑事事件
 1.犯罪心理学のアプローチ
 2.司法(Forensic)とは
 3.少年事件の手続き
 4.国内外の少年法制
 5.日本の少年法の歴史
 6.非行の原因は何か――コホート研究から
 7.日本の犯罪に関する統計
 8.少年非行と家庭環境
 9.少年非行と被虐待経験
 10.少年非行と知能
 11.少年非行と学習習得度
 12.少年非行とLD(学習症)
 13.少年非行とASD(自閉スペクトラム症)
 14.非行・犯罪の「予防」とは
 15.非行・犯罪をした人への「支援」とは
 16.高齢者と触法行為
 17.地域生活定着支援事業
 18.犯罪の防止は可能か
 19.治療的法学と司法福祉

第2章 家事・民事事件
 1.家事・民事事件からのアプローチ
 2.離婚の制度・法的諸問題
 3.面会交流
 4.面会交流を「原則的に」実施すべきか否か
 5.親権
 6.子どものための面会交流
 7.養育費制度の諸問題
 8.子どもを育てるのは,親か社会か
 9.後見

第3章 心理アセスメントとチーム支援
 1.BPSモデル
 2.新幹線内殺傷事件をBPSモデルで考える
 3.さまざまな心理テスト
 4.長所活用型アセスメントと支援
 5.司法心理アセスメントの情報共有の問題
 6.心理アセスメントのフィードバック

ケース編

第4章 少年・刑事事件編
 ケース1 県営住宅の家賃が払えずに中学生の娘を殺してしまった母親のケース――千葉県銚子市~ソーシャル・サポートの理論と実際
 ケース2 祖父母を殺害した少年のケース――埼玉県川口市~虐待された子どもの心理と支援
 ケース3 親から放任されてぐ犯行為(家出)を繰り返す少年のケース――埼玉県寄居町の補導委託「寄居少年塾」
 ケース4 校内暴力を繰り返す中学生のケース――心理教育アセスメントを活用した長所活用型支援
 ケース5 元名大生による放火・薬物投与ケース――自閉スペクトラム症(ASD)の人による触法事件の理解(1)
 ケース6 埼玉県朝霞市の女子中学生誘拐ケース――自閉スペクトラム症(ASD)の人による触法事件の理解(2)
 ケース7 鉄道マニアの少年の窃盗ケース――父母がASD傾向の自閉スペクトラム症(ASD)の人による触法事件の理解(3)
 ケース8 いじめを受けた中学生による校内での窃盗ケース――自閉スペクトラム症(ASD)の人による触法事件の理解(4)
 ケース研究特別編 神戸児童連続殺傷事件 4つの手記から考える――少年Aの手記,母親の手記,被害者遺族の手記,担当裁判官の手記 少年の精神鑑定とは,被害者学とは
 ケース9 家庭内暴力により少年院送致された少年のケース――地域生活定着支援とは

第5章 家事・民事事件編
 ケース10 別居している子どもに会いたい,歌手岩崎宏美さんのケース――親権と面会交流とは
 ケース11 別居親から子どもの養育費が送金されないケース――子育ては,親の責任か社会の責務か
 ケース12 高齢者を地域で支える市民後見人のケース――品川区における成年後見
 ケース13 子どもの意思を尊重する面会交流ケース――自閉スペクトラム症(ASD)を持つ子どもと家族
 ケース14 子どもへの虐待と児童福祉法28条ケース――発達障害のある子どもへの虐待と,家族への支援
 ケース15 ネグレクトにより貧困に陥った高校生のケース――社会資源とつなげるユースソーシャルワーカーの役割

終章 司法犯罪心理学とは何か? 生きづらさ,困難を抱える人々への支援とは~ Go to the people, Go to the community ~

前書きなど

はじめに

 (…前略…)

 筆者は19年間にわたり,家庭裁判所調査官として少年・家事事件を担当していた。多くのケースで親の離婚,ギャンブルやアルコールなどの依存症問題や離婚後の養育費が支払いされず,親が生活費に窮して昼夜働かざるを得なくなり,結果的に子どもが放置され,次第に夜遊びなど非行化していく様子を見てきた。また,多くの少年が家庭や学校から疎外され,心にさみしさを抱えており,それを埋めるために不良交友や夜遊びをしていた。さらに発達障害を有する少年事件のケースでは,幼少期から障害が見過ごされたため適切な支援がなされないまま推移し,思春期以降にいじめ被害などの二次障害が生じ,社会への恨みや反感につながるケースもみられた。このことから,司法犯罪心理学は,事件の表面を見るだけでなく,社会からの疎外状況や,障害および支援の有無,ソーシャル・サポートの在り方についても研究・提言をしなければならない。

司法犯罪心理学
 司法犯罪心理学と聞くと,多くの人が,少年事件や刑事事件を思い起こすであろう。実際に,公認心理師試験に先立って実施された現任者講習会でも,司法犯罪分野では少年法などの手続法の説明が多く,受講生はなじみのない法的手続きの理解に苦慮していた。一方で現任者講習会では,触法行為をした精神障害を持つ人の社会復帰のための医療観察法などの説明も行われていた。
 「司法犯罪心理学」は,少年法の手続きや犯罪をした人の心理を理解するだけでは十分ではない。公認心理師が出会うであろう困難を有する家族や個人は,離婚や養育費,後見など司法分野の問題を抱えている人も多い。その人たちへのサポートやアセスメント,支援者へのコンサルテーション(相談)を遂行していくうえで,法律だけでなく,家族や親子の問題などの背景を知り,どのような個別的あるいは社会的支援を行っていくかを知る必要がある。

本書の特色:刑事・少年事件だけでなく,家事・民事事件も
 本書は「司法犯罪心理学」のテキストとして,少年非行や刑事事件だけでなく,家事・民事分野における離婚,面会交流,養育費,親権,後見についても取り上げている。なぜならば,触法行為の背景には本書ケース編のケース1や2にもあるように,養育費の支払いが滞って貧困状態に陥り事件に至るなど福祉的手当が必要なケース,親権者の争いに巻き込まれる子どものケース,別居親と子どもとの面会交流のケース,認知症や知的障害などにより,身の回りの監護や財産管理が問題になるケースが相当数あるからである。また,離婚や親権,養育費や面会交流のトラブルは非行・犯罪だけでなく,職場生活や家庭生活の不調,メンタルヘルスに及ぼす影響も大きい。
 すなわち,「司法」分野とは,触法行為の話だけではなく,誰の身にも起こりうる家族や個人の生涯を通じて直面する困難とも関係する,身近な問題を扱う分野なのである。
 そのことをふまえたうえで,心理職が行う支援は,

 1.家族や個人などへのミクロ・レベルへの支援
 2.学校や児童相談所,医療機関などの連携を図るメゾ・レベルの支援
 3.社会にも働きかけるマクロ・レベルの支援

の3段階がある。
 これまで心理職は,個別のアセスメントや関係機関の連携・支援を中心としてきたが,これからは,チーム支援会議をコーディネートする能力や,社会制度の不備や改革にも声をあげていかなければならないと筆者は考える。
 たとえば,カジノ関連法案が国会で成立したが,公認心理師として,個別のギャンブル依存症への支援だけでなく,カジノやギャンブル場をなくす取り組みも行っていく必要があろう。

 (…後略…)

著者プロフィール

熊上 崇  (クマガミ タカシ)  (

1970年生,立教大学文学部教育学科卒業後,家庭裁判所調査官として,札幌,いわき,東京,川越,横須賀で計19年勤務。その間,社会人大学院生として筑波大学大学院教育研究科リハビリテーションコース修了(修士:リハビリテーション),筑波大学大学院人間総合科学研究科生涯発達科学専攻修了(博士:リハビリテーション科学)。2010年日本LD学会研究奨励賞。
2013年4月より立教大学コミュニティ福祉学部助教,2018年4月より和光大学現代人間学部心理教育学科教授。専門は司法犯罪心理学,発達障害学。特別支援教育士スーパーヴァイザー,公認心理師。
【主な著書】
『発達障害を有する触法事例の心理・発達アセスメント』(単著,明石書店,2015),『長所活用型指導で子どもが変わる・part5――KABC-Ⅱを活用した社会生活の支援』(編著,藤田和弘監修,熊谷恵子,熊上崇,小林玄編著,2016,図書文化),『発達障害者の理解と支援』(分担執筆,梅永雄二編著,福村出版,2010),『日本版KABC-Ⅱによる解釈の進め方と実践事例』(分担執筆,藤田和弘ほか編,丸善出版,2017)など。
【主な論文】
「広汎性発達障害を持つ非行事例の特徴」『精神神経学雑誌』108(4)327-336,2006.
「広汎性発達障害を有する非行事例の頻度と特徴」『LD研究』18(2),138-146,2008.
「広汎性発達障害を有する触法事例の文献的研究」『児童青年精神医学とその近接領域』第49(1),25-34,2009
「LD,ADHDの傾向を有する非行事例の頻度と特徴」『LD研究』18(3),274-283,2009.
「アスペルガー障害を有する触法少年の司法場面における行動特徴」『児童青年精神医学とその近接領域』50(1),16-27,2009.
「学習障害(LD)を有する少年非行に関する研究動向――日本と米国における,知能検査・学習習得度・転帰・介入の調査結果を中心に」『LD研究』20(2),218-229,2011.
「発達障害者と司法上の支援」単著,『リハビリテーション研究』,139,26-31,2009.
「発達障害(特に自閉症スペクトラム)を有する触法事例の現状と課題」『リハビリテーション連携科学』15(2),12-20,2014.
「子どもへの心理検査の結果のフィードバック――実務者への質問紙調査の分析と「学習アドバイスシート」の作成」『K-ABCアセスメント研究』,18,79-88,2016.
「矯正施設から退所した障害を持つ人への地域生活定着支援」『立教大学コミュニティ福祉研究所紀要』,4,19-36,2017.
「心理検査の検査者は子どもにどのようにフィードバック面接をしているか――知能・発達検査の検査者への調査と「子どもへのフィードバック面接手順リスト」の作成」『KABCアセスメント研究』,20,27-39,2018.
「保護者は知能・発達検査の結果をどのように受けとめているか――親の会へのインタビュー調査の分析」『KABCアセスメント研究』,21,25-34,2019.
ほか多数。

上記内容は本書刊行時のものです。