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外国人労働者の循環労働と文化の仲介
「ブリッジ人材」と多文化共生
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年2月28日
- 書店発売日
- 2020年2月28日
- 登録日
- 2020年1月29日
- 最終更新日
- 2020年3月13日
紹介
インド人ITエンジニアのブローカリングの実態を調査し、ITエンジニア達が経済状況の調整弁として、移動し、切り離され、日本と海外の間の「循環労働」を行っていることを明らかにすると同時に、越境して働くエンジニアたちが日本と外国の組織のビジネス慣習、言語文化、生活習慣などの差異を調整する「文化の仲介」を担っている実態を分析する。
目次
はじめに
用語
序章 分析の枠組み
高度人材とは
高度人材の政策議論
循環労働
オンサイト・オフショアモデル
人月の神話
ブリッジ人材の仲介
仲介の二重性
仲介者の学び
生活における仲介と多文化共生
大学における人材育成――多文化共生に向けた仲介者
調査方法
第1章 エンジニアの国際移動と循環労働
インドにおけるエンジニアたちの選抜
コミュニケーションスキルの重視
自己責任
日本に行く
インドIT企業日本支店の苛立ち
インドIT企業の営業担当者による「仲介」
エンジニアという商品の仲介
「ジャストインタイム」な人材供給
ベンチング(待機)
中長期の労働を希望しても
切り離し
転職
循環労働
一人歩きする商品
インドに戻って――オフショア開発センターのエンジニアたちの声
距離感
「パートナーシップ」について
小括
第2章 ブリッジエンジニアの職場と仲介
職場の境界線
「グレーゾーン」
多重下請けとサバイバル
自己の証明
ブリッジエンジニアの仕事上のコミュニケーション
経験が浅く、短期で移動するブリッジエンジニアに対する苦情
仲介と学習
支援者
小括
第3章 地域での仲介と多文化共生
西葛西のインド人コミュニティーとITエンジニア
江戸川区のURに住む住民の例
仲介者のよぎについて
UR自治会とインド住民との話し合い
ごみの分別
URの老朽化と改修工事
騒音問題
集会を振り返って
小括――よぎの実践にみる仲介
よぎのその後の活動の広がり
おわりに
国際移動と循環労働
エンジニアの職場と仲介
生活の場での仲介
多文化共生に向けた仲介者の育成――多様な人々を「つなぐ」こと
参考文献
前書きなど
はじめに
(…前略…)
本書の構成は次のとおりです。まず序章で背景と全体の分析の枠組みを示します。そして第1章ではインドのITエンジニアたちの国際移動、プロジェクト単位の移動と労働の流れを分析します。第2章では、さらにエンジニアたちの職場に焦点を当て、職場環境(日本の顧客企業先の環境)に埋め込まれている多様な境界線とそれをめぐるせめぎあいを分析するとともに、彼らの仲介活動と学びを明らかにします。また今回新たに加えた第3章では、エンジニアたちの生活における仲介活動に視点を移し、インド人が多く住む東京都江戸川区において、インドのIT企業出身者プラニク・ヨゲンドラ氏(以下、敬称略、第3章では通称の「よぎ」と記す)がどのように地域住民とインド住民の間を仲介したのかを分析し、地域の外国コミュニティー出身のキーパーソンによる住民をつなぐ活動の意義を明らかにします(ヨゲンドラは2019年から江戸川区議会議員)。本書の最後では、職場、生活における「ブリッジ人材」の仲介活動の共通点を分析し、大学における多文化共生に貢献する、人と人とをつなぐ人材の育成について考えたいと思います。
本書が「高度人材」とよばれる人々の中の期限付きの労働者の移動や労働の実態を知る一助となり、また、「ブリッジ人材」とよばれる人々の職場、地域における仲介を理解するためのリソースとして、人材育成に生かしていくうえで参考になれば大変幸いです。
上記内容は本書刊行時のものです。