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インドの女性と障害
女性学と障害学が支える変革に向けた展望
原書: DISABILITY, GENDER AND THE TRAJECTORIES OF POWER
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年1月31日
- 書店発売日
- 2020年1月31日
- 登録日
- 2020年1月16日
- 最終更新日
- 2023年10月16日
紹介
女性であり、障害があることによって二重に周縁化される障害のある女性が現代インド社会を自律的に生きるための道筋を、ジェンダーの視点から検討した論集。障害の医学モデルから社会モデルへの転換を考察し、また障害女性の生活実態を踏まえ上で結婚・子育て、家族としての経験を描き出す。
目次
序[アーシャ・ハンズ]
謝辞[アーシャ・ハンズ]
日本語版に寄せて[アーシャ・ハンズ]
イントロダクション――ジェンダーの視点で障害をとらえる枠組[アーシャ・ハンズ]
第一部 ジェンダーの視点で障害をとらえる――諸問題とその概念化
第一章 ジェンダーの視点でとらえる障害学[ウパリ・チャクラヴァルティ]
第二章 障害のある女性はこの社会でどうやって暮らしているのか?[サティシュ・B・アグニホトゥリ&アムリタ・パテル]
第三章 心理社会的障害のある女性――医学的観点から社会的観点へ[ニリカ・メーロトラ&マヒマ・ナーヤル]
第二部 経験と行為主体性
第四章 私の内側は正常だが、外側の私の身体は正常でない![マリニ・チブ]
第五章 結婚した障害のある女性――矛盾に満ちた現実[サントシ・ハルダー]
第六章 障害のある母親の育児という旅路[サンジャ・リマエ]
第七章 発達障害と家族――インド都市部における自閉症スペクトラム障害[シュバンギ・ヴァイディヤ]
第三部 差別を乗りこえるための、ジェンダーの視点からの方略
第八章 現代インドの労働と障害におけるジェンダー構造――推論と経験に基づいて[レヌ・アッドラカー]
第九章 心理社会的障害のある人の法的能力と公民権[バーガヴィ・V・ダヴァール]
エピローグ――不可視性と不透明な方向性を変えるために[アーシャ・ハンズ]
訳者あとがき
監訳者・訳者紹介
編者・執筆者紹介
前書きなど
序
本書は、障害をめぐる政治の変革期に世に出る。タイトルが示すように、ジェンダーに基づく人と人の関係の在り方や、権力をめぐる軌跡が新たにつくり出されている、まさにこの時期に出版される。障害者権利条約(CRPD)は、全世界の障害に関する人権の条約であるが、ジェンダー平等で公正な人間としての在り方に関する新たな秩序を示している(第六条)。この新しい法的権利の枠組は、他の条約に強固に支えられている。すなわち、女性の権利に焦点をあてた、「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(CEDAW)」や、現在進行中の「北京+20」のプロセスなどである。世界中の国で、当該国の障害者法を障害者権利条約に沿って改正する試みが行われている。そのようなプロセスは容易に成し遂げられるものではなく、女性たちは、このような最近の法律において彼女らが排除されることがないよう注意深く見守っているところである。最近の動向としてもう一点あげられるのは、シミ・リントン(二〇〇六)やマリニ・チブ(二〇一一)、さらにシバニ・グプタ(二〇一四)に代表される、障害のある女性による著作が増加していることである。本の出版を通して、彼女らは、「個人的なことは政治的なことである」、という観点を形成することに貢献している。ジェンダー化された問題の概念化に向けて、このような著作家らは、ともに、本来自らが権利としてもっていたはずの政治的空間を取り戻すよう努力している。
世界中に、創造的な観点をもち、新しい政策を検討し、独自の著作や講演を始める多種多様な女性が出現しつつある。彼女らが発する不平等に対する疑問の声や、平等な社会をめざす議論は、障害者運動と女性運動の双方に活力を与えている。本書は、力強い女性と男性のグループにより産み出された。このグループは、批判的思考に基づいて著作活動を行い、その際、女性の声を引き出すことを重視する。現在、障害とフェミニズムの政治学の領域での勢力拡大に向けた議論が大いに期待されるところであり、実際にこのような議論が盛んに行われるようになっている。
女性に影響を与えるイシュー、すなわち、どこにでもある暴力、周縁化と不可視化に関する検討は、立ち現れてきた女性政治学のとり扱うところになってきているとはいえ、実際のところ長期間放置されてきた。国際的に、また国内で、新たに信頼できる平等の指針を作成することで、すべての男性と女性にとっての平等と正義を実現させるような新たな世界を構築する方法を提示することが求められている。
本書は、近年提起されてきたイシューをフェミニスト思想家が熟考したもので、一〇の章から構成される。第一部ではジェンダー化された問題を概念化するために、ウパリ、アムリタとサティシュ、ニリカとマヒマが、障害学、収集したデータ、そして障害者の権利におけるパラダイムシフトなどの間の微妙なつながりについて論ずる。彼らは、我々の知識の集合体を転換し、我々の周囲の世界とのかかわり方に変革をおこしたいと願っている。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。