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中国社会の法社会学 高橋 孝治(著) - 明石書店
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中国社会の法社会学 「無秩序」の奥にある法則の探求

発行:明石書店
A5判
212ページ
上製
価格 3,000円+税
ISBN
978-4-7503-4948-0
Cコード
C0036
一般 単行本 社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2019年12月30日
書店発売日
登録日
2019年12月26日
最終更新日
2020年1月24日
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紹介

郵便事故や信号無視といった身近な問題やルポルタージュなども素材として、中国社会を法社会学的に考察。一見すると「法が守られていないように見える」中国で生じているさまざまな現象の法的根拠を探り、日本において広まっている俗説や誤解を打ち破る。

目次

 はじめに

第1部 中国における諸問題の法的構成

第1章 中国における外国人の教育を受ける権利――日中の公開教育に着眼して
第2章 中国で日本企業が経験した製造物責任法に関する理不尽な裁判
第3章 中国の少数民族刑事政策「両少一寛」の運用と効果に関する考察
第4章 中国における人権問題の2015年頃の動向――刑事拘束に着眼して
 コラム① 商船三井船舶差押え問題から見る中国の民事法運用
第5章 中国にとって租税とは何か――乱収費問題を素材として

第2部 中国における人間の行動の形成と法

第6章 中国における郵便事故――郵便関連法規の日中比較論
 コラム② 中国で春節が祝われることに関する法社会学初歩的考察
第7章 中国における信号無視――日中の道路の法社会学

第3部 ルポルタージュの中の中国と法

第8章 中国における劇場的法システムという試論――加藤隆則著『中国社会の見えない掟』に描かれた張暁麗事件を素材にして
第9章 女性差別問題に見る中国の選択性執法――福島香織著『潜入ルポ 中国の女』に描かれたエイズ村のインタビューを素材にして
 コラム③ 郭美美問題に見る中国の刑事法運用

 あとがき

前書きなど

はじめに

 (…前略…)

 本書は、大きく分けて3部構成となっている。第1部は、「中国における諸問題の法的構成」として、日本人の視点からすると一見奇異に見える中国で発生している現象の法的根拠を考察するという研究である。これは、「一見すると奇異に見える現象」という事実から出発し、そこにどのような法的根拠があるのか、なぜそのような一見すると奇異に見える現象を根拠づける「法」が存在するのかということを考察するものである。これはまさに「法的事実を観察してそこに法則的なものを見いだしていくもの」とする法社会学といえるだろう。
 第2部は、「中国における人間の行動の形成と法」として中国でよく見られる行動パターンが実は法によって作られたという側面があるのではないかということを考察する。本書では、第2部では特に中国における郵便事故(郵便が宛先に届かないこと)と信号無視、春節を祝うという慣習を素材にする。「中国では郵便事故や信号無視が日常的に行われている」といわれると、ついつい「中国人はモラルが低く、サービスが良くない」などといってしまうことがある。中国でサービスが悪いと感じた場合やマナーが悪いと感じた場合、このような説明がされることが多いように思われる。しかし、これはトートロジーであり、何の説明にもなっていない。なぜなら、なぜ中国ではサービスが悪いのかといえば「中国人はモラルが低いからだ」というのであり、なぜモラルが低いと分かるのかといえば、「中国ではサービスが悪いからだ」というのである。
 すなわち、このような説明をする場合、安易に国民性に求めるのではなく、別の理由を見つけなければならない。第2部ではそれが法制度に求められる側面があるということを示そうとするものである。伝統的行事や法文化についても「そのような原始社会や未開社会のものではなく、現代実際におこなわれているものであり、そのかぎりにおいて、現代の政治権力がこれを何らかの形で支持したか、あるいはすくなくとも完全なその消滅に努力をはらわなかったことの証である」といわれている。これはつまり、何らか特定の集団内における人間の行動に同一性が見られる場合、その集団に政治的権力を持つ者が積極的もしくは消極的にその行動を支持しているのではないか(=そのような(条文が存在するとは限らないものの)法があるのではないか)ということであり、それを示すのが第2部である。もちろん、法制度以外にも現実には様々な要因があるということは筆者も認める。あくまで、法制度がこのような一見するとモラルが低かったり、サービスが悪く見える現象の一側面を形作っているのではないかということを示すのが第2部である。
 そして、最後となる第3部は「ルポルタージュの中の中国と法」である。中国は残念ながら報道規制などが敷かれており、報道されているニュースなどだけでは中国で起きている全ての現象を知ることは困難である。このような通常では報道されていないけれども中国で起きている現象を知りたい場合にはルポルタージュなどが非常に役に立つ。しかし、ここには問題もある。ルポルタージュは真実を伝えることが目的だが、新聞報道や研究書に比べるとその度合いが落ちるということである。第3部では、中国に関するルポルタージュを素材に事実確認を行う。しかし、これらのルポルタージュにも取材の最中に見落とされている事実や意図的に削除された事実があるかもしれない。しかし、第3部では、これらルポルタージュに書かれていることが当該事件の全てであり、他の事実は一切存在しないと「仮定」して議論を進める。それは、当該ルポルタージュ以外では報道されていない「真実」を調査することはできないからである。しかし、このような他では情報が存在していない事件を素材にするという点から、ルポルタージュの内容のみを「真実」として議論を進めたとしても、研究の意義は失われないと考える。法社会学ではルポルタージュを素材とする有用性については既に言及されている。
 以上のような3部構成で、中国社会を素材に法社会学的考察を行うとするのが本書である。しかし、中国は広大であり、本書が言及できる「中国社会の法社会学」もごく一部、一側面にしか過ぎない。しかし、これら3つの部のような手法を試みた研究はこれまでにはなかったと考えられ、中国社会の新しい見方を示すという意味では、一側面ではあっても大きな意義はあると考える。
 なお、本書には、各章の他に「コラム」もある。これは「章を構成できるほどの内容ではないが、今後検討していくべき内容・考察しておくべき内容」である。

 (…後略…)

著者プロフィール

高橋 孝治  (タカハシ コウジ)  (

1984年 東京都生まれ。
2007年 日本文化大学法学部法学科卒業(学士(法学))。
    在学中、上海外国語大学に語学留学。
2009年 法政大学専門職大学院イノベーションマネジメント研究科アカウンティング専攻修了(会計修士(専門職・MBA))。
2011年 大学評価・学位授与機構より「学士(学芸)」取得(科学技術研究・数理思想史専攻)。

都内社会保険労務士事務所に勤務するも、中国法研究を志し、勤務の傍ら2012年放送大学大学院文化科学研究科社会経営科学プログラム修了(修士(学術)研究領域:中国法)。
のちに退職・渡中し、2017年中国政法大学刑事司法学院博士課程修了(法学博士)。
博士課程在学中、立命館大学、九州産業大学などで特別講義を担当。
台湾勤務を経て、現在、立教大学アジア地域研究所特任研究員、明治大学島嶼文化研究所客員研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員。

専門は、比較法(中国法・台湾法)、中国社会を素材にした法社会学。
行政書士有資格者、特定社会保険労務士有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。

「一虎一席」(2014年10月26日放送分、香港フェニックステレビ、中国・香港で放送)では日本国憲法について、「月曜から夜ふかし」(2015年10月26日放送分、日本テレビ)では中国商標法についてコメントし、『産経新聞』(2018年3月21日付)では中国の憲法改正についてコメントした。「高橋孝治の中国法教室」を『時事速報(中華版)』(時事通信社)にて2014年6月19日号から連載中。「日中友好新聞」(日本中国友好協会)、Webサイト「PRESIDENT Online」、Webサイト「KINBRICKS NOW」その他に寄稿多数。

〔本書の元となった論文以外の主な研究業績〕
『ビジネスマンのための中国労働法』労働調査会、2015年。
『中国年鑑2019』(共著)(一社)中国研究所(編)、明石書店、2019年。
(中国語)『日本學(第二十輯)』(共著)北京大学日本学研究中心(編)、中国・世界知識出版社、2018年。
「中国における公訴時効(訴追時効)制度を正当化する学説についての考察」『法學政治學論究』(111号)慶應義塾大学大学院法学研究科、2016年、70~100頁収録。
「高等教育における文理区分への疑義――法学と数学を素材にして」『科学・技術研究』(4巻2号)科学・技術研究会、2015年、189~196頁収録、科学・技術研究会第2回優秀論文賞受賞。
「社会変動の中の家族法改正――日中台比較の中の日本家族法」『日本研究』(30号)韓国・高麗大学校グローバル日本研究院、2018年、201~225頁収録。
(中国語)「中国追訴時効制度的背景――従古代中国法的観点」『理論界』(2015年1期)中国・遼寧省社会科学界聯合会、2015年、65~70頁収録。

上記内容は本書刊行時のものです。