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現代イギリスの児童虐待防止とソーシャルワーク 田邉 泰美(著) - 明石書店
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現代イギリスの児童虐待防止とソーシャルワーク 新労働党政権下の子ども社会投資・児童社会サービス改革・虐待死亡事件を検証する

発行:明石書店
A5判
360ページ
上製
価格 6,300円+税
ISBN
978-4-7503-4943-5
Cコード
C0036
一般 単行本 社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2019年12月25日
書店発売日
登録日
2019年12月20日
最終更新日
2020年1月24日
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紹介

イギリスの新労働党政権第二期以降(1997年~2010年)の児童社会サービス改革が児童ソーシャルワークにもたらした影響と変化を、ビクトリア・クリンビエとベビーPに関する2つの児童虐待死亡事件調査報告書を取り上げて論じる。

目次

 はじめに

序章 本書の概要と全体の構成
 〔1〕本書を読む前に――児童虐待死亡事件調査報告書とは何か
 〔2〕本書の構成

Ⅰ部 子ども社会投資の社会哲学的根拠とその実際

1章 子ども社会投資の社会哲学的根拠――ギデンズ、エスピン‐アンデルセンらの社会哲学を中心に
 〔1〕ギデンズの社会哲学
  (1)自己とは何か:自己アイデンティティ
  (2)社会とは何か:解放の政治から生き方の政治そして生成の政治へ
  (3)国家ヴィジョンとしての『第三の道:効率と公正の新たな同盟』
 〔2〕エスピン‐アンデルセン、ギデンズらの子ども社会投資の社会哲学
  (1)ヴァンデンブラウックの社会哲学:新たな社会民主主義のヴィジョン
  (2)エスピン‐アンデルセンの社会哲学:子ども社会投資戦略
  (3)ギデンズ、エスピン‐アンデルセンの子ども社会投資戦略
 〔3〕福祉国家の現代化における子ども社会投資の社会哲学的根拠とその意義

2章 子ども社会投資と福祉国家の現代化
 〔1〕福祉国家の現代化:子ども社会投資の積極的意義
  (1)グローバリゼーションにおける福祉国家
  (2)福祉国家の現代化:社会投資国家とは
  (3)イギリスにおける福祉国家の現代化:子ども社会投資と機会の平等
 〔2〕子ども社会投資とシティズンシップの変化:社会的権利モデルから社会投資モデルへ
  (1)社会的権利に基づくシティズンシップ
  (2)社会投資に基づくシティズンシップ
  (3)2つのシティズンシップの比較検討
 〔3〕子ども社会投資戦略の実際:児童貧困対策を中心に
  (1)ワークフェア(福祉から就労へ)
  (2)税制改革による再分配(勤労に報いる)
  (3)子育て総合支援対策(女性の就労支援と就学前早期予防介入)
 〔4〕子ども社会投資の意義と限界
  (1)児童貧困対策としての社会投資の意義
  (2)児童貧困対策としての社会投資の限界

Ⅱ部 ビクトリア・クリンビエ虐待死亡事件調査報告書とソーシャルワーク改革

3章 ビクトリア・クリンビエ虐待死亡事件とソーシャルワーク その1――イーリングとブレントにおけるビクトリアへの対応
 〔1〕児童社会サービス改革におけるビクトリア・クリンビエ事件の位置づけ
 〔2〕ビクトリア・クリンビエ虐待死亡事件の概要
  (1)ビクトリア、イギリスに渡る
  (2)虐待の兆候
  (3)虐待の強い疑い
  (4)ビクトリアの体調異変(失禁)
  (5)ソーシャルワーカーの対応
  (6)最後のビクトリア
 〔3〕ビクトリアへの対応におけるソーシャルワークの課題
  (1)イーリングのビクトリア
  (2)ブレントのビクトリア
  (3)小結:イーリングとブレントにおけるビクトリアへの対応

4章 ビクトリア・クリンビエ虐待死亡事件とソーシャルワーク その2――ハーリンゲイにおけるビクトリアへの対応
 〔1〕ビクトリアへの対応におけるソーシャルワークの課題
  (1)ハーリンゲイのビクトリア
  (2)小結:ハーリンゲイにおけるビクトリアへの対応
 〔2〕ビクトリア・クリンビエ虐待死亡事件の深層
  (1)構造/組織と専門職倫理の問題
  (2)ソーシャルワーカーの専門性の問題
 〔3〕ラミング報告書の勧告と構造改革の方向
  (1)構造/組織と職業倫理の問題
  (2)ソーシャルワーカーの専門性の問題
 〔4〕児童虐待死亡事件調査報告書とは何か:ラミング報告書のソーシャルワークヘの影響
  (1)ソーシャルワークの専門性の低下
  (2)調査報告書のソーシャルワークへの影響
  (3)ラミング報告書のソーシャルワークへの影響

Ⅲ部 ECMの理論とその実際

5章 緑書『すべての子どもはかけがえのない存在である』(Every Child Matters: ECM)の成立過程とその構想内容
 〔1〕ECMの成立に至るまで:早期予防介入の実現に向けて
  (1)90年代の予防介入:非行/少年犯罪の脈絡から
  (2)ブレア政権第一期の予防介入:社会的排除の脈絡から
  (3)ブレア政権第二期の予防介入:児童貧困の脈絡から
  (4)早期予防介入の成立に向けて:財務省の戦略
 〔2〕Every Child Matters: ECMとは
  (1)ECMの基本理念
  (2)ECMの改革案
 〔3〕ECMの地方改革プラン:アウトカムズ・フレームワークと児童トラスト
  (1)CfCと2004年児童法
  (2)アウトカムズ・フレームワーク
  (3)児童トラスト
 〔4〕ECMの到達点:これまでの整理

6章 コンタクトポイント・データベース(ContactPoint database: CPd)、共通アセスメントフレームワーク(Common Assessment Framework: CAF)、児童ケースファイル情報管理システム(Information Children’s System: ICS)が児童(虐待防止)ソーシャルワークに与える影響について
 〔1〕予防介入としてのCPd、CAF、ICS
 〔2〕CPd、CAF、ICSの目的と連携
 〔3〕CPd
  (1)CPdとは
  (2)CPdの導入過程:2004年児童法の前後
  (3)CPdのソーシャルワーク的課題
 〔4〕CAF
  (1)CAFとは
  (2)CAFの構成と内容
  (3)CAFの実際
 〔5〕ICS
  (1)ICSとは
  (2)ICSの構成と内容
  (3)ICSの実際
 〔6〕CPd、CAF、ICS:電子情報管理システムの根本問題
  (1)CPdの根本問題:社会統治における理念/価値観の喪失
  (2)CAF、ICSの根本問題:ソーシャルワークにおけるナラティヴの喪失
 〔7〕ソーシャルワークの原点:ナラティヴかデータベースか
  (1)データベース(情報)を中心とするソーシャルワーク
  (2)ナラティヴ(関係)を中心とするソーシャルワーク

Ⅳ部 児童性的虐待/誘拐殺害事件における政府、市民、メディアの対応

7章 ペドファイル(児童性愛者/集団)対策における予防管理の新しい意味
 〔1〕ペドファイル対策とは:家庭‐内‐虐待から家庭‐外‐虐待へ
 〔2〕イギリスにおける刑事司法法(性犯罪者対策)の変遷
  (1)1997年性犯罪者法(Sex Offenders Act 1997)
  (2)1998年犯罪及び秩序違反法(Crime and Disorder Act 1998)
  (3)2000年刑事司法及び裁判所業務法(Criminal Justice and Court Services Act 2000)
  (4)2003年性犯罪法(The Sexual Offences Act 2003)
  (5)ミーガン法(アメリカ)
 〔3〕サラ・ペイン性的虐待/誘拐殺害事件:メディア報道と市民の自警団的暴力(vigilantism)
  (1)サラ・ペイン性的虐待/誘拐殺害事件の概要
  (2)サラ・ペイン性的虐待/誘拐殺害事件の社会的影響
 〔4〕ソーハム地区女児性的虐待/誘拐殺害事件:ビチャード報告(Bichard Report 2004年6月)とケリー報告(Kelly Report 2004年7月)
  (1)ソーハム地区女児性的虐待/誘拐殺害事件の概要
  (2)ビチャード報告
  (3)ケリー報告
  (4)ビチャード報告とケリー報告におけるペドファイル対策
 〔5〕ペドファイル対策とは何か:刑事司法の変遷と予防/管理の新しい戦略
  (1)戦後福祉国家に至るまでの犯罪者対策
  (2)戦後福祉国家における犯罪者対策
  (3)高犯罪社会におけるペドファイル対策:刑事司法と市民感情
  (4)高犯罪社会におけるペドファイル対策:予防の新しい意味

Ⅴ部 ベビーP虐待死亡事件調査報告書とソ-シャルワーク改革

8章 ベビーP虐待死亡事件とソーシャルワーク――繰り返される第二のクリンビエ虐待死亡事件
 〔1〕はじめに:ベビーP虐待死亡事件とは
 〔2〕ベビーP虐待死亡事件の社会/政治的背景:児童社会サービスを中心に
  (1)新労働党政権第三期における児童社会サービス戦略
  (2)新労働党政権第三期における児童ソーシャルワーク
 〔3〕ベビーP虐待死亡事件の概要
  (1)2006年3月1日から12月11日まで
  (2)2006年12月12日から12月22日まで
  (3)2006年12月23日から2007年3月16日まで
  (4)2007年3月17日から6月1日まで
  (5)2007年6月2日から7月10日まで
  (6)2007年7月11日から7月25日まで
  (7)2007年7月26日から8月2日まで
 〔4〕SCRの見解
  (1)家族支援の妥当性?:未熟な初期アセスメント
  (2)権威的な対応の必要性:虐待防止の意味
 〔5〕児童虐待防止ソーシャルワークへの直接的影響
  (1)虐待防止(Child Protection)への揺り戻し
  (2)ソーシャルワーク専門職の見直し
 〔6〕児童虐待防止ソーシャルワークへの間接的影響
  (1)ラミング報告書とは:児童保護/虐待防止の進捗状況に関する全国調査
  (2)政府各省庁の改革
  (3)地方自治体の改革
 〔7〕ベビーP虐待死亡事件と連立政権
  (1)早期予防介入の後退
  (2)政府規制の撤廃

9章 政争そしてスキャンダルとしてのベビーP虐待死亡事件――スケープゴートにされたソーシャルワーク
 〔1〕もう1つのベビーP虐待死亡事件:「政争そしてスキャンダル」の意味
 〔2〕ベビーP虐待死亡事件をめぐるメディアと政治の対応
  (1)警察、CYPS、政府の対応
  (2)ブラウンとキャメロンとの衝突
  (3)サン紙のキャンペーンと政府の対応
 〔3〕JARに対する政治的介入
  (1)政治的介入の疑惑:JARの書き直し
  (2)政治的介入の疑惑:JARの評価変更
  (3)ボールズ(政府)の対応
 〔4〕SCRのやり直し(改訂版SCR)
  (1)SCRとは:SCRのやり直し
  (2)初版SCRと改訂版SCRの比較検討
 〔5〕ベビーP虐待死亡事件の責任問題
  (1)責任追及されたソーシャルワーク
  (2)責任追及された小児医療サービス
  (3)責任追及を逃れたロンドン警視庁と司法サービス
 〔6〕スケープゴートにされたソーシャルワーク
  (1)レベソン委員会の設置:メディアの不正と政界との癒着
  (2)レベッカ・ブルックスとメディア報道:報道倫理の崩壊
  (3)スケープゴートにされたソーシャルワーカー

Ⅵ部 新労働党政権の社会統治とソーシャルワーク

10章 新労働党政権の児童社会サービス改革がソーシャルワークに与える影響と変化
 〔1〕「刷新された社会民主主義」の社会統治:4つのモデルを手掛かりに
  (1)政治/政策に関する社会統治
  (2)社会サービスとソーシャルワーク専門職に関する社会統治
 〔2〕児童虐待防止システムの発展とソーシャルワークの変化――普遍的な早期予防介入(ECM, 2003)とアウトカムズ・フレームワーク(CfC, 2005)に至るまで
  (1)シーボーム改革とジェネリック・ソーシャルワーク
  (2)ジェネリック・ソーシャルワークと虐待防止
  (3)普遍的な早期予防介入とアウトカムズ・フレームワーク
 〔3〕普遍的な早期予防介入とソーシャルワーク――マネジリアリズムの脈絡から
  (1)予備的考察1:リスク社会の人間観――個人を単位とする社会
  (2)予備的考察2:リスク社会の連帯(社会)観――統計学の役割
  (3)2つの予備的考察の整理と普遍的な早期予防介入の考察視点
  (4)普遍的な早期予防介入:リスク集団の構築とリスク集団を単位とする予防介入
 〔4〕アウトカムズ・フレームワークとソーシャルワーク――マネジリアリズムの脈絡から
  (1)ソーシャルワークと精神分析
  (2)ソーシャルワークと反精神分析
  (3)ソーシャルワークとマネジリアリズム
 〔5〕新労働党政権の社会統治と児童ソーシャルワーク

結章 副題の3つのテーマから全体を振り返って
 〔1〕子ども社会投資
 〔2〕児童社会サービス改革
 〔3〕虐待死亡事件

 あとがき

前書きなど

はじめに

 本書は、前書『イギリスの児童虐待防止とソーシャルワーク』(明石書店、2006年)の続編であり、新労働党政権(1997年~2010年)の児童社会サービス改革が児童ソーシャルワーク(虐待防止を含む)にもたらした影響と、それによる児童ソーシャルワークの変化を論じた内容になっている。前書においても新労働党政権の児童ソーシャルワークについて論じているが、第一期における児童社会サービス行政組織改革(ベストバリュー)が中心で、児童ソーシャルワークそれ自体を考察するまでには至っていなかった。
 本書では、前書と同様に児童虐待死亡事件調査報告書を取り上げ、事件の概要と当児に対するソーシャルワークの内容を整理し、その時の組織的/構造的な問題、社会的/経済的な脈絡をオーバーラップさせながら、事件の根底に横たわる根源的なもの、核心的なもの、すなわちソーシャルワークが抱える根本問題を抽出しようとしている。そして調査報告書の勧告が、政府や自治体の構造改革をもたらし、それがいかにソーシャルワーク改革に連動していったのかを考察している。

 (…後略…)

著者プロフィール

田邉 泰美  (タナベ ヤスミ)  (

1961年 京都に生まれる。
1987年 明治学院大学社会学部社会福祉学科卒業
1992年 佛教大学大学院社会学研究科博士後期課程(社会学・社会福祉学)、単位取得。
2000年 園田学園女子大学短期大学部幼児教育学科教員、現在に至る。
  社会学博士(社会福祉学専攻)
  著書・訳書『イギリスの児童虐待防止とソーシャルワーク』(明石書店、2006年)
児童虐待死亡事件調査報告書『マリア・コルウェル』(津崎哲雄/田邉泰美共訳、英国ソーシャルワーク出版会、1991年)
専攻:子ども家庭福祉、保育実習指導Ⅰ・Ⅲ、社会的養護、イギリスの児童虐待防止/ソーシャルワーク

上記内容は本書刊行時のものです。