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図表でみる移民統合 OECD/EUインディケータ(2018年版)
原書: Settling In 2018: INDICATORS OF IMMIGRANT INTEGRATION
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年2月27日
- 書店発売日
- 2020年2月27日
- 登録日
- 2020年1月29日
- 最終更新日
- 2020年2月25日
紹介
移民とその子どもの定住状況について、EU及びOECDの全加盟国、そして一部のG20諸国を国際比較。労働市場とスキル、生活状況、市民参加と社会統合という主要3分野の指標をもちいて移民人口と移民世帯の傾向やその特徴について取り上げる。
目次
監訳者解説
はじめに
刊行にあたって
頭字語・略語
概要
第1章 移民統合インディケータ:序論および概要
第1節 政策論議の鍵としての移民やその子どもの統合に関する正確なデータ
第2節 国際比較可能な指標がもつ困難さと有益さ
第3節 移住先の国ぐにの類型
注と出典
第2章 移民人口と世帯の構成
結果概要
指標2.1 移民人口の規模
指標2.2 地域分布
指標2.3 年齢
指標2.4 同族パートナーシップと出生率
指標2.5 移民世帯
指標2.6 世帯構成
指標2.7 滞在資格ごとの移民フロー
指標2.8 在住期間と出生地
注と出典
第3章 移民の技能と労働市場における統合・排除
結果概要
指標3.1 学歴
指標3.2 言語能力
指標3.3 成人教育・訓練
指標3.4 就業率・労働力率
指標3.5 失業率
指標3.6 長期失業率
指標3.7 雇用契約類型
指標3.8 労働環境
指標3.9 職能スキル
指標3.10 学歴過剰
指標3.11 自営業
注と出典
第4章 移民の生活状況
結果概要
指標4.1 世帯所得
指標4.2 相対的貧困
指標4.3 過密居住
指標4.4 居住環境
指標4.5 主観的健康感
指標4.6 未充足医療・歯科ニーズ
注と出典
第5章 移民の市民参加と社会統合
結果概要
指標5.1 国籍取得
指標5.2 投票率
指標5.3 移民に対する受け入れ社会の見方
指標5.4 移民との交流
指標5.5 ジェンダー分業観
指標5.6 帰属意識
指標5.7 被差別感
指標5.8 生活満足度
注と出典
第6章 移民統合におけるジェンダー
結果概要
指標6.1 女性人口の割合
指標6.2 学歴
指標6.3 就業率・労働力率
指標6.4 失業率
指標6.5 経済活動における不本意な不参加
指標6.6 労働時間
指標6.7 職能スキル・経済活動
指標6.8 学歴過剰
指標6.9 被差別感
注と出典
第7章 移民背景をもつ若者の統合
結果概要
指標7.1 移民背景をもつ若者
指標7.2 親の出生地
指標7.3 幼児教育・保育
指標7.4 移民背景をもつ子どもの集中
指標7.5 読解力
指標7.6 15歳時点での基礎的読解力の欠如
指標7.7 学校での帰属意識とウェルビーイング
指標7.8 25~34歳の若者の学歴
指標7.9 早期離学
指標7.10 ニート
指標7.11 就業率
指標7.12 失業率
指標7.13 学歴過剰
指標7.14 公共部門雇用
指標7.15 子どもの相対的貧困
指標7.16 投票率
指標7.17 被差別感
注と出典
第8章 EUにおける第三国国民の統合
コラム8.1 サラゴサ指標:EUにおける統合政策の成果のモニタリング指標
結果概要
指標8.1 人口規模・年齢構成
指標8.2 国籍の地域別構成・在住期間
指標8.3 就業率・労働力率
指標8.4 失業率
指標8.5 自営業
指標8.6 学歴過剰
指標8.7 学歴
指標8.8 世帯所得
指標8.9 相対的貧困
指標8.10 住居所有状況
指標8.11 主観的健康感
指標8.12 長期在留者
指標8.13 投票率
指標8.14 国籍取得
指標8.15 被差別感
注と出典
付録A 移民人口と移民世帯の構成
付録B 技能と労働市場
付録C 生活状況
付録D 社会参加と社会的指標
付録E 移民背景をもつ若者
用語解説
訳者あとがき
前書きなど
監訳者解説
(…前略…)
2.2 構成と特徴
第1章では、移民の統合に関する国際比較の意義を述べると同時に、移民受け入れ国をその特徴から8つに類型化している。それらは、①入植国家、②高い学歴の移民が多い伝統的移民受け入れ国、③低い学歴の移民が多い伝統的移民受け入れ国、④人道移民受け入れ国、⑤低い学歴の労働移民受け入れ国、⑥高い学歴の労働移民受け入れ国、⑦国境の変更によって外国生まれや外国籍となった人びとを多く抱えることとなった移民受け入れ国、⑧移民の少ない新興移民受け入れ国、である。また、主要な指標について、外国生まれと現居住国生まれの成果を比較対照しており、第1章は移民統合の全体像を把握するためには不可欠の章といえる。
つづく第2章以下の各章では、それぞれ統合にかかわる指標を取り上げ、成果を国際比較し、分析している。たとえば第2章では、移民人口と世帯にかかわる指標、具体的には移民の地域分布、年齢、世帯構成、滞在資格、出生地など、移民グループとしての特徴をとらえる基礎データをとりあげる。また第3章では、移民の技能と労働に着目した指標、具体的には、学歴、言語能力、就業率、失業率、労働環境、職能スキル等の指標が検討される。第4章では、移民の生活にかかわる指標、たとえば、世帯所得、相対的貧困、住居、居住環境、主観的健康感や医療・歯科ニーズ等の指標が分析される。第5章では、移民の市民参加にかかわる指標、たとえば国籍取得、投票率、移民に対する見方、移民との交流、ジェンダー分業観、帰属意識や被差別感、生活満足度等がとりあげられている。
後半の第6章から第8章は、移民の中でも女性、若者、第三国国民という3つのグループに着目し、その統合の成果を各指標にもとづいて分析したものである。移民のグループの中でも統合に困難を抱えるサブグループを見出しているという点で、この3つの章の存在は大きい。
最後にSettling In 2018の特徴を述べておこう。各国の移民統合を測る指標はこれまでにもいくつか存在している2。このうち代表的なものとして、MIPEX(Migrant Integration PolicyIndex)があげられる。MIPEXは、移民政策グループ(MPG)、国際バルセロナ問題センター、ブリティッシュ・カウンシル等が主催し、EUや世界の40団体が協力をして開発した移民政策の指標で、2004年以来すでに数回にわたって報告書を出している。MIPEX2015年版への参加国は計38か国、またMIPEX2015年版で用いられた指標項目は、労働市場へのアクセス、家族呼び寄せ、長期滞在、政治参加、国籍取得、反差別、教育、健康の合計8分野の計167指標であった。MIPEXでは、各国の現行の法令および政策をこれらの指標にもとづいて数値化している。具体的には、各指標において欧州の最高水準(政策の最良事例)であれば満点(3点)とし、不十分である場合は2点が、遠く及ばない場合は1点がつけられた。国によってその指標を示す関連の法令や政策が存在しない場合も1点が与えられ、得点の1-3を0-100に再計算して提示されている(丸山 2016: 224-238)。
一方、法律や制度だけでなく実際の統合の結果を重視したEUにおいては、欧州連合統計局(Eurostat)が2010年4月の移民統合に関する閣僚会議宣言(「サラゴサ宣言」)にもとづいて「移民統合指標」(通称「サラゴサ指標」)を2011年に公表した。統合を測る分野は、雇用、教育、社会的包摂、アクティブ・シティズンシップの4つに分けられ、指標として、就業率・失業率・労働力率、教育水準、高等教育修了率、早期離学率、相対的貧困率、健康感、国籍取得率、議員選出率などがあげられていた(European Union 2011: 10)。この「サラゴサ指標」こそ、Settling Inシリーズの前身といえる。
したがって、Settling In 2018の統合指標は、OECDおよびEUに加盟する41の国および地域を分析の対象としているが、各国のみならずEUの移民統合政策がどのような成果をあげているかを継続的に測る試みといえる。成果を測る主な領域としては、人口学的特徴、教育、労働、所得、住宅、健康、医療、国籍取得、政治参加、生活満足度、帰属意識、差別などであり、合計74の指標からなっている。とくに、こうした指標にもとづいて、女性、若者、第三国国民という移民のサブグループに着目した分析を詳細におこなったことは、今回のSettling In 2018の特徴ともいえる。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。