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日本の中国占領統治と宗教政策 松谷 曄介(著) - 明石書店
.

日本の中国占領統治と宗教政策 日中キリスト者の協力と抵抗

発行:明石書店
A5判
432ページ
上製
価格 6,800円+税
ISBN
978-4-7503-4931-2
Cコード
C0014
一般 単行本 宗教
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2020年1月15日
書店発売日
登録日
2019年12月26日
最終更新日
2020年1月24日
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紹介

日中戦争に関して、従来取り上げられてこなかった日本の大陸に対する宗教政策と、占領地に残された中国人宗教者たちの活動を活写し、当地のキリスト教世界を重層的、複眼的にとらえなおすことによって、日中戦争を描き出す。

目次

「まえがき」に代えて(横山宏章)

序章 日本による中国占領統治とキリスト教政策
 第1節 問題の所在と本書の目的
 第2節 先行研究の整理と課題
 第3節 研究視座、構成、用語・表記、資料

Ⅰ部 政策

第1章 中国占領地域に対する日本の宗教政策の形成――キリスト教政策を中心に
 第1節 中国占領地域に対する宗教政策の発端
  第1項 華北地域の宣撫工作
  第2項 華中地域の宣撫工作
  第3項 仏教を利用した宣撫工作
  第4項 「第三国人」対策としてのキリスト教工作
  第5項 三教代表協議会
  小括
 第2節 欧米対日世論の是正とキリスト教政策
  第1項 在華キリスト教関連施設被害に関する外務省の対応
  第2項 在華キリスト教関連施設被害に関する陸軍の対応
  第3項 対支文化協議会における議論
  第4項 日本人牧師を利用した対日世論是正政策
  第5項 興亜院の成立とその宗教政策
  小括
 第3節 華北地域における宗教政策の諸展開
  第1項 杉山部隊の宗教政策
  第2項 多田部隊/北支那方面軍参謀部の宗教政策
  第3項 興亜院華北連絡部の宗教政策
  第4項 北支日本基督教連盟を利用した宗教政策
  小括
 結論

第2章 日本国内における宗教政策と中国政策の関連
 第1節 宗教団体法の成立と中国政策
  第1項 先行研究
  第2項 宗教団体法成立の背景
  第3項 宗教団体法の成立過程
  第4項 宗教団体法をめぐる帝国議会貴族院での議論
  第5項 宗教団体法をめぐる帝国議会衆議院での議論
  第6項 宗教団体法と回教問題
  小括
 第2節 興亜宗教同盟と興亜宗教審議会
  第1項 興亜宗教新体制促進委員会の成立
  第2項 興亜宗教同盟の成立
  第3項 興亜宗教協力会議と世界宗教宣言
  第4項 興亜宗教審議会と特別部会
  小括
 第3節 宗教教化方策委員会
  第1項 宗教教化方策委員会の成立過程
  第2項 宗教教化方策委員会の宗教政策
  小括
 結論

Ⅱ部 組織

第3章 中支宗教大同連盟をめぐる諸問題
 第1節 中支宗教大同連盟の成立過程
  第1項 特務部の宗教政策
  第2項 中支宗教大同連盟構想の起源
  第3項 中支宗教大同連盟の結成準備段階
  第4項 宗教問題研究所
  第5項 日本宗教連盟
  第6項 中支宗教大同連盟と西村展蔵
 第2節 中支宗教大同連盟の機構と活動
  第1項 原則的方針と事業計画
  第2項 神道部の諸活動
  第3項 仏教部の諸活動
  第4項 基督教部の諸活動
 第3節 中支宗教大同連盟をめぐる評価
  第1項 先行研究における評価
  第2項 連盟内部からの批判
  第3項 連盟外部からの批判
  第4項 連盟機能不全の原因
 結論

第4章 「中華基督教団」をめぐる諸問題
 第1節 中国の教会合同・自立運動と日本の教会の中国進出
  第1項 中国の教会合同・自立運動
  第2項 日本の教会の中国進出
 第2節 華北地域の場合――華北中華基督教団を中心に
  第1項 太平洋戦争勃発前の日本当局の政策
  第2項 太平洋戦争勃発後の日本当局の政策
  第3項 華北中華基督教連合促進会と華北中華基督教団
  第4項 華北中華基督教団の諸活動
  第5項 王明道と華北中華基督教団
  第6項 華北中華基督教団主理・江長川の教会合同論
  第7項 漢奸裁判の視点から見た江長川
  小括
 第3節 華中地域の場合――南京中華基督教団を中心に
  第1項 太平洋戦争勃発以前――南京におけるキリスト教政策と楊紹誠
  第2項 太平洋戦争勃発以後――南京日華基督教連盟の成立
  第3項 南京中華基督教団の成立
  第4項 南京日華基督教連盟と南京中華基督教団の諸活動
  第5項 南京日本YMCAの諸活動
  第6項 南京日華基督教連盟、南京中華基督教団、南京日本YMCAの評価
  第7項 漢奸裁判の視点から見た楊紹誠
  第8項 蘇淮中華基督教会総会の場合
  小括
 第4節 上海の場合――華中日華基督教連盟を中心に
  第1項 太平洋戦争勃発以前――中支宗教大同連盟によるキリスト教政策
  第2項 太平洋戦争勃発以後――華中日華基督教連盟の成立過程
  第3項 華中日華基督教連盟の諸活動
  第4項 繆秋笙とその抵抗
  第5項 漢奸裁判の視点から見た繆秋笙
  小括
 補節 中華基督教団顧問の日本人牧師
  第1項 中華基督教団の顧問
  第2項 南京中華基督教団の黒田四郎の戦争観
  小括
 結論

Ⅲ部 人物

第5章 楊紹誠とその生涯
 第1節 楊紹誠の生涯① 日中戦争以前(1889年~1937年を中心に)
  第1項 楊紹誠の生い立ち
  第2項 アドベント教会の概要と中国伝道
  第3項 日本アドベント教会と楊紹誠
 第2節 楊紹誠の生涯② 日中戦争勃発前後(1937年~1941年を中心に)
  第1項 日中戦争勃発以前の楊紹誠
  第2項 日中戦争勃発以後の楊紹誠
  第3項 楊紹誠の南京帰還
  第4項 楊紹誠と岩越重雄
  第5項 楊紹誠の難民救済活動
  第6項 楊紹誠に対する宣教師たちの評価
 第3節 楊紹誠の生涯③ 日中戦争終結以後(1945年~1982年を中心に)
  第1項 戦後から共産党政権成立前後の楊紹誠
  第2項 控訴大会における楊紹誠
  第3項 三反五反運動、文化大革命における楊紹誠
  第4項 晩年の楊紹誠
 結論


第6章 日本人キリスト者と中国
 第1節 安村三郎と中国――南京での活動を中心に
  第1項 はじめに
  第2項 日本YMCA同盟による慰問事業と大陸事業
  第3項 安村三郎の第一次派遣――1938年4月から同年8月まで
  第4項 安村三郎の第二次派遣――1938年11月から1939年2月まで
  第5項 安村三郎の第三次派遣――1939年11月から1942年5月まで
  第6項 安村三郎の新東亜建設論
  第7項 安村三郎に対する評価
  小括
 第2節 阿部義宗と中国――中支宗教大同連盟での活動を中心に
  第1項 はじめに
  第2項 阿部義宗の派遣背景
  第3項 阿部義宗の滞在日程
  第4項 阿部義宗の諸活動
  第5項 阿部義宗の新東亜建設論
  第6項 阿部義宗に対する評価
  小括
 第3節 賀川豊彦と中国――「宗教使節」問題を中心に
  第1項 はじめに
  第2項 賀川豊彦の派遣背景
  第3項 賀川豊彦の上海における言動
  第4項 賀川豊彦の南京における言動
  第5項 賀川豊彦の華北地域における言動
  第6項 賀川豊彦の大東亜建設論
  第7項 賀川豊彦に対する評価
  小括
 第4節 矢内原忠雄と中国――王明道訪問を中心に
  第1項 はじめに
  第2項 矢内原忠雄の中国訪問
  第3項 矢内原忠雄の中国観
  第4項 矢内原忠雄の第五回訪中
  第5項 矢内原忠雄と王明道
  第6項 矢内原忠雄と王明道の信仰的共通点
  第7項 矢内原忠雄の中国伝道論
  小括
 結論

終章 中国占領地域における宗教政策の諸相
 第1節 日中キリスト者の協力と抵抗
 第2節 今後の研究課題

 参考文献
 あとがき
 索引

前書きなど

序章 日本による中国占領統治とキリスト教政策

第1節 問題の所在と本書の目的

 本書は、日中戦争期の日本による中国占領統治において、第一に、宗教政策がどのように形成されたかを特にキリスト教を中心に論じ、第二に、それらの政策により成立した日本と中国の宗教組織の成立過程と実態を明らかにし、第三に、こうした政策・組織とかかわった日本と中国のキリスト教指導者たちの協力と抵抗のはざまでの行動や思惑を解明することを目的としている。

 (…中略…)

第3節 研究視座、構成、用語・表記、資料

 (…中略…)

〈構成〉
 以上のように、本書では人物研究の視座を重視するが、個々の人物(樹木)を政策(森)と組織(林)の中に位置づける必要があるため、本書は以下のように政策・組織・人物の順に論じる3部構成とした。
 政策を機軸に論じるI部では、中国占領地域に対する日本の宗教政策を分析するために、まず陸軍・外務省・文部省の相互関連を明らかにし、また日本国内の宗教政策と中国大陸における宗教政策の関連を考察する。また組織に焦点を当てたII部では、日本の宗教政策を推進する中支宗教大同連盟と、日本の宗教政策の結果結成された中国側の組織である中華基督教団の実態解明を試みる。人物を中心に論じるIII部では、日本の宗教政策・組織の枠組みの中で活動した中国人牧師の楊紹誠や日本人牧師・キリスト者4名を取り上げ、個々の人物の行動や思考の多様性を比較検討する。
 各章の内容を概観しておこう。第1章では、中国占領地域に対する日本の宗教政策の諸展開をキリスト教政策を中心に論じる。特に北支那方面軍と中支那方面軍の宣撫工作において見られた宗教政策の発端、欧米キリスト教宣教師の対日世論是正、また華北地域における宗教政策の展開を考察することを通して、中国大陸における宗教政策が陸軍の主導で行われつつ、外務省や文部省が協同する形で推進されたことを明らかにする。
 第2章では、日本国内における宗教政策を中国政策との関係において検討する。特に宗教団体法、興亜宗教同盟、宗教教化方策委員会に見られる諸政策が中国大陸や大東亜地域に対する宗教政策を視野に入れて立案され、その後の政策実施に影響を与えたことを立証する。
 第3章では、華中地域における宗教政策を統括していた中支宗教大同連盟に焦点を当て、同連盟の成立過程、機構、活動を明らかにすることを通して、同連盟に対する評価を試みる。
 第4章では、占領地域各地に結成された「中華基督教団」をめぐる諸問題を考察する。特に華北中華基督教団、南京中華基督教団、華中日華基督教連盟を比較検討することを通し、各地域の中華基督教団の多様性とそこにかかわった中国人キリスト者の教会合同に対する姿勢の相違などを明らかにする。
 第5章では、南京中華基督教団の中心人物となった中国人牧師の楊紹誠に焦点を当て、彼の生涯全体を描き出すことを通してその行動様式や思考様式を分析し、彼の対日協力に対する評価を試みる。
 第6章では、4名の日本人キリスト者(安村三郎、阿部義宗、賀川豊彦、矢内原忠雄)と中国大陸の関係を個別に論じ、彼らの中国での滞在日程、活動内容、時局認識などを考察することを通し、日本の宗教政策・組織における彼らの位置づけを評価する。
 終章では日中キリスト者の協力と抵抗の諸相を総括的に論じ、今後の研究課題を提示する。

著者プロフィール

松谷 曄介  (マツタニ ヨウスケ)  (

1980年 福島県生まれ
2003年 国際基督教大学(ICU)教養学部卒業
2007年 東京神学大学大学院神学研究科修士課程修了
    日本キリスト教団八幡鉄町教会牧師(~13年)
2012年 北九州市立大学大学院社会システム研究科博士課程単位取得退学(2013年、博士号(学術)取得)
2013年 香港中文大学崇基学院神学院栄誉副研究員(~16年)
2014年 日本学術振興会海外特別研究員(~16年)
2016年 日本キリスト教団筑紫教会牧師(~現在)

業績
「福音は日本と中国のはざ間の波濤を越えられるか?――日中キリスト教関係の回顧と展望」(東京神学大学『神学』77号、教文館、2015年)
「名誉回復、未だ成らず――反革命罪のキリスト教伝道者・王明道」(愛知大学『中国21』48号、東方書店、2018年)
“Crossing the Bamboo Curtain: The Japanese Christian Delegation to the Chinese Church in 1957”(Wickeri, Philip L., ed., Unfinished History: Christianity and the Cold War in East Asia, Evangelische Verlagsanstalt, 2016)
『はじめての中国キリスト教史』(共著、かんよう出版社、2016年)

上記内容は本書刊行時のものです。