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ウェールズを知るための60章
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2019年7月31日
- 書店発売日
- 2019年7月31日
- 登録日
- 2019年7月29日
- 最終更新日
- 2019年8月9日
紹介
英国を構成する4つの「国」の1つウェールズ。最も早くイングランドに併合されたが独自性を保ち続け、英語と全く異なるウェールズ語を話せる若者も少なくない。アーサー王伝説のルーツを持ち、海苔を食すなど日本との意外な共通点もあるウェールズを生き生きと紹介する。
目次
まえがき
地図
Ⅰ ウェールズの風景
第1章 ウェールズ概観――海から山まで自然美にあふれる国土
第2章 カーディフ――石炭の富が作ったウェールズの首都
第3章 北ウェールズの巨城群――征服されたウェールズの象徴
第4章 忠犬・殉教者・魔術師の町――ベスゲレット、ホリウェル、カーマーゼン
第5章 観光リゾート地――水彩画家を魅了した村や『不思議の国のアリス』が誕生した町
第6章 ウェールズの祈りの場所――大聖堂から素朴なチャペルまで
第7章 マーサー・ティドヴィル――ウェールズに突然出現した製鉄業の巨大な村
第8章 ペンブルックシャー――ウェールズのリトル・イングランド
【コラム1】フィッシュガード――フランス革命軍の上陸した小さな漁村
Ⅱ 歴史
第9章 先史時代のウェールズ――様々な古代の遺跡と遺物
第10章 カーリアン――南ウェールズ支配のためのローマ軍団根拠地
第11章 サクソン人との戦い――アーサー王伝説の原点
第12章 オファの防塁――ウェールズ・イングランド国境
第13章 「ウェールズ法」――人々の法からナショナル・シンボルへ
第14章 ジェラルド・オブ・ウェールズ――イングランドとの仲介者
第15章 征服されたウェールズ――イングランド人のプリンス・オブ・ウェールズの誕生
第16章 オワイン・グリンドゥールの反乱――ウェールズの独立を目指した愛国者の蜂起
第17章 ウェールズにおける新しい信仰の波――非国教会の隆盛
第18章 巡回学校――ウェールズ民衆教育の原点
第19章 暴動と労働争議――産業化するウェールズ
第20章 民族主義の高まり――カムリ・ヴィーズ運動からプライド・カムリの活動へ
第21章 自治権回復への道――ウェールズ省からウェールズ国民議会政府へ
【コラム2】ウェールズ人の海外移住
Ⅲ ウェールズ語保存の歴史
第22章 ウェールズ語――英語とはまったく異なる言語
第23章 ウェールズ連合法――公用語になれなかったウェールズ語
第24章 ウェールズ語聖書――宗教と教育の言葉として生き残ったウェールズ語
第25章 ウェールズ教育青書の衝撃――英語習得の促進と教室でのウェールズ語禁止
第26章 ウェールズ語の教育・研究拠点――ウェールズ国立図書館と大学の設置
第27章 ウェールズ語の話者率――言語の将来への不安
第28章 ウェールズ語の法的復権――言語法の成立
【コラム3】ウェールズ人の父称と姓
Ⅳ 産業と交通
第29章 北ウェールズの鉱業――銅鉱石採掘とスレート採石
第30章 最高品質のスチーム炭と無煙炭――南ウェールズ石炭産業の繁栄
第31章 産業革命を支えたウェールズの製鉄業――マーサー・ティドヴィルの製鉄王たち
第32章 産業の爪痕――スウォンジーの銅産業公害とアベルヴァンの悲劇
第33章 運河・鉄道――ウェールズの物流システム
第34章 ウェールズの交通を支えた美しい橋――石造のアーチ橋や最新の吊橋
第35章 第2次大戦後のウェールズ――石炭産業の没落と海外企業の誘致
第36章 カーディフ港の盛衰と再開発――石炭積み出し港から高級リゾート地へ
【コラム4】蒸気機関車の発明者トレヴィシックと日本
Ⅴ 祭典と伝統
第37章 中世のアイステズヴォッド――吟唱詩人たちの就職試験?
第38章 アバガヴェニ・アイステズヴォッド――ヨーロッパ文化の源流を求めて
第39章 現代のアイステズヴォッド――新しいウェールズの総合文化祭典
第40章 セント・デイヴィッズ・デイ――いちばん大切なウェールズの祝日
第41章 ウェールズの守護聖人の祭り――宗教色を取り除いた民衆文化としての祝祭
第42章 ウェールズ旗――レッド・ドラゴンの伝統
第43章 ウェールズ女性の山高帽とガウン――民族衣裳か創作か
第44章 ブリテン島のバルドのゴルセッズ――現代に蘇った古代のドルイド
【コラム5】今に続く奇習――マリ・ルイド
Ⅵ 絵画・スポーツ・音楽・生活
第45章 ピクチャレスクなウェールズを描いた画家たち――リチャード・ウィルソンとその周辺
第46章 オーガスタス・ジョンとグウェン・ジョン――20世紀のウェールズを代表する姉弟画家
第47章 ウェールズ国立美術館――ウェールズ人美術愛好家による愛蔵品の寄贈
第48章 ラグビー――ウェールズの第2の宗教
第49章 谷間や採石場に響く歌声――ウェールズ人と合唱の伝統
第50章 ウェールズの食――カウル、ラーヴァーブレッド、ウェルシュラビット、バラブリスなど
第51章 ウェールズ人会――結束するロンドンや各地のウェールズ人
第52章 映画に見るウェールズらしさ――『わが谷は緑なりき』と『ウェールズの山』を中心に
【コラム6】ウェールズの著名な歌手と映画スター
Ⅶ 伝説・文学・地誌・学術
第53章 水没伝説――海底に沈む町、湖底に沈む村
第54章 マビノギオン――ウェールズの幻想的な中世物語集
第55章 2つの言語による文学――ウェールズにおけるウェールズ語文学と英語文学の伝統
第56章 トゥム・オール・ナントのインタールード――ウェールズにおける道徳劇の伝統
第57章 ウィリアム・ウィリアムズとアン・グリフィス――ウェールズの卓越した讃美歌作者たち
第58章 ディラン・トマスとR・S・トマス――20世紀のウェールズを代表する英語詩人
第59章 3つのウェールズ旅行記――聖職者、動物学者、小説家の見たウェールズ
第60章 ケルト学に寄与したウェールズ人――オックスフォードの「リトル・ウェールズ」
【コラム7】マドック伝説――ウェールズ人によるアメリカ大陸発見説の顛末
ウェールズをもっと知るためのブックガイド
執筆者紹介
編著者紹介
前書きなど
まえがき
1997年、地方分権に関する住民投票の結果を受け、イギリス政府はスコットランド、ウェールズ、北アイルランドに権限を一部委譲することになった。これにより、これらの「地域」に新たにその「地域」の名を冠した議会と政府が誕生した。このことは、イギリスが歴史的、文化的に背景の違う4つの「国」から成り立っていることを、またイギリスが「連合王国」と呼ばれる所以を我々に再認識させたのであった。権限委譲への要求はさらに高まり、スコットランドでは、イギリスから独立するかどうかの賛否を問う住民投票が2014年に行われた。その結果、僅差でイギリス残留が決まったものの、これは改めて現在の「連合王国」の枠組みと、それぞれの「国々」に強まるナショナリズムを我々に痛感させたのであった。そして今、イギリス自体がEUから離脱しようとしている。
近年、イギリスがこのように話題になったことは、2012年のロンドンオリンピックを除いて、なかったであろう。そして今、我々のイギリスへの関心のひとつは、スコットランドの住民投票に見られるように、イギリスが「連合王国」であるという古くて新しい問題に向かいつつあるように思える。本書はイギリスを形成する「国々」のひとつであるウェールズを総合的に紹介する解説書として、またより深くウェールズを知りたい人のための案内書として企画された。
(…後略…)
追記
【執筆者一覧】
岩瀬ひさみ(いわせ・ひさみ)
日本ケルト学会会員、日本昔話学会会員。
アバディーン大学修士課程卒(MLitt: Celtic Studies)。
専門はスコットランドの民話、他地域の民話との比較研究。
著書・訳書:『ケルト文化事典』(共著、東京堂出版、2017年)、『世界の猫の民話』(共訳、三弥井書店、2010年)、『世界の水の民話』(共訳、三弥井書店、2018年)。
太田直也(おおた・なおや)
鳴門教育大学大学院教授。
立正大学大学院文学研究科英文学専攻博士後期課程満期退学。
専門はイギリス文学、比較文化・文学
著書・訳書:『イギリス文化事典』(共著、丸善出版、2014年)、『ディラン・トマス――海のように歌ったウェールズの詩人』(共著、彩流社、2015年)。訳書:E・ハラム『十字軍大全』(共訳、東洋書林、2006年)、『ディラン・トマス書簡集』(共訳、東洋書林、2010年)。
太田美智子(おおた・みちこ)
武蔵野美術大学講師。
専門は18世紀イギリス文学。
著書・訳書:『イギリス文化事典』(共著、丸善出版、2014年)、『十字軍大全』(共訳、東洋書林、2006年)。
梶本元信(かじもと・もとのぶ)
帝塚山大学名誉教授。
関西大学大学院経済学研究科博士課程満期退学、経済学博士。社会経済史学会、経営史学会、鉄道史学会、日本カムリ学会会員、現在帝塚山大学非常勤講師として勤務中。
専門は西洋経済史。
著書・訳書:『南ウェールズ交通史研究』(日本経済評論社、2000年);『北ウェールズ交通史論』(日本経済評論社、2010年)。翻訳書にP.S.バグウェル、P.ライス『イギリスの交通』(大学教育出版、2004年)、S.ヴィル(著)、梶本元信・野上秀雄(共訳)『ヨーロッパ交通史』(文沢社、2012年)、R.P. マーフィー(著)、M.J. シェフナー・富田新・山口修・梶本元信(共訳)『学校で教えない大恐慌・ニューディール』(大学教育出版、2015年)など。
小池剛史(こいけ・たけし)
大東文化大学文学部英米文学科准教授。日本カムリ学会代表幹事。
桜美林大学文学部英語英米文学科卒業。獨協大学大学院外国語学研究科博士後期課程満期修了退学。2004年エジンバラ大学哲学・心理学・言語科学学部英語学科博士課程修了。
専門は、ウェールズ語学、英語学、英語史(古英語)。
著書・訳書:『ウェールズ語の基本』(共著:永田喜文・小池剛史、三修社、2011年)、『ウェールズ語の歴史』(原著者ジャネット・デイヴィス、春風社、2018年)。
永井一郎(ながい・いちろう)
専門はウェールズ中世史、特に「ウェールズ法」、ギラルドゥス・カンブレンシス。
著書:青山吉信(編)『イギリス史1 先史~中世』〈世界歴史大系〉(ウェールズ関係の章・節、山川出版社、1991年)、『岩波講座世界歴史7 ヨーロッパの誕生:4-10世紀』(第2論文、岩波書店、1998年)、初期王権研究委員会(編)『古代王権の誕生4(ヨーロッパ編)』(第3部第4章、角川書店、2003年)。
久木尚志(ひさき・ひさし)
北九州市立大学外国語学部教授。
専門はイギリス近現代史、ウェールズ労働史。労働問題を中心に、19~20世紀のイギリス、特にウェールズについて研究している。
著書:『ウェールズ労働史研究――ペンリン争議における階級・共同体・エスニシティ』(彩流社、2006年)、『イギリス文化史』(共著、昭和堂、2010年)、『「街頭の政治」を読む』(共著、法律文化社、2018年)など。
平田雅博(ひらた・まさひろ)
青山学院大学文学部史学科教授
専門はブリテン近現代史。
著書・訳書:『イギリス帝国と世界システム』(2000年)、『内なる帝国・内なる他者――在英黒人の歴史』(2004年)、『ウェールズの教育・言語・歴史――哀れな民、したたかな民』(以上晃洋書房、2016年)、『英語の帝国─ある島国の言語の1500年史』(講談社選書メチエ、2016年)、『帝国・国民・言語――辺境という視点から』(共編著、三元社、2017年)、フィリプソン『言語帝国主義――英語支配と英語教育』(共訳、三元社、2013年)、アーミテイジ『思想のグローバル・ヒストリー』(共訳、法政大学出版局、2015年)、ベイリ『近代世界の誕生――グローバルな連関と比較1780-1914』上下巻(共訳、名古屋大学出版会、2018年)ほか。
廣野史子(ひろの・ちかこ)
関西ウェールズ協会代表、ライター。
1990年から91年まで、ウェールズの首都カーディフの郊外にあるセント・ニコラス小学校で、日本文化や日本の現状を紹介する活動に従事。学校生活と一般家庭でのホームステイでウェールズの一般的な暮らしを体験する。帰国後、ウェールズと日本の交流を目的とする非営利の友好団体である関西ウェールズ協会の設立(2000年)に参加。関西ウェールズ協会は活動目的のひとつに日本でのウェールズ紹介を挙げており、2007年以降、「ウェールズ文化祭」を年に1度開催。代表として、企画、準備、実施のすべてに関わっている。ライターとしては、様々な広告制作のほか、ウェールズに限らず英国関連雑誌で記事を執筆。『イギリス文化辞典』(丸善出版)の執筆者のひとり。また自身のウェブサイト『ガイドブックに載ってない英国ウェールズ案内』https://walesbanzai.jimdo.com/ でウェールズ情報を発信している。
松山明子(まつやま・あきこ)
鶴見大学文学部英語英米文学科教授。
英国ウェールズ大学(カーディフ校)に留学中にウェールズ語学習者向けの試験Defniddio'r Gymraeg(GCSE Oレベル相当)合格。
専門はウェールズの言語政策、ウェールズ語の復興。
著書:『国のことばを残せるのか――ウェールズ語の復興』(鶴見大学比較文化研究所ブックレット第13号、神奈川新聞社、2015年)
森野聡子(もりの・さとこ)
静岡大学学術院情報学領域教授。
早稲田大学大学院文学研究科博士課程前期修了(文学修士)、1989年ウェールズ大学にて日本人として初めてケルト研究(Celtic Studies)で博士号取得。
専門はウェールズ語・ウェールズ文学。ウェールズを中心に、ケルト諸語地域における民族意識形成について研究。
著書・訳書:『ピクチャレスク・ウェールズの創造と変容――19世紀ウェールズの観光言説と詩に表象される民族的イメージの考察』(共著、青山社、2007年)、『ケルト文化事典』(項目執筆、東京堂出版、2017年)、『アーサー王物語研究 源流から現代まで』(共著、中央大学出版部、2016年)、『ディラン・トマス 海のように歌ったウェールズの詩人』(項目執筆、彩流社、2015年)、『イギリス文化事典』(項目執筆、丸善出版、2014年)、フランク・ディレイニー『ケルト――生きている神話』(翻訳、創元社、1993年)ほか。
吉賀憲夫(よしが・のりお) ※編著者紹介を参照。
上記内容は本書刊行時のものです。