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精神科病院長期入院患者の地域生活移行プロセス 杉原 努(著) - 明石書店
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精神科病院長期入院患者の地域生活移行プロセス (セイシンカビョウインチョウキニュウインカンジャノチイキセイカツイコウプロセス) 作られた「長期入院」から退院意思協同形成へ (ツクラレタチョウキニュウインカラタイインイシキョウドウケイセイヘ)

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発行:明石書店
A5判
240ページ
上製
価格 3,200円+税
ISBN
978-4-7503-4864-3   COPY
ISBN 13
9784750348643   COPY
ISBN 10h
4-7503-4864-3   COPY
ISBN 10
4750348643   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2019年8月10日
書店発売日
登録日
2019年8月1日
最終更新日
2019年8月20日
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紹介

精神保健福祉士たちと協同しながら退院への意思を持ち続け、地域生活を実現した過程を詳述。先行研究の整理や精神科医療の現状把握を行いつつ、退院した人たちへの豊富なインタビューの分析を通して、日本の精神科医療と精神保健福祉の今後のあり方を示す。

目次

 はじめに

第1章 精神科病院長期入院患者に関する問題意識および研究目的
 第1節 研究背景
 第2節 問題関心
 第3節 研究目的と意義
 第4節 研究方法

第2章 「希薄な施策の結果」としての長期入院患者
 第1節 調査の背景、問題関心、研究目的、方法、結果
 第2節 社会的入院の定義と人数
 第3節 社会的入院を作り出した歴史
 第4節 社会的入院を生じさせた要因
 第5節 社会的入院患者の精神症状分析
 第6節 小括

第3章 「観点のある退院支援の必要性」の確認と実践
 第1節 幅のある退院意向
 第2節 退院意向に与える影響
 第3節 生活基盤の整備と支援体制の重要性
 第4節 小括

第4章 M-GTAを使用した研究
 第1節 M-GTAに関する説明
 第2節 インタビューの必要性とM-GTA
 第3節 大切にしたいと考えていたこと

第5章 密室の中のディスエンパワメント
 第1節 研究背景、研究目的、研究方法および分析方法、結果
 第2節 無力化させていく入院
 第3節 全部ダメって言われる

第6章 暮らす力を得ていく
 第1節 回復のために取り組む
 第2節 地域の生活者として暮らす

第7章 働きかけの強化と構造的変革の必要性
 第1節 退院意思の協同形成による退院の促進
 第2節 退院支援のための実践論
 第3節 構造的変革のための理念

 おわりに

 資料1:インタビュー対象者の一覧
 資料2:カテゴリー、概念、定義の一覧
 資料3:結果図

 参考文献

前書きなど

はじめに

 本書は、精神科病院長期入院患者が、精神保健福祉の専門職と協同しながら退院意思を持ち続け、地域における生活を可能にしていった変化とプロセスについて明らかにしようとするものである。なお、本書においては長期入院患者という表現をする。執筆当初は長期入院者と表現していた。患者ではなく普通にいる人であると尊重して考えるべきだと思ったからである。

 (…中略…)

 本書の構成は7章編成である。第1章では日本における精神科病院の長期入院患者数について、OECD加盟国の現状と比較したり、日本では2000年代の初めから退院支援事業が展開されてきたが、その経過や課題などについて触れている。
 第2章および第3章では、長期入院患者の退院支援に関する先行研究から得られた結果とその特徴について述べている。たとえば、第2章では、地域で生活できる社会資源を作ってこなかった「希薄な施策の結果」であることを示した。精神障害者が地域において生活できる基盤ができていなかったこと、法律によって家族に病者扶養に関する保護義務を課していたことなどであり、結果として社会的入院患者を生じさせてしまったのであった。
 続いて第3章では、長期入院患者が退院し地域で生活できるための、「退院支援の観点」について示した。2000年代に入ってからようやく厚生労働省による退院支援事業が展開されたことにより、施策として長期入院患者が地域で生活できるようになってきた。その有効な視点や方法などが先行研究から得られたのでそのことをまとめた。
 なお、先行研究は2014年3月までを対象にしたが、その理由は現在の精神保健福祉法改正までの時期における先行研究として限定したからである。なぜならば、法改正により医療保護入院者退院支援委員会や退院後生活環境相談員が導入されることになり、退院支援あるいは地域移行支援の実態に変化が生じてくるだろうと考えたからである。したがって本インタビューにおける語りの内容は、法改正以前の実態であり現状とは異なるものであることを指摘しておきたい。
 第4章では、質的研究方法としてのM-GTA(Modified Grounded Theory Approach)の特徴について述べている。それというのも、退院した人たちへのインタビュー調査によって、地域生活を可能にしていった変化とプロセスを明らかにしたいと考えたからであり、質的研究方法としてM-GTAが有効だと考え、その概要と本研究との関係性について述べている。
 第5章および第6章では、精神科病院に2年間以上長期入院した16名を対象にインタビュー調査を実施し、M-GTAによって分析した結果について述べている。第5章では、入院中の入院患者の【密室の中のディスエンパワメント】というコアカテゴリーについてまとめた。これは《無力化させていく入院》と《全部ダメって言われる》という2つのカテゴリーによって構成されており、それらについて説明と解説を行った。
 第6章では、退院への働きかけと具体的な支援による、【暮らす力を得ていく】というコアカテゴリーについてまとめた。これは《回復のために取り組む》と《地域の生活者として暮らす》という2つのカテゴリーによって構成されている。
 第7章では、精神病を発症したとしても長期入院にならないために、精神科医療の受診者や精神保健福祉の利用者への尊重、治療のあり方などについて、先行研究やインタビュー調査から考察できたことをまとめた。

 (…後略…)

著者プロフィール

杉原 努  (スギハラ ツトム)  (

立命館大学生存学研究所客員研究員。立命館大学大学院先端総合学術研究科修了。博士(学術)。
京都府、佛教大学福祉教育開発センター等で勤務後、まるいクリニック。
専門は精神保健福祉、社会福祉、ソーシャルワーク。
〔主要著書〕
『「事例作成」で学ぶ精神保健福祉援助演習』(中央法規出版、2014年)
『新 社会人のための精神保健福祉士』(共著、学文社、2014年)
『精神障がい者地域包括ケアのすすめ』(共著、批評社、2013年)
『生存学』(共著、生活書院、2011年)

上記内容は本書刊行時のものです。