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在朝日本人社会の形成 李 東勲(著) - 明石書店
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在朝日本人社会の形成 (ザイチョウニホンジンシャカイノケイセイ) 植民地空間の変容と意識構造 (ショクミンチクウカンノヘンヨウトイシキコウゾウ)

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発行:明石書店
A5判
400ページ
上製
価格 7,200円+税
ISBN
978-4-7503-4856-8   COPY
ISBN 13
9784750348568   COPY
ISBN 10h
4-7503-4856-2   COPY
ISBN 10
4750348562   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2019年6月30日
書店発売日
登録日
2019年7月9日
最終更新日
2019年7月31日
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紹介

朝鮮開港から1920年代までの在朝日本人社会の形成過程とその植民地空間での生活様態、そして帝国主義的優越感と植民地権力への被害者意識が混在した在朝日本人の「植民者意識」を、朝鮮人社会との関連から豊富な資料を通して分析し解明した新たな人びとの日韓関係史。

目次

序章
 第1節 「在朝日本人」の歴史
 第2節 研究史の整理
 第3節 問題意識と研究視角
 第4節 本書の構成

第Ⅰ部 在朝日本人社会の形成と社会様態

第1章 諸統計よりみる植民者社会の形成
 第1節 居留地の設定と居留状況
  第1項 居留地の設定
  第2項 居留地の外及び内陸部への拡散
  第3項 内陸部における居留状況
  第4項 植民地都市の形成
 第2節 在朝日本人の人口推移
  第1項 居留民人口(1876~1905年)の再集計
  第2項 開港期~形成期の居留民人口
  第3項 形成期①――「自由渡韓」への陳情
  第4項 形成期②――日露戦争期における居留民の急増
  第5項 定住期①――統監府期の人口
  第6項 定住期②――「韓国併合」後の1910年代
  第7項 成長期①――府部・郡部の人口
  第8項 成長期②――人口ピラミッドと人口構成
  第9項 移住人口と自然増加人口
 第3節 在朝日本人の出自
  第1項 初期渡航者の出身地
  第2項 渡航者の出身階層と移動経路
  第3項 「県閥」の形成
  第4項 「韓国併合」前後における本籍地別人口
  第5項 1925年の本籍地別統計
  第6項 在朝日本人の学歴
 第4節 在朝日本人社会の職業構成
  第1項 開港期・形成期における職業構成
  第2項 日露戦争期における職業構成
  第3項 統監府期の職業別人口
  第4項 「韓国併合」前後と1910年代における職業構成
  第5項 大項目による職業統計
  第6項 移住農村・漁村
 第5節 社会的指数を示す統計
  第1項 学校数の推移
  第2項 民族間における格差
 小結

第2章 居留民団体の変容と在朝日本人社会の「自治」
 はじめに
 第1節 初期の居留地行政
  第1項 初期の居留地規則
  第2項 居留地規則と居留民規則の並存
 第2節 居留民団体の法人化過程
  第1項 居留民による請願活動
  第2項 「居留民団法」の制定過程
 第3節 居留民団の設立と居留民政策の変化
  第1項 居留民団の設立と運営
  第2項 居留民政策の変化と居留民社会の対応
 第4節 「韓国併合」後の居留民団解散への道
  第1項 居留民社会の陳情活動
  第2項 新しい地方制度
  第3項 「一視同仁」と「民度ノ差」のあいだ
 第5節 府協議会と学校組合への承継
 小結

第3章 在朝日本人児童教育の展開――居留民教育から「内地人」教育へ
 はじめに
 第1節 居留地の教育事業の展開
  第1項 初期の居留民学校の状況
  第2項 居留民教育の懸案と領事館の対応
 第2節 居留民教育の整備と児童教育をめぐる認識
  第1項 中等教育機関の設立
  第2項 居留民学校に対する支援策と教育制度の整備
  第3項 「内地」を知らない児童という言説
 第3節 学校組合制度の導入と承継問題
  第1項 学校組合制度の導入
  第2項 居留民団から学校組合へ
  第3項 学校組合への承継をめぐる議論
 第4節 学校組合の運営状況
 小結

第Ⅱ部 在朝日本人社会と植民地空間

第4章 「始政五年記念朝鮮物産共進会」と植民地空間
 はじめに
 第1節 「始政五年記念朝鮮物産共進会」について
  第1項 朝鮮物産共進会の計画
  第2項 景福宮という空間
 第2節 「文明化」の可視化
  第1項 視覚化された展示
  第2項 日本人のまなざし
 第3節 京城協賛会の構成
 第4節 京城協賛会の活動
 第5節 全国新聞記者団が見た「武断政治」下の朝鮮
  第1項 全国新聞記者大会の京城開催
  第2項 記者団の目に映った「半島の真相」
 第6節 共進会の活用策をめぐる議論
  第1項 日本人社会の「継子根性」
  第2項 「内地」資本の流入と「会社令」
 小結

第5章 植民都市仁川の港湾「開発」と植民者社会
 はじめに
 第1節 築港工事以前の仁川港
  第1項 居留民社会の港湾「開発」論
  第2項 対外貿易港の仁川
 第2節 築港問題の浮上
  第1項 居留民社会の形成と築港問題の浮上
  第2項 「国家事業」としての築港
 第3節 築港工事と植民地空間、そして意識
  第1項 築港工事の概要
  第2項 起工式と永住意識の拡散
  第3項 「東洋唯一」の二重閘門式船渠の竣工
 第4節 築港工事と仁川港の変容
  第1項 仁川商業会議所の議員構成と活動
  第2項 朝鮮人労働者の流入
 小結

第6章 居留民創建神社の変容と地域社会
 はじめに
 第1節 海を渡った神社
  第1項 初期の居留民神社
  第2項 祀られた神々
 第2節 「韓国併合」後における神社制度の整備
  第1項 「韓国併合」期の状況
  第2項 神社制度の整備と創建状況
 第3節 神社の創建過程――水原神社の事例
  第1項 水原神社の創建
  第2項 出願者の構成
 第4節 既存神社の再編――仁川神社の事例
 小結

第7章【補論】 在朝日本人の「発展史」刊行と「植民者意識」
 はじめに
 第1節 郷土史研究と朝鮮地誌
  第1項 郷土史研究の歴史
  第2項 朝鮮地誌の性格
 第2節 発展史刊行の背景と記述内容
  第1項 発展史刊行の背景
  第2項 発展史の構成・内容
 第3節 発展史にみられる特徴
  第1項 朝鮮・朝鮮人の不在
  第2項 「苦難」・「奮闘」の移住史
  第3項 創造された「郷土」
 小結

終章

 別添資料
 参考資料及び文献

 あとがき

 主要人名索引
 事項索引

前書きなど

序章

 (…前略…)

第4節 本書の構成
 本書は序章、第Ⅰ部、第Ⅱ部、補論、終章で構成されている。まず、第Ⅰ部(第1~3章)では、在朝日本人社会の形成過程と社会様態を考察する。居留民社会の形成過程とその特質について概観してから、「自治」団体、教育団体の活動とその変容を考察する。各章で論ずる内容は以下の通りである。
 第1章では、各種統計を用いて在朝日本人社会の社会様態を検討する。本論に入る前の導入として、日本居留地の設置過程、居住地の拡散状況を概括し、集団居住地の形成過程を考察する。加えて、人口、出身地、出身階層、職業、学歴などの統計より社会様態を数量的に分析する。これを通じて、在朝日本人社会が西洋諸国の植民地、又は台湾・「満洲」における植民者社会に比し、どのような特質を有していたのかを検討する。
 第2章では、「自治」組織である居留民団体の変容を考察する。居留地の公共事業を行っていた居留民団体が任意団体から法人化する過程を追う。また、「韓国併合」後に居留民団が解散する過程と承継、「自治」をめぐる日本人社会の議論から日本人社会が執着していた「自治」の意味、その執着を支えていた「植民者意識」を考察する。
 第3章では、児童教育を担っていた教育団体の変容を取り上げる。居留地の児童教育は、統監府期に入り、制度や財政面において整備されていく。「韓国併合」後に教育事業は居留民団の解散とともに学校組合へ承継されるが、学校組合というモデルが植民地朝鮮に導入された背景、学校組合の人的構成や運営を考察する。そして、学校組合への承継問題と児童教育をめぐる議論を通して、在朝日本人の意識をも射程を入れる。
 第Ⅱ部(第4~6章)では、植民地空間の変容と日本人社会の関わりを考察する。植民地空間、とくに居留地から成長した植民都市は在朝日本人社会と密接に関連している。在朝日本人社会と植民地空間との関わりを明らかにする題材として、共進会、港湾「開発」、神社の事例を取り上げ、日本人社会の活動が植民地空間にどのような影響を及ぼしていたのかを検討する。各章で論ずる内容は以下の通りである。
 第4章は、1915年の秋に京城で開催された「施政五年記念朝鮮物産共進会」を題材に、「武断政治」下における共進会開催の意味を考察する。共進会の展示内容、参観した日本人の感想、「内地」での報道を手がかりに、共進会開催をめぐり交差する日本人のまなざしを分析する。共進会の活用策をめぐる日本人社会の議論からは、統治権力側の方針とは異なる独自の観点から、共進会の開催を迎えていた在朝日本人の意識を考察する。
 第5章では、植民都市の形成と在朝日本人社会との関係性を考える。典型的な植民都市の歴史を辿った仁川港を研究対象にし、1910年代に行われた築港工事の事例を取り上げる。埋立工事、築港工事をめぐる日本人社会の動向や議論を通して、港湾「開発」に及ぼした日本人社会の影響力に注目する。
 第6章では、居留地に創建された居留民創建神社の変容を取り上げる。居留地には早い時期から私的祈願の神社が建てられた。そして、居留民人口が増加するにつれ、居留民社会の統合が意識されるなかで、皇祖神を奉斎する神社が創建された。こうして日本人集団居住地に創建された神社は、「韓国併合」後の神社制度の整備によって変容を余儀なくされる。仁川と水原の事例を取り上げ、地域の朝鮮人社会も視野に入れながら、居留民創建神社の変容過程を考察する。
 次に、第Ⅰ部と第Ⅱ部における「植民者意識」議論をまとめるものとして【補論】を設けた。【補論】の第7章では、在朝日本人が刊行した朝鮮地誌を取り上げ、在朝日本人の「植民者意識」の根柢にあるものを考察する。明治末から大正期にかけて数多く出版された朝鮮地誌を、刊行目的や記述内容によって分類し、そのうち朝鮮半島への日本人の移住史、居留民社会の形成史を題材としている「発展史」に着目する。「発展史」にみられる在朝日本人の他者認識、自己認識への検討から、在朝日本人社会に共有されていた「植民者意識」の根底にあるものを考える。

 (…後略…)

著者プロフィール

李 東勲  (イー ドンフン)  (

1976年、韓国大邱生まれ。2003年、韓国外国語大学日本語科卒業。2007年、文部科学省国費研究留学生として渡日。一橋大学社会学研究科研究生課程を経て、2008年東京大学大学院に入学。2016年、東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程満期退学。2017年、博士(学術)。現在、韓国啓明大学非常勤講師。

上記内容は本書刊行時のものです。