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ポピュリズムの理性 エルネスト・ラクラウ(著) - 明石書店
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ポピュリズムの理性 (ポピュリズムノリセイ)
原書: On Populist Reason

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発行:明石書店
四六判
416ページ
上製
価格 3,600円+税
ISBN
978-4-7503-4698-4   COPY
ISBN 13
9784750346984   COPY
ISBN 10h
4-7503-4698-5   COPY
ISBN 10
4750346985   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2018年12月25日
書店発売日
登録日
2018年12月19日
最終更新日
2018年12月25日
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紹介

政治理論家エルネスト・ラクラウによるポピュリズム論の金字塔的著作。ポスト・マルクス主義の政治理論を深化させ、侮蔑的に論じられるポピュリズムを政治的なものの構築の在り方として精緻に理論化。根源的、複数主義的な民主主義のために、政治的主体構築の地平を拓く。

目次

 序文


第Ⅰ部 大衆への侮蔑

第1章 ポピュリズム――多義性と逆説
 ポピュリズムに関する文献の袋小路
 代替アプローチを求めて

第2章 ル・ボン――暗示と歪曲された表象

第3章 暗示、模倣、同一化
 暴徒と社会の解体
 催眠術と犯罪学
 タルドとマクドゥーガル
 フロイトによる突破
 結論――出発点に向かって


第Ⅱ部 「人民」を構築する

第4章 「人民」、空虚の言説的産出
 存在論に関する幾つかの瞥見
 要求と人民アイデンティティ
 等価性の冒険
 敵対、差異、代表
 「人民」の内的構造化
 名指しと情動
 ポピュリズム
 補論――なぜ幾つかの要求を「民主的」と呼ぶのか?

第5章 浮遊するシニフィアン、社会的異質性
 浮遊すること――シニフィアンの劫罰ないしは運命か?
 異質性が登場する

第6章 ポピュリズム、代表、民主主義
 代表の二つの相貌
 民主主義と人民アイデンティティ


第Ⅲ部 ポピュリズムの諸形態

第7章 ポピュリズムの遍歴譚

第8章 「人民」の構築にとっての障碍と限界
 オマハ綱領から一八九六年選挙での敗北へ
 アタテュルクの六本の矢
 ペロンの帰還


結論
 ジジェク――火星人を待ちながら
 ハートとネグリ――神は与え給う
 ランシエール――人民の再発見


 注
 解説――『ポピュリズムの理性』に寄せて[山本圭(政治学)]
 訳者あとがき
 索引

前書きなど

訳者あとがき

 本書は、Ernesto Laclau, On Populist Reason, Verso, 2005の全訳である。
著者ラクラウの略歴およびその思想的展開における本書の位置付けについては、山本圭氏の的確な解説を参照されたい。

 (…中略…)

 まさしく、山本氏が解説で指摘されている通りであろう。本書の原著の出版から十数年を経て(さらには著者ラクラウの死去からも数年を経て)、本邦でも、「ポピュリズム」の語は人口に膾炙し、ある種の政治的状況を記述・解説する概念として一般に広く用いられるようになった。移民排斥を声高に掲げる諸政党のEU各国議会への公然たる進出、アメリカでのトランプ政権の成立、イギリス国民投票でのEU離脱(ブレグジット)の選択、等々。「ポピュリズム」的な事態が報道で目に触れない日は(そして、それに憂慮の念が表明されるのを耳にしない日は)ほとんどないといってもよい。かつては必要だった「大衆迎合主義」等の補足説明すら次第に省略されつつある。「ポピュリズム」を題名に冠した書物の出版も相次ぐ。
 だが、ある人物や組織、事象について「○○はポピュリズムである」と指摘されるとき、そうして、それによって何ごとかが説明されたように見えるとき、そこでは本当は何がなされているのだろうか。この言明は、「客観的な」事実認識を行う「事実確認的(コンスタティヴ)」な文でありながら、それと同時に(その裏面で)、「したがって、それを真剣に受け取る必要はない(受け取ってはならない)」という価値判断を下す「行為遂行的(パフォーマティヴ)」な文でもあるのではないだろうか。「ポピュリズムである」という記述は、その対象を、侮蔑と非難と(若干の)憐憫が加えられるべき標的として自動的に位置付けてしまうものではないのか。それに対して唯一まともになすべきことがあるとすれば、この病理への適切な治療法を何とか案出することであると、そう聴き手に思わせてしまうものとなってはいないか。そうだとすれば、ポピュリズムは不条理な逸脱現象として、それ自身の理由(リーズン=理性・言い分)をあらかじめ奪されてしまっているのではないか。
 従来のポピュリズム概念に対して著者ラクラウが抱く深刻な違和感は、このようなものであろう。そして、これはまた、われわれの多くが、「ポピュリズム」を持ち出す説明に直感的に感じ取る「居心地の悪さ」の背景にあるものかもしれない。ラクラウにとって、ポピュリズム概念の重要性は、絶対的なまでに否みようのないものである。だが、一方で、この概念のうちの何かが、右で述べたような「行為遂行的」価値判断を導いていると思われるのもたしかだ。この概念を用いると、問いを発したと同時に即座に答に辿り着いてしまう。何かしら思考を短絡させてしまう仕組みがそこに組み込まれているようなのである。この短絡の仕組みを解除(=解明)して、問いと答を引き離すための、ラクラウの曲折に満ちた長い苦闘、その結晶が本書『ポピュリズムの理性』である。

 (…後略…)

著者プロフィール

エルネスト・ラクラウ  (エルネスト ラクラウ)  (

1935年、アルゼンチン生まれ。政治理論家。イギリスに亡命後、長年にわたりエセックス大学で教授を務める。2014年死去。ポスト・マルクス主義の立場から、ヘゲモニー論や言説分析を取り入れ、マルクス主義の大胆な刷新を試みた。
邦訳書に、『民主主義の革命――ヘゲモニーとポスト・マルクス主義』(シャンタル・ムフとの共著、西永亮・千葉眞訳、ちくま学芸文庫、2012年)、『現代革命の新たな考察』(山本圭訳、法政大学出版局、2014年)、『偶発性・ヘゲモニー・普遍性――新しい対抗政治への対話』(ジュディス・バトラー、スラヴォイ・ジジェクとの共著、竹村和子・村山敏勝訳、青土社、2002年)などがある。

澤里 岳史  (サワサト タケシ)  (

1968年生まれ。政治哲学。2016年死去。
主な著書に、『グローバル化する市民社会』(共著、御茶の水書房、2006年)、主な訳書に、J.ハーバーマス、J.デリダ、G.ボッラドリ『テロルの時代と哲学の使命』(共訳、岩波書店、2004年)、エティエンヌ・バリバール『真理の場所/真理の名前』(共訳、法政大学出版局、2008年)、G.アガンベン、A.バディウ他『民主主義は、いま?――不可能な問いへの8つの思想的介入』(共訳、以文社、2011年)など。

河村 一郎  (カワムラ イチロウ)  (

1967年生まれ。科学哲学。
主な訳書に、デイヴィッド・ライアン『監視社会』(青土社、2002年)、ポール・ヴィリリオ『民衆防衛とエコロジー闘争』(共訳、月曜社、2007年)、G.アガンベン、A.バディウ他『民主主義は、いま?――不可能な問いへの8つの思想的介入』(共訳、以文社、2011年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。