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没落するキャリア官僚 中野 雅至(著) - 明石書店
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没落するキャリア官僚 エリート性の研究

発行:明石書店
A5判
468ページ
並製
価格 2,500円+税
ISBN
978-4-7503-4670-0
Cコード
C0036
一般 単行本 社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月
2018年5月
書店発売日
登録日
2018年5月1日
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紹介

天下り問題、そして森友問題、加計問題に続くあいつぐ不祥事。トップ官僚と政治権力に、これまでにない批判が投げかけられている。バブル経済崩壊後から現在にいたる状況のなかで、官僚とそのエリート性がどのように変質し、その背景には何があるのかを探る。

目次

 はしがき 漂流する霞ヶ関

序章 エリートとは何か

第一章 官僚はなぜエリートなのか
 第一節 権力と優れた技能
  1 制度上は大きな権限や権力を持たない日本の官僚
  2 官僚が持つ優れた技能とは何か
  3 インフラ機能を果たす官僚の行動力
 第二節 強い威信と集合意識
  1 官僚の威信
  2 官僚の持つ集団性の強さ

第二章 官僚を襲った最大の危機――バブル経済崩壊後の行財政改革
 第一節 行財政改革と公務員制度改革の流れ
 第二節 政官関係の大きな変化
  1 長期不況で変質せざるを得なくなった政官関係
  2 政治主導と官僚内閣制

第三章 行財政改革に対する官僚の抵抗
 第一節 官僚の抵抗
 第二節 マスコミの場を通じた政官関係の敵対

第四章 官僚はどう変化したのか
 第一節 権力・能力という側面からの考察
  1 官邸主導体制と官僚の権力
  2 内閣人事局の影響力
 第二節 能力という観点からの官僚の評価
 第三節 威信という観点からのエリート性の後退
 第四節 集団性という観点からのエリート性の後退

第五章 ポピュリズムに翻弄されたバブル経済崩壊後の官僚
 第一節 官僚バッシングとは何か
  1 官僚バッシングとは何か
  2 官僚バッシングを生み出した要因
 第二節 官僚バッシングを生み出した構造的要因
  1 経済状況の悪化による官民の労働条件の格差拡大
  2 中央官庁が実績を上げることができなくなったこと
  3 官僚や中央官庁と関連づけられた要因
 第三節 受け身の官僚バッシング
  1 官僚バッシングの特徴
  2 長期化したマスコミ報道とポピュリズム
  3 官僚バッシングと中核なきポピュリズム

第六章 外交不安はどれだけの効果を与えたか
 第一節 ポピュリズムと外交・安全保障環境の変化と右傾化
 第二節 官僚バッシングが止んだ消極的要因
 第三節 外交・安全保障環境の変化と官僚
  1 外交・安全保障環境の変化が政府に及ぼす影響
  2 長期安定政権と官僚の関係

第七章 右傾化とポピュリズムについて
 第一節 右傾化とは何か
  1 右傾化とは何か
  2 右傾化を補強する様々な社会現象
  3 右傾化はいつくらいから始まったのか
  4 日本の右傾化の現状
  5 右傾化の内部要因
  6 長期不況だけでは説明がつかない日本の右傾化
 第二節 日本の誇りと官僚との関連について
 第三節 国力とは何か
  1 日本の国力は何か
  2 日本企業と終身雇用
  3 日本社会と企業
  4 企業の力とは何か
 第四節 官僚は右傾化の文脈でどう行動したのか
  1 官僚は企業の競争力を高めることにどこまで貢献したか
  2 一般国民からみた国力とは何か
  3 官僚の右傾化への対応

終章 分裂する官僚
 第一節 日本社会はエリートを必要としているのだろうか
 第二節 はっきりしない国民の官僚像
 第三節 官僚はまだエリートか

 参考文献

前書きなど

はしがき 漂流する霞ヶ関

 (…前略…)

 筆者自身、元厚生労働省のキャリア官僚だっただけに、昨年の文部科学省の天下り問題から森友学園、加計学園、財務省の決裁文書の改ざんと続いた霞ヶ関が今現在、どういう状況なのかが非常に気にかかる。特に気になるのは官僚の内面だ。
 本書は、こんな筆者の反芻を基礎にして書かれたものである。書き出した頃は官僚バッシングも下火になっていて、官僚の存在もそれほど注目されていなかった。完成原稿ができあがってからも、世間やマスコミは中国の海洋進出や北朝鮮の核ミサイルで騒がしく、官僚の存在がそれほど注目されることもなかった。ただ、霞ヶ関の内部から漏れ聞く声に耳を傾けていると、官僚がそれまでと違った環境に投げ込まれていることがよくわかった。
 例えば、先輩から届く年賀状の類だ。まだまだ現役で働けるような年齢で、かつてであれば、天下りを超えて第二の就職先に「わたり」をしているような人に何の肩書きもない。悠々自適を装ってはいるが、どこか文面が寂しげだったりとかだ。
 官僚がどう変化したかは官僚だけの問題ではない。それは国民生活にも大きな影響を与えるからだ。例えば、今回の一連の不祥事を少し違った角度から眺めれば、どれもこれも杜撰な事務処理という側面を持っている。例えば、厚生労働省の裁量労働に関するデータ改ざんなどは、果たして、これを公僕意識の欠如というふうに安易に捉えるだけでいいだろうか。
 世論からはバッシングされ続け、政治家からは一方的な命令ばかりされるにもかかわらず、相変わらず、官僚が受け持っている仕事は多い。かつてのように官僚に敬意が払われているのであれば、多大な業務を徹夜仕事で完璧にこなすことに何のためらいもなかったかもしれないが、虐げられていれば、多大な業務にやる気をなくすだけかもしれない。あるいは、多大な業務にマンパワーが全く追いついていない可能性もある。
 国民にもしっかりした官僚像はないし、彼等に何を期待しているのかはっきりしないところがあるが、こういう状態が進んでいけば、霞ヶ関や官僚の変容は国民生活や経済社会の変化を実感できるほどのレベルになるのかもしれない。
 官僚は依然としてエリートなのか。彼等の変容は国民生活にどんな影響を与えることになるのか。本書がそんなことを考える一つのきっかけになれば幸いである。

 (…後略…)

著者プロフィール

中野 雅至  (ナカノ マサシ)  (

神戸学院大学現代社会学部教授。1964年、奈良県大和郡山市生まれ。同志社大学文学部英文科卒業、The School of Public Polich, The University of Michigan 修了(公共政策修士)、新潟大学大学院現代社会文化研究科(博士後期課程)修了(経済学博士)。大和郡山市役所勤務ののち、旧労働省入省(国家公務員Ⅰ種試験行政職)。厚生省生活衛生局指導課課長補佐(法令担当)、新潟県総合政策部情報政策課長、厚生省大臣官房国際課課長補佐(ILO条約担当)を経て、2004年公募により兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科助教授、その後教授。2014年より現職。2007年官房長官主催の「官民人材交流センターの制度設計に関する懇談会」委員、2008年からは国家公務員制度改革推進本部顧問会議ワーキンググループ委員を務める。主な著書に、『天下りの研究』『公務員バッシングの研究』(明石書店)、『政治主導はなぜ失敗するのか?』(光文社新書)、『間違いだらけの公務員制度改革』(日本経済新聞社)、『財務省支配の裏側』(朝日選書)など多数。

上記内容は本書刊行時のものです。