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日本の癩〈らい〉対策の誤りと「名誉回復」
今、改めてハンセン病対策を考える
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年9月
- 書店発売日
- 2017年9月15日
- 登録日
- 2017年9月4日
- 最終更新日
- 2017年9月4日
紹介
国立療養所多磨全生園の園長として、日本の癩(らい)病=ハンセン病治療に長年携わった著者が、「隔離」を継続した日本の癩(らい)対策の誤りの根源をあらためて振り返り、何を病もうと人は人という道理を元に、差別や偏見の克服、そして名誉回復とは何かを問う。
目次
まえがき
はじめに
一 日本における癩の流行と消長
二 二〇世紀日本における癩、らい、ハンセン病への一般的な認識の移り変わり
二-一 癩をめぐって
二-二 ハンセン病の年間新発生患者数ゼロの真実
二-三 ハンセン病の現状と憲法
三 日本の癩(らい)対策の根源的なあやまり
四 日本の癩(らい)対策の無為な継続
四-一 日本の癩(らい)対策には「隔離が最善」との安易な受容
四-二 「癩予防ニ関スル件」の制定、疎かにされた「患者は人」の倫理
四-三 惰性的かつ無定見な隔離の継続
四-四 光田は癩(らい)の権威か
四-五 光田を支えた権力構造
五 日本の癩(らい)対策 その過ちの責任を問う
五-一 日本の癩(らい)対策についての私たち個人の責任
五-二 癩(らい)に対する偏見・差別の血族的な拡がりについての責任
五-三 一般的な社会はハンセン病についていかに無知か
六 一般社会におけるハンセン病への関心
七 ハンセン病の社会啓発
七-一 不治の癩の社会啓発
七-二 可治のらいの社会啓発
七-三 普通の病気ハンセン病の社会啓発
八 名誉回復とは何か
九 日本の癩(らい)対策の歴史に類似する他の医療領域について
一〇 癩(らい)と知覚麻痺疎かにされた見えないものを診ること
一一 日本の癩(らい)対策の後半にかかわった私自身を考える
おわりに
付録
一 日本の癩(らい)対策についての史実を資料館常設展示のいくつかに重ねる
二 墓守であれ
前書きなど
まえがき
二○○九年に拙著『『日本の癩(らい)対策から何を学ぶか 新たなハンセン病対策に向けて』を刊行した。同著では主に、日本の癩(らい)対策の基本である絶対隔離について、その施策の苛酷な条件と不当性とを医学的な誤りとするに止まり、あとは「らい予防法違憲国家賠償裁判」の国側敗訴までを主に取上げ、それに癩(らい)関係の国際会議における主要決議を併記し、国際的動向からの日本の乖離を示した。
問題は、E・H・カーが〈歴史とは、現在と過去との対話である〉と繰り返し強調しているとし、これを訳者清水幾太郎が〈一方、過去は、過去のゆえに問題となるのではなく、私たちが生きる現在にとっての意味のゆえに問題になるのであり、他方、現在というものの意味は、孤立した現在においてではなく、過去との関係を通して明らかにし、その意味を変じて行く。われわれの周囲では、誰も彼も、現代の新しさを語っている。(引用者中略)しかし、遺憾ながら、現代の新しさを雄弁に説く人々の、過去を見る眼が新しくなっていることは極めて稀である。過去を見る眼が新しくならない限り、現代の新しさは本当に掴めないであろう〉と、カーの歴史観を体得できるかのように述べている。
それにもかかわらず実際にはこの教訓を生かせず、過去の事実はすべて誤りでもあるかのような先入観にとらわれ、過去から現在への道すじでの矯める言葉すら見過していた。
その悔いを、多磨全生園入所者自治会機関誌『多磨』などに寄せてきたが、そこから拾い出したものをまとめて、小著の出版を思い立った。
上記内容は本書刊行時のものです。